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[3]イスラエル重視で、和平仲介を放棄するのか

エルサレムへの大使館移転を強行すれば、悪夢の再来に

川上泰徳 中東ジャーナリスト

エルサレム近郊の分離壁拡大エルサレム近郊の分離壁

 トランプ新政権による中東外交で最も懸念されるのはパレスチナ問題であろう。選挙運動の期間から、イスラエルの米国大使館を、国際的にはイスラエルの首都として認められていないエルサレムに移すと公言してきた。

 さらに娘婿で正統派ユダヤ教徒のジャレッド・クシュナー氏をホワイトハウスの上級顧問に指名した。同氏が中東和平担当になるという話も出ている。エルサレムへの首都移転発言とともに、米国が中東和平で公平な仲介者となりうるかどうかには大きな懸念が出ている。

反占領闘争のきっかけになったエルサレム問題

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 イスラエルは1967年の第3次中東戦争でエルサレム旧市街を含む東エルサレムを占領、1980年に一方的に併合し、「永遠の首都」として宣言した。

 旧市街にはイスラムの聖地である「アルアクサ・モスク」や、キリスト教の聖地「聖墳墓教会」がある。米国や欧州諸国、日本を含む国連加盟国のほとんどがイスラエルによる東エルサレムの併合を承認しておらず、各国の駐イスラエル大使館は商業都市テルアビブに置かれている。

 米国が大使館をエルサレムに移せば、パレスチナ人からだけでなく、イスラム世界から強い反発が起こることは必至である。キリスト教世界からも批判が上がるだろう。

 エルサレム問題が危機をはらんでいることは、強硬派の故シャロン氏(元首相)が2000年9月に右派リクードの党首としてアルアクサ・モスクが建つ「神殿の丘」に立ち入り、それが、第2次インティファーダ(反占領闘争)の始まりとなったことでも明らかである。

 第2次インティファーダではパレスチナ武装組織の自爆テロと、イスラエル軍によるパレスチナ自治区への大規模侵攻の応酬という、最悪の暴力の連鎖となった。

 現在、東エルサレムはイスラエルによるヨルダン川西岸での分離壁の建設によってパレスチナ自治区から切り離されている。東エルサレムに住むパレスチナ人はイスラエル側からも排除されて、閉塞状態に置かれている。

 2015年秋から東エルサレムやヨルダン川西岸で、パレスチナ人の若者たちがナイフでイスラエル兵を襲撃する暴力が続いた。組織的な背景のない暴発的な行為とされたが、パレスチナ人の若者たちの救いのない状況を反映していた。いま、パレスチナでは「第3次インティファーダ」が語られている。トランプ政権がエルサレムへの大使館移転を強行すれば、 ・・・続きを読む
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筆者

川上泰徳

川上泰徳(かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト

長崎県生まれ。1981年、朝日新聞入社。学芸部を経て、エルサレム支局長、中東アフリカ総局長、編集委員、論説委員、機動特派員などを歴任。2014年秋、2度目の中東アフリカ総局長を終え、2015年1月に退職し、フリーのジャーナリストに。元Asahi中東マガジン編集人。2002年、中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社)、『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店)、『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版)、最新刊に『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)。

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