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南スーダンで負傷した自衛隊員は救えるのか

戦死者、戦傷者を想定していない「軍隊」の危うさ

清谷信一

パリで行われた防衛装備見本市、ユーロサトリ2016で米陸軍が展示した応急処置訓練用の人形拡大パリで開かれた防衛装備見本市「ユーロサトリ2016」で米陸軍が展示した応急処置訓練用の人形=提供・筆者

米軍の最精鋭部隊すら犠牲に

 リドリー・スコット監督の『ブラックホーク・ダウン』という映画をご存知だろうか。これは1993年10月3日のソマリア・モガディシュでの米軍の「負け戦」を題材にした同名のノンフィクションを元にした戦争映画だ。

 当初簡単な国連平和活動だと思われていたミッションだったにもかかわらず撃墜された米軍のヘリ、MH-60ブラックホーク。この乗員救出に向かった米国の特殊部隊やエリート部隊が現地の圧倒的多数の民兵から攻撃されて大きな犠牲を出した。のみならず、裸にされた戦死者の死体が市中を引き回され、それがテレビなどで世界に発信された。これが原因で当時のクリントン政権はソマリアからの撤兵を決定したと言われている。

 同様のことが南スーダンのPKOで交戦任務を与えられた自衛隊部隊に起こらないとは限らない。米軍の最精鋭部隊ですら、このような結末を迎えることがある。対してほとんど実戦を想定してない、“畳の水練”が仕事だった自衛隊が不要な実戦を行えば悲惨な結果を生むことになる。

想定してこなかった戦死者や戦傷者

イギリスの事見本市DSEIで展示された、戦傷手当用訓練システムの機材。実際の人間に装着して使用する。実戦ではこのような怪我が起こるのだ=提供・筆者拡大イギリスの軍事見本市DSEIで展示された、戦傷手当用訓練システムの機材。実際の人間に装着して使用する。実戦ではこのような怪我が起こるのだ=提供・筆者
 一般に、自衛隊はハイテクで武装した、精強な「軍隊」というのが一般国民のイメージだろう。だがその実態は、一部にハイテク装備はあるものの、情報、兵站、衛生などは極めて脆弱、装備は旧式であり、戦争や戦闘ができるレベルではない。

 自衛隊の最高指揮官でもある安倍晋三首相は、自衛隊は事実上軍隊と同じであり、法律さえ変えれば「駆けつけ警護」といった「簡単な任務」はこなせて当たり前と思っているのだろう。だがそれは現場の事情を知らない妄想でしかない。

 自衛隊に現状のまま「駆けつけ警護」をやらせれば、軍隊としての能力が欠如しているために、他国の軍隊の何倍もの死傷者を出すことが予想される。手足がもげ、 ・・・続きを読む
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筆者

清谷信一

清谷信一(きよたに・しんいち) 軍事ジャーナリスト

軍事ジャーナリスト、作家。1962年生まれ。東海大学工学部卒業。03~08年まで英国の軍事誌Jane's Defence Weekly日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関、Kanwa Informtion Center上級顧問。日本ペンクラブ会員。著書に『専守防衛─日本を支配する幻想』『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『自衛隊、そして日本の非常識』『ル・オタク フランスおたく物語』、共著に『軍事を知らずして平和を語るな』『アメリカの落日―「戦争と正義」の正体』『すぐわかる国防学』など。最新刊に『国防の死角――わが国は「有事」を想定しているか』。

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