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12月20日(火) 宿酔ひどし。局での定例会議中、ずっと頭痛。トルコで駐アンカラ・ロシア大使が現職警察官に暗殺された。「神は偉大なり! アレッポを忘れるな! シリアを忘れるな!」と叫んで、至近距離からピストルで大使を射殺したらしい。ドイツでもトラックがクリスマス・セール中の繁華街に突っ込むテロ事件。キリスト教の祝祭日、クリスマスが近づくにつれて、この種の宗教がらみの事件が起きる。

 以前、一緒に職場で働いていたADさん2人が訪ねてくる。皆、いろいろと大変なのがわかる。夜、NHKの「クローズアップ現代」をみた。キャスターと時間帯が変わってからほとんど見なくなったが、沖縄の特集をやるというのでみた。やはり「NHK的」というか、期待値以下だった。

 以前、澁澤龍彦を偲ぶ会でお会いした桑原弘明さんのScope展。4点のみの展示だが、ミクロコスモスの幻想美に魅了される。一個あたりの製作日数が3か月以上だという。

何だかなあ、何だかなあ、何だかなあ……

12月21日(水) 朝一便で沖縄へ。眠い。午前9時、那覇空港着。名護へ直行。東京からコートを着込んで乗りこんできたのだが、沖縄に着いてみると、Tシャツで歩いている人もいる。今日はとりわけ暖かい日らしい。高江区には、本土からの取材陣が参集していて、あしたの北部訓練場返還式典の事前取材をしている。NHKとかテレ朝の取材チームとあちこちで遭遇した。以前からの取材でお付き合いのできた住民の方々の声を聞き歩くが、オスプレイ墜落で明らかに空気が変わった。高江中学が来年(2017年)3月で廃校になるとのこと。「そのことが今最もさびしい」と、76歳の喜友名朝栄さんは語っていた。オスプレイ、今日に限って飛行せず。

北部訓練場返還式が行われる会場へと向かう交差点で抗議活動をする人たち=22日午後3時50分、沖縄県名護市拡大北部訓練場返還式会場へ向かう交差点での抗議活動=2016年12月22日、沖縄県名護市
12月22日(木) 雨が降ったりやんだりのぐずついた天気。朝、高江のN1ゲート前。すっかり様変わり。ダンプによる砂利搬入がないので。那覇で翁長雄志知事インタビュー。膝つき合わせての近距離での対話。今日の返還式典には参列しない。

 その北部訓練場返還式典が午後4時から、中部名護市の万国津梁館で行われるのでそちらに移動。会場入り口には多くの抗議市民らが来ている。騒然としている。激しい雨が降って来た。返還式典を取り巻く人々の怒りを象徴するような天気か。

 右翼団体の街宣車がやって来て大音量でがなりたてている。この騒音レベル自体が違法なのだが警察は何もしない。もう麻痺しているのだ、僕らの感覚も。

 会場までは沖縄防衛局が仕立てたバスで移送される。セレモニーには官房長官や防衛大臣、ケネディ駐日大使、在日米軍司令官らが参列。ケネディ大使が『恋ダンス』に興じるYoutube映像をみたばかりなので、何だかなあ、という気持ちがわいてきてしまう。式典が始まるまで会場にBEGINの『島人ぬ宝』がBGMで流され続けている。何だかなあ、という気持ちがわいてきてしまう。懇親会会場に仲井真弘多前知事の姿をみたが、何だかなあ、という気持ちがわいてきてしまう。

 もうひとつの集会会場に移動。こちらの方に翁長知事、稲嶺進名護市長らが姿を見せている。オスプレイ事故に抗議する緊急県民集会。知事のあまりにも鮮明な態度表明だ。挨拶の中で知事は米軍を「よき隣人というわけにはいかない」と明言した。さらに日本政府の姿勢を「沖縄県民を日本国民とみていないとしか思えない」とかなり強い憤りの言葉を発していた。さらに琉球言葉を多用していた。「チャーシンマキテーナイビラン(どうしても負けてはいけない)」。4200人の参加者で会場は熱気に包まれていた。夜、旧知のSさんらと話し込む。

NHKが変わった?

12月23日(金) 朝、NHKの皇室特集をみた。生前退位で揺れたこの一年の振り返り。このテーマではNHKは独走していた。いろいろやらねばならないことが押し寄せてきて何だか年の瀬感一杯。体を休める必要がある。朝日新聞をみて沖縄の扱いがそれほど大きくないので、何だかなあ、という気持ちがわいてきてしまう。名護のビジネスホテルをチェックアウト。

 午後の便で東京に戻る。東京に帰ると、この季節にしてはやけに暖かい。夜、在ワシントンのIさん、Sとともにトランプ大統領就任式取材の打ち合わせ。NHKのTさんからお知らせをいただいていたBSプレミアム『矢野顕子~JAPANESE GIRL~』をみる。以前みた松任谷由実の「ひこうき雲」のと同じスタイル。矢野顕子のデビューアルバムの衝撃は僕も忘れられない思い出だ。

 同じNHKの夜7時のニュースで「ブラック企業大賞に電通」を放送していたので驚いた。へー、NHKがねえ。内部告発の電通現役社員の覆面インタビュー(「ちっとも体質は変わっていない」との趣旨)をまじえながら長々と放送していた。きのうの「ニュースウオッチ9」で沖縄高江をオスプレイ事故と絡めて長く放送していたこともあって、何だかNHKが変わったのかなとの感想を一瞬抱いた。会長交代が決まり、一時的な統制権力の空白時間ができたのかもしれないな、などと邪推する。

12月24日(土) 今年最後の「報道特集」のオンエア。前半は、沖縄高江ヘリパッド問題とオスプレイ墜落事故。後半は知的障害者支援施設「かりいほ」の取材記録。取材に時間をかけたものは、厚みが違うなあと実感した。「べてるの家」のことを思い出した。終了後に番組の忘年会。「報特バンド」は年々レベルが向上していく。それぞれの人間模様。女衒的な生き方。一匹狼の生き方。右往左往して自分を殺す生き方。

12月25日(日) けさの朝日新聞の朝刊は読みごたえがあった。電通過労死自殺の女性の母親の手記。そして相模原の事件とノルウェーの大量殺人事件の共通点。孤立と弱者排撃。

 北海道から姪が遊びに来た。わが家に滞在。僕は今日からちょっと長めの海外取材に出るので、留守宅にできるだけ長々と滞在して欲しい。いつも旅の直前にバタバタするのは悪い癖だ。旅先で読みたい本を3冊。アレクシエーヴィチの『セカンドハンドの時代――「赤い国」を生きた人びと』は600ページ超の超分厚い本で持っていくかどうか迷ってしまう。トランクが重くなったのはそのせいだ。


筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて――モスクワ特派員滞在日誌 1991-1994』(筑摩書房)、『二十三時的――NEWS23 diary 2000-2002』(スイッチ・パブリッシング)など。共著に『テレビはなぜおかしくなったのか<原発・慰安婦・生活保護・尖閣問題〉報道をめぐって>』(高文研)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店)など多数。

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