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10月25日(火) 局で定例会議。体調すぐれず。咳が止まらない。週刊現代の連載コラム原稿。沖縄タイムスの連載原稿。米大統領選挙取材打ち合わせ。『ペリー提督日本遠征記』をパラパラ読み始めるが、何と面白いことか。特に将軍と天皇の二重支配についての分析が鋭いし、深い。「日本には、二人の皇帝が並び立っているという奇妙な特徴がある」。ペリーの報告はアメリカの対日外交の基本的な枠組み造りに多大な貢献をしたことは間違いない。その意味でペリーは外交官である。夜、Mさん、Tさんら。

10月26日(水) 暖かい好天。朝、泳ぐ。気持ちがいい。咳がまだ止まらないので局の診療所に行く。風邪か。処理要件多数。アメリカ出張の前にきちんとしておかなければ。神保哲生氏の本の帯文。パソコン遠隔操作事件を追ったルポルタージュ本だが、これが実に面白い。「事実は小説より奇なり」のお手本。

 沖縄の機動隊「土人」発言の余波続く。そういう中で、沖縄県の自民党県議から「反対運動をやっている側の発言も問題にしろ」とかいう発言が出てきている。大阪の松井一郎知事の「売り言葉に買い言葉」と同じ次元の論法だが、ひどい国になってきたもんだ。

 マイナンバーを提出してくださいとの文書がこのところやたらに届く。先日は、マイナンバー制度導入に反対の書籍を出版していた出版社からも届いた。何だかなあ。「Journalism」10月号のメディア・リポート(放送)の阿武野勝彦さんの文章、永六輔さんへのオマージュを読む。月島のお店。Fさんのお誘い。まわりはもんじゃ焼き屋さんだらけ。この束の間の暖かさに誘われてか、結構人手が多い。

笠井叡のステージをみられる幸福!

10月27日(木) 薬を飲んで咳は止まったのはいいけれど、頭がボーっとしている。副作用というやつか。北海道新聞の書評欄のために、湯浅学さんの『ボブ・ディラン――ロックの精霊』を再読。ディランの余すところない魅力が語られている本としてはやっぱりこれだろう。局関係の雑務をしていたら、あっという間に時間が流れてしまった。

 夜、ピエール・バルーが立ち上げたフランスのサラヴァ・レーベル50周年記念コンサート『一期一会』。大竹昭子さんと久しぶりに会う。歌のうまい日本の女性歌手を聴いて大いに充実。大人向けのコンサートだという印象。エゴラッピンの中納良恵、中村中、マイヤ・バルーの3人娘がいい。みんな歌がうまい。でも僕は、優河という歌手が飛び切りうまいなあと思った。声も美しい。ついには、ピエール・バルーと『男と女』をデュエットで歌ってくれた。大友良英がバックでギターをひいていた。コンサート後に、夜11時まで「サラヴァ50年展」を無料開放ということで、ギャラリー・アツコバルーまで歩いて行った。オリジナルの資料がびっしりと展示されていた。この半世紀の歴史の一断面。ひとりの人間の好奇心がここまで広がって、国境を越え、いろいろなものを生んだ。サラヴァ!

10月28日(金) 雨模様。寒い。アメリカ大統領選挙取材の最終打ち合わせ。まだ頭がぼーっとしている。国連に提出された核兵器禁止条約をめぐり、何と「唯一の被爆国」日本が反対に回った。何ということか。原爆で死んでいった何十万のもの人々が泣いているぞ。

 夜、笠井叡(ダンス)×高橋悠治(ピアノ)の『無心所振り』。この組み合わせをみるのは何年か前の横浜の赤レンガ公演以来か。公演パンフレットより笠井の言葉。<舞台で踊り始めて半世紀経った今も、「舞台に立つ」ということは、この50年間の一切の経験を無にさせられてしまいます。生きることの一切の前提が、崩れ去ってしまいます。それはきついことであり、また心地よいことでもあります。> その言葉に違わず、すさまじい緊張感に満ちたステージだった。笠井叡の実際のステージを同時代人としてみられる幸福。

「いごっそう」「はちきん」の土地へ

10月29日(土) 朝早く、「神奈川大学評論」の対談原稿の校正。北海道新聞の書評原稿。報道特集のOA日。局でプレビュー。宮城県石巻市の大川小学校の悲劇。民事訴訟の判決を受けてのTBC(東北放送)S記者の制作。あれからもう5年7カ月あまりが経過したのだ。被災後に大川小学校に取材に入った時にみたあまりにもむごい光景が脳裏に甦ってきた。当時一緒に動いていたSカメラマンがあまりの悲惨さに撮影をたじろいでいたことを覚えている。

