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[1]トランプ大統領は豊臣秀吉に似ている

トランプ氏当選の背後に最高裁人事/保守派が投票行動を決める要因に

松本一弥

憲法学者・木村草太VS作家・新城カズマ(司会は松本一弥・朝日新聞WEBRONZA編集長)

 

東京・下北沢の本屋B&Bで行われた新城カズマさんと木村草太さんの対談風景拡大東京・下北沢の本屋B&Bで行われた新城カズマさんと木村草太さんの対談風景

この対談は、2月19日に東京・下北沢の本屋BBで行われた「世界がざわついている今、時空をワープしながら<トランプ・秀吉・憲法・AI>を語ろう」(presented by 朝日新聞WEBRONZA)を加筆修正したものです。3回に分けてお届けします。
※最終回には、会場で配布した「新城カズマと、木村草太が薦める『2017年を生きぬくオススメ本ベスト10』」の書籍リストを紹介します。

こんな時代だからこそタイムマシンに乗って

新城カズマさん(左)と木村草太さん拡大新城カズマさん(左)と木村草太さん

松本 新城さんの大ファンを自認する憲法学者の木村さんからご提案をいただいて今回の運びとなった次第です。

 木村さんとはこれまで何度も対談の仕事をご一緒してきましたが、対談をしていただく相手は安倍首相の側近の方であったり、前防衛相の方であったりで、テーマも憲法や安全保障の分野ばかりでしたから対談現場はいつも緊迫した雰囲気に包まれていました(笑い)。でも今日は想像力を駆使して次々と斬新な作品を発表してこられた気鋭の作家との対談ですので、ぐっとリラックスしてやっていきたいと思います。

 憲法学者の木村草太さん、作家の新城カズマさん、それぞれのファンの方はお二人のお仕事の中身をよくご存じだと思うのですが、その2人がかけ合わされるとどんな化学変化が起きるのか?というあたりが本日の見どころかと存じます。さきほど隣の喫茶店で3人で簡単な打ち合わせをしましたが話が尽きなくて、はたして所定の2時間で終わるかなというふうに今思い始めているところです。

 ご存じのように昨年のアメリカ大統領選の結果、ドナルド・トランプ氏が第45代の大統領に就任しました。以来、トランプ氏の一挙手一投足に世界がざわつくという日々が続いています。そもそも、アメリカの大統領が発信するツイッターの激烈な内容に世界がその都度揺さぶられる時代が来るとは思いもよりませんでした。でも、こういう時代だからこそ、人間の想像力という「タイムマシン」に飛び乗って時空を自在にワープしながら、目の前に生起している問題をいろいろな角度からじっくり考えてみたい――というのが今回の対談の趣旨です。

 ではまず最初にお二人からごあいさつと自己紹介をかねて一言いただければと思います。

「新城さんは知的好奇心のかたまりのような人」

木村 木村でございます。どうぞよろしくお願いします。私の仕事は憲法学者ということになっておりまして、大学で憲法を教えています。昔から新城先生のファンで、一度ぜひ対談をさせていただきたいなと思っていたのですが、その願いが今日かなって本当にうれしく思います。

 新城先生は、その作品を読まれた方はご存じだと思いますが、本当に幅が広いというか、知的好奇心のかたまりのような人であります。文化人類学、歴史学、あるいは私の専門の法学に関わるような論点もどんどん堀り下げて展開していく、そういう作品を書かれている方なので、今日はぜひ広い視野からいろんなテーマについてお話をしていただけるんじゃないかなと思っております。(会場・拍手)

松本 ありがとうございます。では新城さん。

「今後の小説のネタを見つけたい」

新城 新城カズマと申します。小説を書いております。ライトノベルを書いたり、SFを書いたり、最近はちょっと歴史小説なんかを書いておりますが、基本的にいろいろ書きます。まあそれこそ本当に法律を扱った小説も書きたいなと思っていて、前に、あれはTBSラジオでしたっけ?

