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F35の岩国配備は中国への強力な抑止メッセージ

気になる地元へのしわ寄せ

谷田邦一 朝日新聞専門記者(防衛問題担当)

 「第5世代」と呼ばれる最新鋭のステルス戦闘機F35が、来年1月、米海兵隊が駐留する岩国基地(山口県)に配備される。米本土以外への配備は日本が初めてだ。オバマ政権が、不安定化するアジア・太平洋地域での米軍の抑止力強化を、いかに重視しているかが見てとれる。

 配備されるのは老朽機との交代で16機。中国が保有する戦闘機の総数を考えれば、一見小規模に映るが、「見えない戦闘機」と約2000人の海兵隊員を積んだ強襲揚陸艦が今後、日本を拠点に東シナ海や南シナ海をパトロールすることになる。軍事的挑発を強める中国や北朝鮮への抑止効果は飛躍的に高まり、「戦略環境が劇的に変化する」と指摘する軍事専門家もいる。

垂直上昇や静止ができる拡大垂直上昇や静止ができるF35B=ロッキード・マーチン社提供 https://www.f35.com/media/photos

空中で静止、上下運動も

 「わずか10分ほどのデモフライトだったが、上空5、600メートルでホバリングしながら360度回転する姿には圧倒された。岩国に今いるハリアー戦闘機ほど騒音が大きくなかったのも意外だった」

 今年7月、英国のファンボロー国際航空ショーでF35Bのデモフライトを取材した軍事ジャーナリストの竹内修氏は、初めて見た印象をこう話す。

 同型機は大出力のエンジンを積み、噴射口を下に向けることによって空中で静止したり自由に上下運動したりできるのが大きな特徴だ。

 F35戦闘機は、米ロッキード・マーチン社が中心になり米欧など9カ国が共同開発した。敵よりも早く相手を見つけて撃墜するというコンセプトにもとづき、レーダーに映りにくいステルス性やコンピューターを駆使した高い攻撃性を特徴としている。日米などの現在の主力戦闘機F15よりも1世代進んだ第5世代とされるゆえんである。

 F35は同じ機体をもとに、Aタイプ(要撃や対地攻撃用の空軍向け)、Bタイプ(垂直着陸ができる海兵隊向け)、Cタイプ(空母に発着艦できる海軍向け)の3つの派生型があり、岩国に配備されるのは海兵隊向けの「B」タイプになる。航空自衛隊はAタイプを42機導入することになっている。

 米政府が初めて岩国基地への配備に言及したのは2008年。米海兵隊が公表した計画書に「16年10月以降」と記された。その後12年になって、パネッタ国防長官(当時)が講演の中で、「アジア・太平洋地域を重視する新国防戦略の一環」として17年に岩国に配備する予定と明らかにした。

 言うまでもなく、海洋進出を急ピッチで進める中国や核・ミサイルの開発実験を続ける北朝鮮をにらんだアジア・太平洋の米軍戦力の増強策の一環である。米政府は、ほかにも横須賀基地(神奈川県)への新たな原子力空母(ロナルド・レーガン)の配備や高い弾道ミサイル迎撃能力をもつイージス艦2隻(ベンフォード、バリー)の追加配備などを打ち出し、すでに実現させている。

強襲揚陸艦に搭載

 16機という配備規模をどう見るべきか。

 日本との摩擦が高まりつつある中国を例にとれば、 ・・・続きを読む
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筆者

谷田邦一

谷田邦一(たにだ・くにいち) 朝日新聞専門記者(防衛問題担当)

1959年生まれ。1990年、朝日新聞社入社。社会部、那覇支局、論説委員、編集委員、長崎総局長などを経て2013年4月から社会部専門記者(防衛問題担当)。主要国の防衛政策から最新兵器、軍用技術まで軍事全般に関心がある。防衛大学校と防衛研究所で習得した専門知識が、現実の紛争地でどのくらい役立つのか検証取材するのが夢。

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