 ボブ・ディランが、ノーベル文学賞の選考当局に「受けます」と伝えてきたそうだ。ちょうど北海道新聞の書評で湯浅学さんの『ボブ・ディラン――ロックの精霊』を紹介したばかりで、受賞辞退とはならなかったわけで、原稿の手直しは無しになった。

リボンの騎士に扮した小池百合子・東京都知事拡大リボンの騎士に扮した小池百合子・東京都知事。何だかなあ
 アメリカ出張のためのパッキング。ヒラリー・クリントンのメール問題が再燃する様相だが、このギリギリのタイミングで何が起きようとしているのか。FBI長官がここで動き出した政治的な意味合いは非常に大きい。

 ハロウィーンで渋谷がとんでもないことになっている。小池百合子知事まで「リボンの騎士」姿でお出ましし、それを我々メディアがよってたかって報じている。何だかなあ。露出こそ力の源泉か。

10月30日(日) 朝一番の飛行機で高知へ。眠い。今年4月に約束していた講演だ。高知県安芸市ののどかな風景が目の前に拡がる。ここの中学校の体育館で120人を前に話す。あっという間の120分。聴衆がとても熱心なのと、若い人がかなり見受けられたのが希望だ。高知には数年前に憲法企画で、自由民権運動の取材に来て以来だ。お上の言論弾圧に対して「新聞の葬式」を挙行した史実や、芸伎さんたちの人権デモやら歴史的には結構ワイルドな土地柄がいいなと思う。「いごっそう」「はちきん」という言葉がまだ生きている。

 高知の人は飲酒を好む人が多いという。日本酒はもちろんのこと、ビールの一人当たりの消費量も全国トップクラスだとか、講演のアテンドにあたってくれたIさんが教えてくれた。キリンビールの販売している各県仕様のビールがあって、高知県用のビールはアルコール含有量が9%くらいあるんですよ、とか言っていたが、本当なら次回、高知に来た時には試してみよう。「図書新聞」の書評原稿。

トップが変わる可能性が見出せない僕らの国

10月31日(月) 朝5時半起床。高知空港へ。羽田着8時50分で、国際線に乗り替えてアメリカへ。シカゴ経由でワシントンDCに入る。長い長い旅の始まり。考えてみたら今年も残すところ、あと2カ月しかないのだ。時間の経過するのが加速度をともなっているように速く感じる。シカゴまで10時間余り。そこから乗り換えて、ワシントンDCのレーガン・ナショナル空港までは、2時間ちょっとで着いてしまう。いつも時差調整に失敗してきたので、今回は機内で映画も見ず(実際みたい映画がなかった)、お酒も飲まず(これがつらかった)、睡眠導入剤というのを初めて飲んだら10分ほどで眠ってしまった。まあ4時間はきちんと寝られた。こんなことは初めてだ。

 機中で読んだ新聞のトップ記事はいずれもクリントンのEメール問題でFBIが再調査に乗り出した件だった。それにしてもFBI長官コミーの真意は何なのか。FBIの歴史はアメリカ政治の裏の部分を形成しているので気にかかる。午後2時にワシントンDC着。S、S、Iさんらと合流。DCは想像していたよりかなりあったかかった。ホテルで1.5時間仮眠。

 DC支局→ハロウィーンの仮装の取材でジョージタウンへ。さすがに夜は冷え込んできたが、見た限り、一人として、クリントンやトランプに関係した仮装の人はいなかった。たった一人、オバマの大きなお面をかぶった人がいて受けていたけれど。空振り。ハロウィーンでも不人気ということなんだろうな。まあ、NYならいるんだろうけれども。すっかり体が冷え込んでしまった。こういう時は風呂に入って眠ることだ。FBIのEメール再調査がどのくらい選挙に影響を与えるのか。ワシントンポスト/ABCの調査が最もインパクト大で、クリントン46対トランプ45とわずか1ポイント差にまで縮まったというものだ。

 韓国のパク・クネ大統領の地位が危うくなってきたとの判断で、ネタが差し替わる。新しい大統領を選ぼうという国と、現職大統領を葬ろうという国。そして、政治のトップが全く変わる可能性が見出せない僕らの国。レイムダックになった大統領(オバマ)の期間中にTPPを国会で無理やりでも通そうとする国って、一体何なんだろうか?


筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて――モスクワ特派員滞在日誌 1991-1994』(筑摩書房)、『二十三時的――NEWS23 diary 2000-2002』(スイッチ・パブリッシング)など。共著に『テレビはなぜおかしくなったのか<原発・慰安婦・生活保護・尖閣問題〉報道をめぐって>』(高文研)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店)など多数。

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