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台湾海峡と朝鮮半島が大きな焦点に?

 米国のトランプ政権がいよいよ始動しましたが、東アジア政策も日米関係も、かなり不透明と言えるでしょう。

 2016年12月に台湾の蔡英文総統と電話で会談したトランプ氏は「一つの中国に縛られない」などと発言し、物議をかもしました。その後、2月に中国の習近平国家主席と電話会談し、「一つの中国」政策を「尊重する」と語りました。これらは、国際政治・世界経済の中で存在感を増す中国から、なんらかの譲歩を引き出すための一つのレバレッジ(梃子)なのかもしれません。

 しかし、もしトランプ政権が、本当は「台湾は中国の一部である」という中国側の大原則を受け入れがたいと考えているのなら、1970年代にようやく合意した米中国交回復の基本的な考え方を「ちゃぶ台返し」することになります。たとえば、一つの中国を前提として1979年の国交樹立時に制定された米国の国内法である「台湾関係法」などの見直しが実際におこなわれる可能性もあるのです。

 言うまでもなく中国と台湾は、朝鮮半島の韓国と北朝鮮のような「分断国家」という関係ではありません。国際社会では「一つの中国」が広く認められており、台湾=Taiwan(Taipei)という呼称が普通になっています。しかし一方で、台湾自身は中華民国=Republic of China (R.O.C.)という名称も使い続けています。いまのところ平穏を保っている中台問題ですが、トランプ政権の出方によっては、再び先鋭化するかもしれません。

 韓国では朴槿恵大統領の職務執行権限が停止されるという政治的混乱が続いています。そんな中で、北朝鮮は、金正恩朝鮮労働党委員長が2017年1月1日に「ICBM(大陸間弾道ミサイル)の開発が最終段階に入った」と発表するなど、軍事的挑発を止めようとしません。トランプ政権は北朝鮮にどう対応するつもりなのでしょうか。

 どうやら2017年は、東アジアにおいて、台湾海峡と朝鮮半島をめぐる問題が再び大きな焦点に浮上してきそうです。

 中国と台湾、韓国と北朝鮮という二つの「分断」は、いわば冷戦時代を象徴する問題です。そして遡れば、明治からの日本の対アジア進出がやはりその遠因になっています。その意味でも、前回述べたように、日本の近代化の歩みと深く関係する「アジア主義」を探ることは、非常に今日的なテーマと言えるのではないでしょうか。

 相変わらず日中関係も思わしくありません。言うまでもなく、今日の日中関係を考えるうえで、アジア主義を探ることは不可欠です。

 2016年12月、中国機にスクランブルをかけた自衛隊機が妨害弾を発射したと中国側が発表しました。こうした「逆関東軍」を思わせるようなニュースの真偽はともかく、今後、こうした謀略まがいのことを中国が仕掛けるのか、あるいは逆に日本が仕掛けるのか、尖閣諸島の領海侵犯など、何らかの小競り合いで日中が局地的に矛を交えることもあり得る話です。

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筆者

姜尚中

姜尚中(カン・サンジュン) 東京大学名誉教授、熊本県立劇場館長兼理事長

1950年、熊本県熊本市生まれ。国際基督教大学准教授、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授、聖学院大学学長などを経て現職。専攻は政治学、政治思想史。『逆境からの仕事学』(NHK出版新書)、『世界「最終」戦争論——近代の終焉を超えて(集英社新書、共著)、『姜尚中と読む夏目漱石』(岩波ジュニア新書)など著書・共著多数。

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