木村 そうです。はい。

新城 最初に木村さんとお会いした時、「おー、ようやくこれで俺にも小説と法学をつなぐ道ができた」とか思って、勝手に一人で盛り上がったんです(笑い)。まあそれ以外でも盛り上がって、今回もさきほど打ち合わせで盛り上がっていたんですけども、私としては今回はいろいろお話をうかがって今後の小説のネタを見つけたいと思っております(笑い)。ぜひ勉強したいと思ってますので、どうぞよろしくお願いします。

木村 よろしくお願いします。(会場・拍手)

新城 あともう一つ、すみません、トランプ政権ってまだありますよね? (会場・笑)。私、朝からまだネット見てないんで、もしかしたらもうなくなっちゃってるんじゃないかとそれだけがちょっと怖くて。まだあるなら大丈夫です、その前提でやります。

ナチスが自分の本を燃やす現場を目撃したケストナー

松本 本題に入る前に私から一点、ドイツの児童文学者であるエーリヒ・ケストナーと新城さんの関係についてうかがいたいと思います。といいますのも、「ダ・ヴィンチ」という雑誌の2014年10月号の中に、「<本をめぐる短編>書き下ろしシリーズ」というのがはさみこんでありまして、そこに新城さんが素晴らしい作品を書かれているからなんです。タイトルは「書物を燃やす者たちは、いずれ人をも燃やすだろう」です。

 ケストナーは「エーミールと探偵たち」とか「飛ぶ教室」とか、印象に深く残る児童文学をたくさん書いた作家として知られているわけですが、新城さんの作品はそのケストナーに対する、ある種のオマージュになっているんですね。ちなみにこの会場で、子どものころにケストナーの作品を読まれた方はどれぐらいいらっしゃいますか?なるほどかなりの方が読まれていますね。そのケストナーの本は実は1933年、当時のナチス政権によって焼かれてしまいました。しかもケストナーは、自分の本が焼かれる現場に出かけて行って、それを自分の目で目撃しているんです。

 ケストナーの作品の翻訳も手がけた文学者の高橋健二さんが書かれた『ドレースデンの抵抗作家 ケストナーの生涯』(駸々堂)によると、ケストナーは自分が体験した焚書(ふんしょ)事件についてこう記しているそうです。

 「一九三三年、私の本が国立歌劇場のとなりの大広場で、ゲッペルス(ナチス宣伝大臣)という男によって、陰惨な大げさな芝居ざたで焼かれた。二十四人のドイツの著作家(「資本論」のマルクス、精神分析のフロイト、最も多く読まれていたシュテファン・ツワイク、ヴィーンのシュニッツラー、ベルリンのブレヒトなど)が、象徴的に永遠に根絶されるべく、呼びあげられた。二十四人の著作家中、私はこの芝居じみた厚顔さに立ち会うためにみずから現場にあらわれた唯一のものであった。私は、あごひもを締めた突撃隊学生の間にはさまれて、大学の前に立って、私たちの本がめらめらと燃える炎の中に投げこまれるのを見、うそつきゲッペルスの長広舌を聞いた。(<退廃と独特的崩壊に逆らって! 家庭と国家における純潔と風紀のために>というわめき声と共に本は焼かれた」)」、(同書103ページ)

  ケストナーはその後も亡命することをせずに12年間、ナチス支配下のドイツで執筆活動を続けたといいます。新城さんの「書物を燃やす者たちは、いずれ人をも燃やすだろう」では、ケストナーが生きた時代と21世紀の日本が交互に描かれていて、まさに時空をワープしながら作品を完成されているのですが、新城さんはなぜこのケストナーの作品を選ばれたのか、そのあたりからまず教えていただけますか?

