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[21]行くべき場所に行っているか

金平茂紀

金正男氏の遺体が安置されているクアラルンプールの病院には21日、100人以上の報道陣が詰めかけた拡大金正男氏の遺体が安置されたクアラルンプールの病院に詰めかけた報道陣=2017年2月21日

2月14日(火) 局で定例の会議。なかなか前半ネタの選定が難しそうなのだった。「調査情報」「Journalism」などの原稿仕上げ。その他の原稿の校正。夕方になってどうやら、今週の『報道特集』の前半は、南スーダンでの自衛隊PKO活動の日報問題(情報隠し)と稲田朋美防衛相の資質問題をからめた特集をやる方向に傾いていった。

 夕方のニュース時間帯になってテレビをみていたら、東芝のトップの記者会見が同時進行している。決算発表を延期するとした上に、さらに巨額の損失が見込まれることへの対策として、ついには半導体部門の譲渡なども視野に入れている云々とのショッキングな内容。記者からも相当に厳しい追及の質問が続いていた。この時間帯でのイレギュラーな会見なので各局とも慌てているのが手に取るようにわかる。きちんと報じられていたところと報じられないところとの落差が激しいのだが、そういう点は一般の視聴者にはみえないだろう。

 夜遅くまで局で作業をしていたら、何と、北朝鮮のトップ金正恩の異母兄・金正男氏がマレーシアで殺害されたとの韓国・聯合の一報が入って来た。驚きである。担当のKから特集差し替えの連絡。東芝の件も含めて「聖バレンタインデーの虐殺」と保坂展人世田谷区長のつぶやき。東芝のケースは原発事業が真の原因である。

2月15日(水) 朝日の朝刊をみたら、ドミニカの新聞がトランプ大統領の写真を、米NBC「サタデーナイトライブ」のトランプそっくりさん役の俳優の写真と間違えて掲載していたとのウソみたいな本当の話が出ていた。わはは。いいぞ「サタデーナイトライブ」! 

 日下部正樹キャスターがマレーシアに台湾から転戦とのことで、金賢姫・元死刑囚のことがすぐに頭に浮かんで取材を試みようとしたが、さまざまな事情で難しいことが徐々にわかってきた。明日の午前には結論が出るが、周囲の状況から判断すると難しいか。結局、南スーダンの特集は今週放送することになって、夕方、自衛隊の日報問題で情報開示請求を行った当事者・布施祐仁さんにインタビュー。当事者の声はやはり説得力がある。

 その際に撮影にあたったMカメラマンと雑談していたら、息子さんのGくんは今年大学受験なのだという。センター試験も頑張っていくつかの大学をパスしたと。ワシントン時代のGくんはまだ幼い子供だった。19年蝉という蝉の大発生の年にGくんに出演してもらってミニ企画がつくられ放送された。次の19年蝉発生の年に是非その続編をつくりたいもんだね、などととりとめのない会話を交わした。

 19時30分から渋谷のアップリンクでカナダのテレビドキュメンタリー『すべての政府は嘘をつく』の上映とアフタートーク。観客席が満杯。I・F・ストーン、マイケル・ムーア、マット・タイビ、エイミー・グッドマンらアメリカのフリーランス・ジャーナリストたちの活動が紹介されていた。予想以上の内容ではなかった。と言うのも、マイケル・ムーアやエイミーの活動ぶりやノーム・チョムスキーらの論評は自分としては知り過ぎていて、むしろそれに共鳴して自分なりに動いてきた側面もあるので、目新しいことは正直あまりないのだった。アフタートークではアワープラネットTVの白石草さんと一緒だったが、トランプ登場後のメディア状況ではこの作品さえ「もう古い」と感じたこと、「メインストリームVSネット」のような図式の立て方がもはや不毛なのではないかという趣旨の話をしたつもりだったけれど、どこまでうまく伝わったか。

ヒョーロンカみたいに言ってみてもはじまらない

2月16日(木) 30分ほど泳ぐ。体力の落ち方を自覚するようになった以上に、泳いでいるときの「漂流感」が何となく心地よいのだ。杉野希妃監督・出演の『雪女』をみる。幻想的でかつ官能的な作品で、いまの日本映画界のなかでは孤高の場所に位置する。映画の世界というひそやかな楽しみが消去されつつある今、こういう作品をつくろうという意思をもつ人がいることだけで嬉しくなる。退勤時の満員列車のなかで、ボーっとした「読後感」のようなものに浸っていた。

2月17日(金) 南スーダンの日報関係で、今日インタビューすることになっていた河野太郎議員の事務所からけさになってドタキャンの連絡が入ったとのこと。 ・・・続きを読む
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筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて――モスクワ特派員滞在日誌 1991-1994』(筑摩書房)、『二十三時的――NEWS23 diary 2000-2002』(スイッチ・パブリッシング)など。共著に『テレビはなぜおかしくなったのか<原発・慰安婦・生活保護・尖閣問題〉報道をめぐって>』(高文研)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店)など多数。

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