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陸自の南スーダン派遣は「殺し、殺される」想定だ

訓練やマニュアルからみるPKO部隊の新任務

谷田邦一

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 「『殺し、殺され』という、おどろおどろしいレッテル貼りはまったくの的外れであります」

 安倍晋三首相は9月29日の国会で、南スーダンに派遣する自衛隊のPKO部隊の新任務について強い口調でこう述べた。あたかも危険は皆無と言わんがばかりだ。

 本当にそう言い切れるのか。派遣される部隊が現地でどのような事態を想定し、どこまで踏み込んだ訓練をしているのかを知っていれば、こんな軽率な答弁はできなかったはずである。

退避壕を建設している陸自隊員を激励する稲田朋美防衛相=8日、ジュバ市内の国連トンピン地区(代表撮影)20161008拡大退避壕を建設している陸自隊員を激励する稲田朋美防衛相=2016年10月8日、ジュバ市内の国連トンピン地区(代表撮影)
 陸上自衛隊は2012年以来、10次にわたり延べ約3500人の隊員を南スーダンに派遣し、道路補修や避難民の医療支援などにあたってきた。

「駆けつけ警護」「宿営地の共同警備」とは?

 2015年9月に安全保障関連法が成立したことで、PKO協力法が改正され、自衛隊の任務や武器使用権限が拡大した。

 これを受けて政府は11月に交代する次の南スーダン派遣部隊に対し、いわゆる「駆けつけ警護」と「宿営地の共同警備」の2つの新たな任務を与えようとしている。

 11月半ばから12月にかけて順次派遣される11次隊(約350人)は、第9師団(司令部・青森市)の施設科隊員(工兵)や普通科隊員(歩兵)などで編成される。駆けつけ警護などを受け持つのは約50人の普通科隊員からなる警備小隊の役割だ(※図1参照)。

 8月末から派遣準備と隊員教育が始まり、9月半ばからは現地でのさまざまな状況を想定した実動訓練に入っている。

拡大【図1】 「南スーダンPKO派遣部隊の編成」=「UNMISS(国連南スーダン派遣団)における自衛隊の活動について」より
 訓練について触れる前に、新しい任務について少し説明しておこう。

 駆けつけ警護とは、国連やNGOの職員、他国軍のPKO要員などが武装勢力に襲われた場合、自衛隊が武器をもって助けに行く任務のこと。

 宿営地の共同警備とは、他のPKO要員と同居する国連の宿営地を他国軍と一緒に守る任務のことだ。

 改正されたPKO協力法には次のように規定されている。

 駆けつけ警護の任務は、同法3条5項ラにその規定がある。

 「国際連合平和維持活動、国際連携平和安全活動若しくは人道的な国際救援活動に従事する者又はこれらの活動を支援する者の生命又は身体に対する不測の侵害又は危難が生じ、又は生ずるおそれがある場合に、緊急の要請に対応して行う当該活動関係者の生命及び身体の保護」

 「国際連合平和維持活動(PKO)に従事または支援する者」というのが南スーダンPKOの対象者になるため、国連との関係が直接ない現地の住民や民間人は対象者にならないというのが政府の解釈である。

 宿営地の共同警備の任務は、同法25条7項の規定にある。

 「国際平和協力業務に係る国際連合平和維持活動、国際連携平和安全活動又は人道的な国際救援活動に従事する外国の軍隊の部隊の要員が共に宿営するものに対する攻撃があったときは、当該宿営地に所在する者の生命又は身体を防護するための措置をとる当該要員と共同して、第三項の規定による武器の使用をすることができる」

 集団的自衛権の一部行使を容認した2014年7月の閣議決定によって、従来できなかったこうしたPKO任務もできるようになった。

至近距離での銃撃戦を想定

 新たな任務を遂行するための訓練とはどういったものか。防衛省・自衛隊内では厳重な箝口令(かんこうれい)が敷かれ、その要員の顔ぶれや教育訓練の内容をうかがい知ることは難しい。

 しかし陸自の過去の海外任務のうち最も危険が高かったイラク人道復興支援活動(2004~06年)と南スーダンPKOの警備要領は共通するところが多い。新たな任務の訓練はイラク派遣を下敷きにしていることが、9師団関係者の間では広く知られている。

 幹部の1人は「ともに大量の銃器が出回っている銃社会。市街地が多く、たくさんの武装集団や盗賊などが跋扈(ばっこ)する無秩序ぶりもそっくりだ」と話す。

 訓練で最も重視されているのは、「近接戦闘射撃」と呼ばれるテロリストなどとの至近距離での銃撃戦を想定した射撃術だ。 ・・・続きを読む
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筆者

谷田邦一

谷田邦一(たにだ・くにいち) 朝日新聞専門記者(防衛問題担当)

1959年生まれ。1990年、朝日新聞社入社。社会部、那覇支局、論説委員、編集委員、長崎総局長などを経て2013年4月から社会部専門記者(防衛問題担当)。主要国の防衛政策から最新兵器、軍用技術まで軍事全般に関心がある。防衛大学校と防衛研究所で習得した専門知識が、現実の紛争地でどのくらい役立つのか検証取材するのが夢。

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