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蓮舫新代表は人材を集め次の選挙を戦う態勢を作れ

各地の市民との協力関係を大切にしたい民進党

山口二郎 法政大学法学部教授(政治学)

 民進党代表選挙は、野党第一党の今後の路線と戦略を議論する場ではなく、日本社会の劣化と、それに対して毅然と信念を語れない同党の政治家の脆弱さを見せつける場になった感がある。この党が民進党に名前を変えてから応援する気が失せてきた私にとって、なんとも陰鬱な話である。

拡大進党の新代表に選出され、岡田克也前代表(右)と握手する蓮舫氏=9月15日、東京都港区
 蓮舫氏の二重国籍問題など、批判する者が自らの無知と差別意識を露呈するものでしかない。彼女が生まれた時の日本の国籍法は父系主義で、台湾人の父と日本人の母を持つ彼女は日本国籍をとれなかった。のちに国籍法が両系主義に改正され、日本国籍の取得に至った。日本の国籍法が最初から男女平等であったなら、この問題はそもそも発生していなかった。昔はひどい男尊女卑があったと反省するくらいしか、この問題の教訓はない。

 民進党の議員は、対立候補の陣営も含め、差別主義的な言いがかりに対して断固として反撃し、蓮舫氏を守るべきであった。排外主義的な空気を読み取って、これに迎合するように党のガバナンスがどうのこうのと声を出す政治家を見て、とてもこれらの政治家に日本の政府を託すことはできないと感じた。

党の最大の欠点は議論が蓄積しないこと

 ともかく蓮舫氏が勝利して、久々の大政党の女性党首誕生となった。しかし、清新さや期待感とは程遠い。それには二重国籍問題よりも、深い理由がある。私はこの20年、旧民主党の結成から、日本で政権交代可能な二大政党制を作るために、民主党を応援してきた。民主党政権の崩壊の後、党の立て直しのためにいろいろと改革の提案もした。しかし、民主党の最大の欠点は、属人的で、政策や党組織をめぐる議論について、リーダーが入れ替わったらゼロからやり直しという点にあった。つまり、賽の河原の石積みで、議論が蓄積しないことが、この党にある程度期待を寄せる者に無力感やあきらめをもたらしたのである。

 維新の党と合併し、民進党と名前を変えたのは、民主党時代の悪しき体質を改めることを目指してのことだったと理解している。しかし、属人的発想は相変わらずであった。今回の代表選挙の最大の争点は、岡田克也前代表が推進した、憲法争点を中心とした安倍政権への対決路線、およびそれに基づく野党協力路線をこれからどうするかということだったはずである。あるいは、直近の参議院選挙の結果をどう総括し、どこを持続し、どこを改めるかという問題であるべきだった。

 参議院選挙では与党が楽勝し、再びの政権交代を目指すことの難しさを見せつけられた。しかし、すべての一人区で野党統一候補を擁立し、11選挙区で勝利したことは、一定の成果である。野党協力がなく、民進党の獲得議席が2013年と同程度にとどまっていたならば、民進党は結党早々存亡の危機に直面していただろう。躍進とか前進とはいえないにしても、次につながる結果ではあった。事情に詳しいジャーナリストからは、自民党には勝利感はないとも聞いた。

次の路線描く前向きな議論に欠けた代表選

 新しい代表候補は、岡田氏の土壇場での踏ん張りに敬意を表し、その成果の上に次の路線をどう描くかを議論しなければならなかった。しかし、共産党とは組まないなど、政党間の組み合わせの議論ばかりが行われ、前向きな方向性の議論はほとんど聞こえなかった。共産党と連立政権構想を作り、政権交代を目指すことが非現実的な空想であることは誰にでもわかる話である。しかし、衆議院の小選挙区でも野党候補を一本化しなければ勝負にならないことも明らかである。この2つの矛盾の中で、知恵を出し、戦術を考案するのが、可能性のアートとしての政治である。

 民進党の議員の多くは、選挙の際の人気集めの道具として蓮舫氏に期待しているのだろう。しかし、その人気なるものは、 ・・・続きを読む
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筆者

山口二郎

山口二郎(やまぐち・じろう) 法政大学法学部教授(政治学)

1958年生まれ。東京大学法学部卒。北海道大学法学部教授を経て、法政大学法学部教授(政治学)。主な著書に「大蔵官僚支配の終焉」、「政治改革」、「ブレア時代のイギリス」、「政権交代とは何だったのか」、「若者のための政治マニュアル」など。

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