首相候補のシュルツ旋風が社会民主党(SPD)を変え、上昇気流に
2017年04月07日
今年9月24日には、ドイツ連邦議会選挙が行われる。この選挙は、BREXIT(英国のEUからの離脱)や右派ポピュリスト勢力の伸長によって大きく動揺するEUの行方を占う上で、フランス大統領選挙とともに大きな意味を持っている。
去年の暮れまでは、アンゲラ・メルケル首相の4選が有力視されてきたが、今年に入って政局に大きな変化が生じた。1月にドイツの2大政党の一つである社会民主党(SPD)のジグマー・ガブリエルが党首の座を、欧州議会の議長だったマルティン・シュルツに明け渡すことを発表したからだ。これによって、SPD左派に属するシュルツが連邦議会選挙での首相候補として出馬することになった。
SPD内でのシュルツに対する人気は、高い。彼は3月19日の臨時党大会で、有効票を投じた代議員全員の票を獲得して、党首に選ばれた。党首が支持率100%で選ばれたのは、戦後SPDの歴史の中で初めてのことである。「連邦首相府を制覇する」と宣言したシュルツに、代議員たちは総立ちになって拍手を浴びせた。
「シュルツ効果」は、世論調査の数字にはっきり現れている。去年12月中旬には、SPDへの支持率は21%と低迷していた。だが公共放送局ARDが3月24日に行った世論調査によると、SPDに対する支持率は、3カ月間で11ポイントも増えて32%になった。
SPDへの支持率は、メルケル首相が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と並んだのだ。SPDと左翼政党リンケ、緑の党の支持率を足すと47%になり、過半数に近づく。SPD内部では、この3つの党で「赤・赤・緑連立政権」を作るという可能性すらささやかれている。
SPDの発表によると、シュルツが首相候補に選ばれて以来、同党の党員数は約1万人増えた。SPDは2005年の赤・緑左派連立政権の終焉(しゅうえん)以来、支持率の低迷に苦しんできたが、今12年ぶりに上昇気流に乗っているのだ。
SPDの人気の高まりの理由は、シュルツ個人に対する期待感である。「首相を直接選ぶとしたら、誰を選ぶか」という質問に対して「シュルツ」と答えた回答者は45%で、メルケル(36%)を9ポイント引き離した。
なぜSPDは、これほどシュルツに熱狂しているのか。
その理由は、SPDがシュルツを跳躍台に使って、前首相ゲアハルト・シュレーダー(SPD)による雇用市場・社会保障改革「アゲンダ2010」の呪縛から自らを解き放とうとしているからだ。
シュルツが突然政治の表舞台に登場した背景を理解するには、この国の社会民主勢力が90年代後半から歩んできた「茨(いばら)の道」について、知ることが不可欠だ。
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