短編に書いたことが現実的な課題として迫ってくるとは……

新城カズマさん拡大新城カズマさん

新城 ケストナーの作品はもちろん私も子供の頃大好きで、ずっと読んでいて、最近も読んでるんです。つまりずっと興味があって、「ケストナーの本が燃やされた」という事実自体は知ってたんですけども、「ダ・ヴィンチ」さんから依頼を受けて「本についての短編を書いてください」って言われたときに、改めて調べ直したら、本人がその燃やすところを見に行ってるっていう記述が、歴史的事実としてあったんですね。

 それで「何じゃこの人は」と思ってさらに調べていったら、いろいろおもしろい事実が出てきたので、それで書いたという感じです。

 実際、最近の世界のいろんな動きがナチスのときとちょっと似てるんじゃないかみたいなことは、もちろんみなさん、もう見ればわかるというか、だれでも感じられるところなんですけども。

 それに加えて、「じゃあ書物って何で燃やされちゃうんだろう」とか、「なぜ権力は本を憎むことがあるんだろう」みたいなことをいろいろ考えながらあの短編を書いたわけですが、わりとおかげさまであちこちで好評をいただいてるというところですね。

 まさかこんなに早く、短編に書いたことが現実的な課題として迫ってくるとは、書いた当時は全然夢にも思わなかったんですけども。あれからBrexit(ブレクジット、英国のEU離脱決定)はあるわ、トランプ氏は大統領に当選するわ、何じゃかんじゃという、ちょっとそのへんのあまりのスピードに私もどうしたらいいのかよくわからないので、木村さんにおすがりしたいような(笑)。

木村 (笑)

ケストナーが描く先生像はなぜ魅力的なのか?

木村草太さん拡大木村草太さん

新城 どうしたらいいんですかね? 我々は。

木村 まさに、「だからこそ歴史を学ぼう」というのが今日のテーマの一つかなと思います。娘が読書家で、ケストナーの文学全集を一通り読んでいるので、「ケストナーの何が偉いのか?」と、今日、娘から聞いてきたんです。

 まず、ケストナーに出てくる学校の先生は、全員とても魅力的なんですよね。学校の先生というと、どうしても説教くさかったりして、児童文学では悪役になったりするんです。あるいは、無理やり良い先生の設定にしようとすると、学校の秩序を無視しちゃう破天荒なキャラクターってことになるんです。

 でもケストナーの小説に登場する先生たちは、子供には媚(こ)びないんだけれども、非常に立派で、子供の尊敬も集める。そういうすてきな先生が作品にたくさん出てくるところが、ケストナーのすごいところだなと思いました。私も今日のイベントに向けて「飛ぶ教室」を読み返して、改めてそう思いました。

 なぜそんな先生が描けるのかと言えば、やっぱりケストナーの人間に対する洞察力ではないかと思います。例えば「トランプ現象」について、「リベラル嫌いが結集して、ああいう現象が起きている」みたいな分析をよく見るんですけれども、まさに「リベラルが偉そうにするので、言ってることの正しさとは別に、人間的な好感度を得られない」っていうような問題設定がある。

 それに対してケストナーは、本人は自由主義者で平和主義者ですから、もちろん今風に言えばリベラルな人で、作品もリベラル風なんです。でも、そこに出てくる先生は全然偉そうではなく、そのふるまいは自然と子供たちの尊敬を集め、また子供たち一人一人を尊重しようとしている、「本当に尊敬できるリベラルのあり方」っていうのが描かれている。これも一つ、今の現象を読み解くカギになるのかなと思います。

小説を薬のようなものとして書く

新城 ケストナーは「小説をお薬みたいなものとして書く」みたいなことをたしかどこかで言ってたような気がするんです。

木村 ほー。

新城 小説だったか、詩だったか、要するに、役に立たなきゃだめなんだよみたいな。しかもその役に立つっていうのは、心を癒やすとか、落ち着かせるみたいなことを何かある種の目的というと変ですけども、そういう効用があるものが欲しいねーみたいなことを書いてた時期があるんです。だからそれはもしかしたら、そういう時代が時代だったからこそそういうことを言ってたのか、ちょっとそのへんも私もわからないというか、いまだにケストナーは謎の人なんです。

