メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

[2]左派の潮流――「日本のアメリカ化」批判

日本の政治的・社会的光景とトランプ

ケネス・ルオフ ポートランド州立大学教授

安保改訂阻止第一次実力行使(6・4統一行動)で、国鉄労組など交通部門で早朝スト。写真はアメリカ大使館(正面)前に押し寄せたデモ隊拡大「60年安保」で、アメリカ大使館(正面)前に押し寄せたデモ隊=1960年6月4日

 ここで話題を転じて、トランプ当選を歓迎した日本の一部の層に焦点をあててみよう。

 少なくとも、この層はトランプを毛嫌いするのではなく、興味をもってみていた。日本人の男女にとって、トランプ当選に期待するかどうかは、日米関係の現状にどの程度満足するか不満をもつかによって決まるとみてよいだろう。そこでは、日本の当局が、日本の進路として米国をモデルにしがちな傾向をどう思うかという問題もからんでくる。

 日本の主要メディアのいくつかに目を通すと、日本人は米国のリベラル左派と同じように、一律にトランプ政権に辟易しているように思えてくる。だが、それはかならずしも真実ではない。

 日本人のなかには、トランプが日米関係を変えてくれるのではないかと期待する向きもあった。2月に安倍首相が米国を訪問したさい、トランプ、安倍の両首脳が出した声明は、日米関係に劇的な変化がおこるのではないかと期待した日本のさまざまな層の思いをくじくものになったと思われる。

 ここで、大統領の座を勝ちとるために、トランプが引きだし、あおったポピュリスト運動が、直近の大統領選挙に先行する系譜をもっていることを理解することは重要だが、それと同じように認識しなければならないのは、日米関係をいまのままではよくないと考えたり、あるいは、日本にとってアメリカ化はもっぱら有害だと憤慨したりする、さまざまな断面が日本にあるということである。

左派が反発してきたこと

 日本には、日米関係とはまったく無関係、ないし、日米関係にほとんど関心のない多くの政治的・社会的運動があることも事実だが、ここでは、そうした運動にふれないことを、あらかじめおことわりしておく。日本で戦後の日米安保体制にもっとも強く反対する民族主義的潮流は、左派に由来するもので、彼らは日米関係の基本的骨格をつくってきた戦後の合意、すなわち日米安保条約に何よりも強く反対してきた。

 そこで、私はまず左派から論じることにする。もちろん、よく探せば、日本の政治集団で右派のなかでも、戦後を通じて米国からの完全独立を目標として掲げてきた小さな団体が見当たらないわけではない。しかし、左派の場合とは様相がことなっていた。

 昔も今も運動にはさまざまな側面があるので、ここではそれを簡略化するが、広いレベルにわたる日米安保条約への根強い反対は、支配的な保守派、すなわち戦後のほとんどの時期、政権を担ってきた自民党への反発と関連している。左派が批判したのは保守派による戦後、ならびに1952年の独立以来の進路、すなわち米国との提携にたいする評価についてである。

 そして、とりわけ最近、左派は日本をいわゆる「普通の国」へ徐々に変えていこうとする動きに反対している。「普通の国」という言い方は、日本をほかの自由民主主義国と変わらぬ国にするということだが、それは強い軍事力をもつ重要性を認め、それを行使しうるようにするということにほかならない。

 こうした左翼主義に、ある傾向を ・・・続きを読む
(残り:約5252文字/本文:約6520文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

ケネス・ルオフ

ケネス・ルオフ ポートランド州立大学教授

1966年、米国ニューヨーク州生まれ。ハーバード大学を卒業、コロンビア大学で博士号を取得。専門は日本近現代史。1994~96年、北海道大学法学部の助手・講師をつとめる。2004年、大佛次郎論壇賞受賞。現在、オレゴン州のポートランド州立大学教授兼日本研究センター所長。 訳書に『紀元二千六百年――消費と観光のナショナリズム 』(朝日選書、訳・木村剛久)、『国民の天皇――戦後日本の民主主義と天皇制』(岩波現代文庫、監修・高橋紘、訳・木村剛久、福島睦男)。