不足するキット、十分な応急処置ができない衛生兵……
2017年01月23日
南スーダンで負傷した自衛隊員は救えるのか――戦死者、戦傷者を想定していない「軍隊」の危うさ
筆者はこの2年ほど、陸上自衛隊の個々の隊員が持つファースト・エイド・キットがいかに貧弱か繰り返し述べてきた。それを防衛省の記者会見でも追求してきた。
陸自の救急セットでは、自衛隊員の命を救えない(WEBRONZA)
しかし防衛省、自衛隊はそのお粗末な衛生の実態を政治家や国民に隠蔽してきた。
2年前、陸上幕僚監部はPKO用キットは米軍のIFAKIIと同等であり、国内用が貧弱でも、それは国内に病院がたくさんあるから大丈夫だと主張した。
だが実態はPKO用ですら大きくIFAKIIに劣っている。また国内で有事が発生した際には民間人の多数の被害者が病院に担ぎ込まれるだろうから、隊員を処置する時間があるわけもない。しかも陸自のキットが貧弱なため、病院に担ぎ込まれる前に多くの隊員が戦闘現場で絶命しているだろう。死んだ人間は生き返らない。しかも想定されている島嶼防衛で、南西諸島のどこに大規模な総合病院が存在するのか。
この陸幕の主張は、2015年に、「PKO用は米軍と同様であるが、国内用キットは有事には全員分ではないにしろPKO用と同内容にするよう補填する」と説明が変わっていた。これを述べたのは当時の中谷元防衛大臣、岩田清文陸幕長である。中谷大臣の発言は防衛省の記者会見のログで公表されている。
ところが自衛隊にはそのための備蓄はなく、流通在庫をあてにしているという。だが筆者が当の業者の一つに取材してみると、そんな話は聞いたことがないと説明した。そもそも、有事にそんな調達はできず、補充が決まってから告示して調達する必要があるが、これらはたいてい輸入品であり、業者は大した流通在庫をもっていない。したがって、連隊の駐屯地にでも備蓄しておかないと無理である。
こんなものを「計画」とは言わない。恐らくはこの件を筆者が執拗に記者会見で追求し
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