 実際、伝記とかを調べてみると、わりと1920、30年代のベルリンで、夜中じゅう飲み明かして女性を引っかけて遊んでたとか、そういう、けっこうラブリーな話が多いんですよ。ドイツ人としては背が低いんだけど、でも何か愛らしいのでみんな惚れたみたいな、そんなような記述があったりとかして。非常に不思議な人なんですよね。まあ魅力的でもあり、不思議でもあり。まあそれは非常に気になっているんですけれども。

なぜケストナーはドイツから亡命しなかったか

新城カズマさん拡大新城カズマさん

松本 先ほどの問いに戻ると、なぜケストナーはナチス政権を逃れて亡命を選ばなかったのか?という謎がありますね。12年間、ナチス支配下のドイツで暮らすというのは並大抵なことではなかっただろうと容易に想像できます。

 それこそ同世代の作家も社会科学者も亡命しましたし、あるいは例えばドイツの批評家ヴァルター・ベンヤミンは、ピレネーの山を超えてスペイン領内に入ろうとして国境の町ポールボウで足止めをくらった晩に、絶望感から大量のモルヒネを飲んで死を選んでしまった。スペイン領に足を踏み入れることができさえすれば、あとはリスボンまで列車で出て、アメリカ行きの船に乗って「自由」を手にすることができたはずだったのに……。いずれにせよ、何とか生き延びようと人々は様々にもがいたわけですが、それに比べてケストナーは、自分の本が目の前で焼かれても「まだ何とかなる」と思ったのか、どうせナチス政権はそんなに続かないだろうと甘くみたのか。

新城 そうなんです。そこがね、私もわからなくて、短編書いたときには「えいやっ」とある程度の結論を出しちゃったんですけども、それは今でもちょっとまだ引っかかってて。短編のほうでは彼にはやっぱり楽観論があったということにしたんです。ドイツを愛するがゆえの楽観論みたいなのがあったということと、もう一つ、彼のお母さんがお年寄りでドイツから出られないので、それでしょうがなくドイツ国内にいたんじゃないかっていう説も一応伝記にはあったんですけど、ただそれにしちゃ女遊びが激しすぎるよなぁと(会場・笑)。まだちょっとそこも、私のなかでは結論が出ていないんですよね。

 だからケストナーの態度を「楽観主義」と呼んでいいのかどうかはわからないんですが、何らかの希望は持っていたとは思うんですよね。そうじゃないと、うーん。だってね、最後もう本当にナチス・ドイツが負けるときまでちゃんといましたからね。まあ最後の最後はスイスにちょびっとだけ避難してたらしいんですけれども。うーん、どうなんですかね。

トランプと秀吉はそっくり!?

木村草太さん拡大木村草太さん

松本 このへんで今日のテーマのほうに入らせていただきます。新城さんからはお題を事前にいただいておりまして、一つ目が「トランプ政権と秀吉」という。

新城 はいはい(笑)。

松本 なかなか、何か頭がくらくらするような感じがするのですが(笑)。

新城 これはそもそも、木村さんと何かをやろうねっていうきっかけになったことなんです。要するにトランプ氏が大統領に当選したときに、日本時間だと昨年の11月9日になってたのかな、それぐらいに私がツイッターでわーっとこう、「いまこんなことになってるー」っていったときに、「トランプ氏のことを調べれば調べるほど、秀吉にそっくりだー」みたいな話を私が書いたんですけど、そうしたら木村さんが、「おっ、それはおもしろいですね。どっかでやりましょうよ」ということで、今ここに居るわけなんですが。

 おそらく皆さんがイメージしている、あるいはこの100年か50年ぐらいの間イメージさせられている秀吉像とはちょっと違うんですけども……。歴史学のほうでだんだんわかりつつある実際の豊臣秀吉っていうのはどういう人だったのかみたいなこと、あるいは豊臣政権っていうのは何だったのかみたいなことと、今回のトランプ氏が何か調べれば調べるほど似てるなというのがちょっとありまして。

 ここにいまメモして書いてきたんですけども、「金ピカ好き」「女性好き」「再開発」「景気浮揚策」「壁」……。

 まず、「金ピカ大好き」。これは見ればわかるようにそのまんま。で、やたらと大言壮語したがる。とにかく巨大なものが好き。いや、これ本当に、秀吉は大阪城とか実に巨大なものを作っているんですけども。

