戦死者、戦傷者を想定していない「軍隊」の危うさ
2017年01月19日
リドリー・スコット監督の『ブラックホーク・ダウン』という映画をご存知だろうか。これは1993年10月3日のソマリア・モガディシュでの米軍の「負け戦」を題材にした同名のノンフィクションを元にした戦争映画だ。
当初簡単な国連平和活動だと思われていたミッションだったにもかかわらず撃墜された米軍のヘリ、MH-60ブラックホーク。この乗員救出に向かった米国の特殊部隊やエリート部隊が現地の圧倒的多数の民兵から攻撃されて大きな犠牲を出した。のみならず、裸にされた戦死者の死体が市中を引き回され、それがテレビなどで世界に発信された。これが原因で当時のクリントン政権はソマリアからの撤兵を決定したと言われている。
同様のことが南スーダンのPKOで交戦任務を与えられた自衛隊部隊に起こらないとは限らない。米軍の最精鋭部隊ですら、このような結末を迎えることがある。対してほとんど実戦を想定してない、“畳の水練”が仕事だった自衛隊が不要な実戦を行えば悲惨な結果を生むことになる。
自衛隊の最高指揮官でもある安倍晋三首相は、自衛隊は事実上軍隊と同じであり、法律さえ変えれば「駆けつけ警護」といった「簡単な任務」はこなせて当たり前と思っているのだろう。だがそれは現場の事情を知らない妄想でしかない。
自衛隊に現状のまま「駆けつけ警護」をやらせれば、軍隊としての能力が欠如しているために、他国の軍隊の何倍もの死傷者を出すことが予想される。手足がもげ、
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