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籠池泰典氏の言う「神風」はいつ、どう吹いたか?

安保法強行採決と同時期に起きた森友学園問題に見る「国家の私物化」

小林正弥 千葉大学大学院人文社会科学研究科教授(政治学)

籠池泰典氏が証人喚問で読み上げたファクスの文面=同氏提供拡大籠池泰典氏が証人喚問で読み上げたファクスの文面=同氏提供

ゼロ回答か、満額回答か?

 国会の証人喚問(3月23日)における籠池泰典発言は、彼の言う「神風」の正体を示唆するものだった。山本一太・参院予算委員会委員長からの政治的関与についての問いに対して「あったのだろうと認識しております」と答え、複数の議員の実名も挙げたのである。つまり「神風」とは政治の力によるものだったというのだ。

 安倍首相の寄付金100万円についての授受については、安倍昭恵夫人の否定に対し「私たちには大変名誉な話なので鮮明に記憶しており」と反論してその場面を詳しく証言し、疑いに対して「事実は小説よりも奇なり」と語った。前々稿(「籠池発言が示した「安倍総理の寄付金」の本質――本人は「国家が支援してくれた学校」と認識していた?」)で述べたように、100万円の振り込み用紙の写しが事前に公開されていたが、この真実性を疑わせる矛盾した証言はなかった。

 自民党の西村康稔総裁特別補佐は3月28日に、その振り込みは職員ではなく籠池夫人が行ったのではないかと疑って偽証を追求する姿勢を見せたものの、そうであっても100万円の寄付や振り込みという事実自体は存在することになってしまうだろう。

 さらに籠池氏が安倍昭恵夫人に国有地の借り受けについて「助けをいただこうと考え、2015年10月に夫人の携帯に電話をした」ところ、11月17日に首相官邸の総理大臣夫人付職員からファックスで「なかなか難しい」という国有財産審理室長からの回答が届いたと証言した。

 ファックスの1枚目では「現状では希望に沿うことができないようでございますが、引き続き、当方としても見守ってまいりたいと思います。……なお、本件は昭恵夫人にもすでに報告させていただいております」となっているので、政府側は、事務的な問い合わせに過ぎずゼロ回答であると説明している。

 しかし実はファックスには2枚目があり「平成28年度(16年度)での予算措置を行う方向で調整中」と書かれている。実際に2016年4月6日に学園側の費用立て替え分1億3000万円が支払われている。共産党は、夫人付職員への籠池氏の手紙(10月26日付)を入手し、その内容と照らし合わせた結果、「(1)定期借地を50年に延長した上で早期に買い取る、(2)土地の賃料を半額程度にする、(3)森友側が立て替えていた工事費用の支払い」というすべての点において2016年6月ごろまでに要請が実質的に実現したと国会で追及した(3月28日)。これが本当ならば「満額回答」となり、結果的には働きかけは全て奏功したことになる。

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筆者

小林正弥

小林正弥(こばやし・まさや) 千葉大学大学院人文社会科学研究科教授(政治学)

1963年生まれ。東京大学法学部卒業。2006年より千葉大学大学院人文社会科学研究科教授。千葉大学公共研究センター共同代表(公共哲学センター長、地球環境福祉研究センター長)。専門は、政治哲学、公共哲学、比較政治。マイケル・サンデル教授と交流が深く、「ハーバード白熱教室」では解説も務める。著書に『対話型講義 原発と正義』(光文社新書)、『日本版白熱教室 サンデルにならって正義を考えよう(文春新書)、『サンデル教授の対話術』(サンデル氏と共著、NHK出版)、『サンデルの政治哲学 〈正義〉とは何か』(平凡社新書)、『友愛革命は可能か――公共哲学から考える』(平凡社新書)、『人生も仕事も変える「対話力」――日本人に闘うディベートはいらない』(講談社+α新書)、『神社と政治』(角川新書)など多数。共訳書に『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業』(ハヤカワ文庫)など。

 

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