 あと、「再開発」と「景気浮揚策」を実施する、あるいはしているという。秀吉はもちろん京都に御土居(おどい、京都を囲む土塁)作ったりとかして、あるいは聚楽第作ったりとか、あるいは金ばらまいたりとかして、当時の畿内の地域経済には非常にプラスに働いたとは思うんです。

 御土居については壁を作るっていうところが似てるなという(笑)。要するに京都の御土居っていうのは、京都を守るためのものというふうに一般的には思われてるようですが、あれも本当のところは、京都から帝(みかど)を出さないための防護壁だったんじゃないかと私は妄想しまして。まあどっちにしても、要するにトランプ氏は壁をメキシコ国境に作るっていうので当選したわけですし、秀吉のほうも京都に壁を作っちゃったわけですよね。あとは……「女性好き」(笑)。これもまあそのまんまで。

自分の理想像を演じたがる秀吉とトランプ氏?

新城カズマさんの本(左)と木村草太さんの本拡大新城カズマさんの本(左)と木村草太さんの本

新城 あと、2人は自分自身の理想像を演じたがるというところが似てるなぁというのがありまして。トランプ氏は1987年に自分の「自伝」をゴーストライターに書かせてるんですよ。もうこの時点で変な人なんですけども。しかもトランプ氏に対して批判的なライターをつかまえてきて、「お前なかなか面白そうなやつだ、やってくれ」って言って書かせて。

 そこで書かせた内容っていうのが、当時の若手実業家のトランプの実際のこととはほとんど関係のない理想的なトランプ、理想的なニューヨークの再開発業者、不動産業者なんですね。彼はそれをえらく気に入ったらしく……。その後、90年代以降のトランプはその理想像を演じているのではないかと思うような行動をとっているんですね。

 一方、秀吉は、歴史の詳しい方はもしかしたらご存じかもしれないんですけども……自分が明智光秀を倒したり、柴田勝家を倒したり、九州を征伐したりっていう時事ネタ、ほとんど数年前に起きたことを自分の部下に能の脚本を書かせて(つまり新作能を作らせて)、しかもそれを帝の前で自分で舞ってるんですよ。いやいや、本当に、本当に。これはかなりキテるキャラだと思う(会場・笑)。ね、人としてどうなんだっていうことが(笑)。たぶん本人は喜々としてやったんだと思うんですけども。何か見られていることが快感になってるような。

 現在の秀吉像ですと、「人たらし」とか「明るくて」とかいうことになってますけど、あれはほとんどすべて、司馬遼太郎がつくったキャラ設定なので(笑)。ちょっと今の皆さんの頭のなかにあるかもしれない秀吉イメージはおそらく歴史的な秀吉とは違っている、ということをご理解いただければ。

よし、秀吉をトランプとして書こう

新城カズマさん拡大新城カズマさん

 新城 探せばもういくらでも何か、もちろん違うところも全然あるんですけども、似てるところがいろいろあって。だからそういったところから、今後のトランプ政権を予測するちょっときっかけにはなるのかなっていうことと、まああとは単純に私がいま書いてる小説で秀吉をどう書くかっていうふうに悩んでたのが、「よし、トランプとして書こう」とか、自分のなかで決心ができて、ちょっと楽しい状況に今なってるんですけど。

木村 「島津戦記」にもちょっと出てきましたね。

新城 あっ、そうですね。私の書いてる「島津戦記」を今後二、三と続刊予定で……番号をつけるか別タイトルでやるか未定ですけれども、それにも登場してる。

木村 6本指の子供がちょっと出てくる。

新城 そうですね。ちらっと。まだこのときは彼が本当にちっちゃい子供の世代なので、子供として登場して、今後、まあだんだんそれが秀吉として登場してくるわけですけども。だからこれ(「書物を燃やす者たちは、いずれ人をも燃やすだろう」)を書いてるときはまだ「秀吉どうしようかなー」と思って、結構悩んでた時期で、まだ決めかねてました。

