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日ロ会談、北方領土問題の実質進展は望み薄

動いているかのように見せる「ダメージコントロール」より本質的な議論を

大野正美 朝日新聞記者(報道局夕刊企画班)

 すでにダメージコントロールの様相が濃くなっている。12月15、16両日に安倍晋三首相とプーチン大統領が山口県長門市と東京で開く首脳会談に対する日ロ両政府の対応である。

首脳会談に臨むロシアのプーチン大統領(右)と安倍晋三首相=19日午後5時34分、ペルー・リマ安倍晋三首相は、ロシアのプーチン大統領(右)から何を引き出せるだろうか=2016年11月19日、ペルー・リマの首脳会談
 読売新聞は8日、今回の首脳会談では、北方領土4島でのビザなし交流に経済人も含める方向で合意する見通しと報じた。

 同紙は、4島での共同経済活動でも、将来的な実施で合意を目指して調整を続けている、と書いた。

 同日、産経新聞も、年明けに外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)を2013年11月以来3年ぶりに開く方向で日ロ両政府が調整に入った、と報じた。

日ロが協力した成果の演出

 少し前は、今回の首脳会談では、政治関係や領土問題にも触れた包括的な成果文書を両首脳が署名の上で出す予定はないとされていた。経済関係では、今年5月の首脳会談で安倍首相が示した8項目の経済協力提案をさらに両国政府が肉付けした約40の協力プロジェクトの実施をうたい上げる見通しだ。それに比べ、このままでは、政治関係、とりわけ領土問題で、はなはだしく見落とりするのは避けられない。

 両紙の報ずるようなことがらが実際にまとまり、さらに首脳間の合意文書にでもまとまれば、それなりに形の上では成果は示せるであろう。だが、ビザなし交流の対象に経済人を含めることは、北方4島に現在ある仕組みを若干拡大しただけに過ぎない。「2プラス2」の実施も既存の協議の仕組みの復活である。いずれも目新しいことではない。

 一方、仮に北方4島での共同経済活動の将来的な実施で基本合意ができれば、それはそれで新しい試みにはなる。ビザなし交流に経済人を含めることも、その備えの意味合いを持つ。しかし、経済活動をどちらの国の法律で規制するかという管轄権の問題で最終合意するのは、主権のありかがからむため、極めて難しい。

 仮に、特別な管轄制度を持つ特区の設置などで実施にこぎつけても、ロシアが4島を実効支配する現状は何ら変わらず、その固定化を強める面もあるため、北方領土問題の解決につながるかどうかも微妙だ。これまで何度も両国間に浮上しながら、実現されずにきたゆえんである。

 つまり、領土問題は本質的に何も動いていないのだが、日ロの役所同士が協力してあたかも動いているかのような

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