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「時代遅れ」の魅力

1月10日(火) 局で定例会議。他メディアがやらない重要なネタをきちんとやろうという志はなかなか共有されないものだ。他局もやっているネタに流れ込んでいくのはテレビの宿痾になりつつある。イライラ感が募る。泳ぎに行きたい。

 昼過ぎからMさんとネットメディアの言説の劣化をめぐって話をする。「ポスト・トゥルース」とか「クラウド・ソーシング」といわれる現象がいかに報道という分野の仕事をダメにしているか。それにはどうしたらいいのか。観念的な話ではない。具体的な話だ。それも僕らが日々体験していることがらである。たとえば「クラウド・ソーシング」で集められた自称ライターたちは、1文字=0.5円という計算で対価を得る(これはまだいい方だという)。400字詰め原稿用紙10枚分を書くとすると、2000円の支払い。そういうシステムが蔓延するのは仕方がないことなのか。

イタリア最南端の小さな島』拡大『海は燃えている イタリア最南端の小さな島』=ビターズ・エンド提供
 ベルリン映画祭でグランプリを獲得したイタリア映画『海は燃えている イタリア最南端の小さな島』をみる。

 難民船のイタリア当局による救助作業がノーナレーション、ノースーパーインポーズで何の説明もなしに淡々と撮影されている部分のインパクト。それと、島の人々の日常が併置されており、実に考え込まれた構成となっている。難民とは何か。破綻国家とは何か。僕はトランプのことを考えながらみていた。夜、新宿でS、H、I、Nらと歓談。飲み過ぎた。

1月11日(水) 午前中、ひたすら泳ぐ。体重を2キロ近く落とす。三上智恵さんの映画『標的の島 風かたか』をやっとみる。前日に『海は燃えている』をみていたので、三上さん自身のナレーションが入っているのがどうしても気になってしまうのだ。僕は、ドキュメンタリー映画にナレーションとかスーパーは原則的にはいらないんじゃないかと思っている人間だ。が、内容は充実していた。宮古島。高江。辺野古。機動隊員。島袋おばあ。山城博治さん。沖縄の人々の豊かな伝統と文化・風土に根ざした日常。最も考えたことは、≪カッコ悪いことは何てカッコいいんだろう≫ということかもしれない。山城博治さんのことだ。国が辺野古訴訟で裁判所が提案した和解案に応じた時に山城さんがみせた「無邪気な」喜びよう(僕は性格が悪いのでワナだと思ったが)や、「We Shall Overcome」なんかを歌い出す時の、信じられないくらいの「時代遅れ」ぶりが、敢えて言えば、この上ない魅力になっているのだ。おそらくこの映画はまだ続編が何本も作られることになるだろう。

 NHKの7時のニュースを見ていてぶったまげた。講談社の「敏腕編集者」が妻を殺害した容疑で警視庁に逮捕されたというニュースをトップで延々とやっていた。『進撃の巨人』掲載誌の創刊スタッフだとか。これがトップニュースか。何だかなあ。

 夜、勉強会の立ち上げ。局内外の若手中心に。17年前の『筑紫哲也NEWS23』の同録をみる。北海道・浦河にある「べてるの家」からの全編生中継スペシャル。今の放送より、はるか、はるか先をめざしていたなあ。感動してしまった。だがその感動が若い人たちと共有できたかな。

微笑ましさと巨大な「喪失」

1月12日(木) 朝早くゴミ出し(今日は瓶・缶・ペットボトルの日)に出たら、 ・・・続きを読む
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筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて――モスクワ特派員滞在日誌 1991-1994』(筑摩書房)、『二十三時的――NEWS23 diary 2000-2002』(スイッチ・パブリッシング)など。共著に『テレビはなぜおかしくなったのか<原発・慰安婦・生活保護・尖閣問題〉報道をめぐって>』(高文研)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店)など多数。

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