木村 そこに「リアル秀吉」が現れたと(笑)。

新城 そういうことですね。おかげで安心して今後の続刊では「オトナ秀吉」、アダルティーな秀吉が出せます。

トランプ氏と秀吉の比較に目を見開かされた

木村草太さん拡大木村草太さん

木村 トランプ氏と秀吉を並べる新城さんのツイートを見て、本当に斬新だなと思ったんです。トランプ氏の当選に、みんなが衝撃を受けていた。その衝撃をどうやって受け止めるかっていうのを、たぶん有識者を含めてみんな悩んでいて。

 当時の文脈だと、……まあ今でももちろんそうなんですけども、「ブレグジット」とかフランスの右翼政治家のルペンとか、ポピュリズムの親玉みたいなものとしてトランプをとらえようっていう論説がかなり有力だった。

 そんななかで、「トランプ氏は秀吉じゃないか」っていう視点に、すごく目を見開かされるというか。つまり、我々には非常に豊かな歴史の蓄積っていうのがあるので、相似形を探すときに、今起きてる現象、例えばルペン現象とかから探すっていう必要は全然ない。それに気づかされたという意味で、秀吉に並べるっていうのはとても印象的でしたね。

 私が最初に見た2016年11月9日のつぶやきでは、「注視すべきなのは…『誰が側近/茶坊主/寵臣として勝ち残るのか?』」と書かれていた。つまり、秀吉っていうのは成り上がり者なので、自分だけで全ての政務をつかさどれるような能力は持ってない、そうすると秀吉に耳打ちをしたりとか、いわば側近になる人間が実際には動かすことが多くなる。この構造も、秀吉政権とトランプ政権が非常によく似通る可能性があるんじゃないかと。

新城 まあトランプ氏にはいわゆる専門のスタッフがいないだろうし、秀吉も何だかんだいって現場たたき上げですから。当初は家臣団もいなかった。当時の戦国武将っていうのは、「下克上」と言いつつ、「中克上」ぐらいなところなんですよ。本当に一番下から一番上まで行ったのって秀吉だけで、それこそ家康だって家臣団がちゃんと三河にいましたし、織田の一門だって何だかんだいって守護代のそのまた家臣ぐらいで、つまり子供のときから文字も書けりゃ、お茶も飲めりゃ、その彼のために死んでくれる部下が100人ぐらいはいたはずなんです。でも秀吉は本当にゼロから始めてトップまで駆け上がったし、いつごろ文字が書けるようになったかもよくわかんない。

木村 アメリカのそれで言うと、例えばビル・クリントン氏が当選したときは中克上みたいなところがあって。

新城 そうですね。アーカンソーから州知事時代のスタッフを持ってこられたんで。

木村 ええ。民主党内では、超エリートのゴア氏が非常に有力だったんだけれども、ゴア氏をちょっと温存してクリントン氏を立てた。それがすごく当たったわけですが、それでも別にクリントン氏がまったくのたたき上げかっていうと、秀吉みたいなたたき上げではなかった。

新城 一応ね、州知事やってたんで。大きな組織、行政組織をまわした経験っていうのはあるわけですからね。

木村 トランプ氏はまさにそれがまったくないところからやったっていうところが、非常に前例としてはよく似てるっていう。

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筆者

松本一弥

松本一弥(まつもと・かずや) 朝日新聞WEBRONZA編集長

1959年生まれ。早稲田大学法学部卒。朝日新聞入社後は東京社会部で事件や調査報道を担当した後、月刊「論座」副編集長、オピニオン編集グループ次長、月刊「Journalism」編集長などを経て現職。満州事変から敗戦を経て占領期までのメディアの戦争責任を、朝日新聞を中心に徹底検証した年間プロジェクト「新聞と戦争」では総括デスクを務めた。著書に『55人が語るイラク戦争ー9.11後の世界を生きる』(岩波書店)、共著に『新聞と戦争』(上・下、朝日文庫)。

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