メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

籠池発言が示した「安倍総理の寄付金」の本質

本人は「国家が支援してくれた学校」と認識していた?

小林正弥 千葉大学大学院人文社会科学研究科教授(政治学)

野党議員との面会を終え、自宅を出る籠池泰典理事長(中央)=16日午後4時33分、大阪府豊中市拡大野党議員との面会を終え、自宅を出る籠池泰典氏(中央)=2017年3月16日、大阪府豊中市

やはり「国家神道小学校」だった

 3月16日に、参院予算委員会の議員たちが「瑞穂の國記念小學院」(設置認可申請取り下げ)の建設用地の調査に訪れた際、森友学園の籠池泰典氏は「安倍総理の寄付金が入っていることを伝達します」と強い語調で断言した。その午後に野党の議員が籠池氏の自宅で聞き取りを行い、それを受けて国会で籠池氏の証人喚問をすることになった。

 関係者によると、2015年9月の講演会で昭恵夫人から「どうぞ、これをお使いください。安倍晋三からです」と言われ「領収書はどういたしましょうか」と確認したところ、「それは、もう結構でございますので」ということだったので100万円の寄付金を受け取ったと述べているという。

 安倍首相は寄付を否定し、夫人も記憶にないと述べている。他方で、この爆弾発言の前日に籠池氏と会ってこの発言を予告したライターの菅野完氏(ベストセラー『日本会議の研究』の著者)は、小学校建設の寄付のための「払込取扱票」受領証の写しを公開した。依頼人の欄に修正テープの上から「森友学園」と手書きされ、テープをすかすと「安倍晋三」と書かれており、テープには処理した郵便局の印鑑が押してある。これが間接的な物証になるかどうかが今後の議論になるだろう。

 籠池氏の発言や森友学園をめぐる様々な問題がいよいよ国会で公的に調査される。さらに、財務省や大阪府の担当者、責任者、昭恵夫人など関係者の参考人招致や証人喚問も必要ではないかという指摘もある。

 ロッキード事件にせよリクルート事件にせよ、内閣が崩壊するような大疑獄事件においては、国会における証人喚問が行われることが多い。たいてい疑惑を向けられた当事者は「知らぬ存ぜぬ」と否定したり「記憶にない」と述べたりする。今回の件では、はじめに稲田朋美防衛相が森友学園の訴訟に関わっていないと国会で述べ、出廷の証拠が報じられてすぐに答弁の撤回と謝罪に追い込まれた。安倍首相は寄付や官庁への働きかけを否定しており、夫人は「寄付した記憶は全くない」と述べたという。今後の展開によっては、稲田大臣の辞任や内閣自体が動揺し、崩壊する可能性も浮上している。

 さて、籠池発言の寄付に関する真偽は別にして、この段階で明確になったことがある。筆者は「自称『神道小学校』瑞穂の國記念小學院の謎を解く――『日本初』国家神道モデルの教育施設がもたらす衝撃波」(WEBRONZA)で、この小学校が国家神道をモデルにしているという見方(テーゼ)を提起したが、本人の発言からすると、彼はこの小学校を「国家神道小学校」だと認識していると考えたのは正しかった。

なぜ収賄ではなく寄付が問題なのか?

 多くの疑獄事件では、政治家が賄賂を受け取って口利きをしたかどうかが問題になる。3月2日に共産党の小池晃議員の国会質問を受けて記者会見をした鴻池祥肇元防災担当相は、籠池氏から封筒のようなものを差し出されたが、受け取りを断ったという。それでも鴻池氏の事務所が国との交渉を仲介したのではないかと報道された。これは贈収賄の構図だ。鴻池氏の説明通りなら、贈賄をしようとした籠池氏は、それだけでも罪に問われうるが、鴻池議員の側に問題はない。

 これに対して籠池氏は、安倍首相から100万円の寄付を受けたと述べたが、これはもちろん贈収賄事件ではない。菅野完氏が述べたように、お金の方向が逆だからだ。問題の中心は、国有地売却や小学校の認可に政治的な力が働いたかどうかだ。籠池氏が安倍首相にお金を渡して、それに応えた首相が政治的圧力を加えたということではない。公職選挙法では政治家が選挙区以外で寄付をしたとしても問題はなく、今回の件は安倍首相の選挙区とは関係がないから法律違反ではない。

 ではなぜ問題になっているのだろうか? 寄付の有無は中心的な問題ではないという意見もあるが、そんなことはない。安倍首相が寄付をしたとすれば、 ・・・続きを読む
(残り:約2445文字/本文:約4061文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
デモクラシーやJournalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

小林正弥

小林正弥(こばやし・まさや) 千葉大学大学院人文社会科学研究科教授(政治学)

1963年生まれ。東京大学法学部卒業。2006年より千葉大学大学院人文社会科学研究科教授。千葉大学公共研究センター共同代表(公共哲学センター長、地球環境福祉研究センター長)。専門は、政治哲学、公共哲学、比較政治。マイケル・サンデル教授と交流が深く、「ハーバード白熱教室」では解説も務める。著書に『対話型講義 原発と正義』(光文社新書)、『日本版白熱教室 サンデルにならって正義を考えよう(文春新書)、『サンデル教授の対話術』(サンデル氏と共著、NHK出版)、『サンデルの政治哲学 〈正義〉とは何か』(平凡社新書)、『友愛革命は可能か――公共哲学から考える』(平凡社新書)、『人生も仕事も変える「対話力」――日本人に闘うディベートはいらない』(講談社+α新書)、『神社と政治』(角川新書)など多数。共訳書に『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業』(ハヤカワ文庫)など。

 

小林正弥の新着記事

もっと見る