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自衛隊は3Dプリンタを使わなくていいのか?

台湾も潜水艦やミサイルの修理部品を3Dプリンタで作る時代に

部谷直亮 一般社団法人ガバナンスアーキテクト機構研究員

潜水艦の自主建造を正式表明する蔡英文総統(右端)=21日、台湾・高雄の海軍左営基地、20170321拡大潜水艦の自主建造を正式表明する台湾の蔡英文総統(右端)。新艦建造でも3Dプリンタを大いに活用するのだろうか=2017年3月21日、台湾・高雄の海軍左営基地

 3Dプリンタ(3Dデータで、チタンを含む金属・樹脂・ガラス等の材料で立体物を印刷できるマシン)の軍事転用はとどまることを知らない。

 今回は台湾軍やミャンマーの農業における新たな取り組みを紹介し、自衛隊が技術活用の面で遅れをとっていることを論じる。

台湾が潜水艦修復用金属3Dプリンタを開発

 3Dプリンタ分野では、アジアの中で台湾は中国やシンガポールと競い合う存在とされている。実際、わが国の特許庁がまとめた報告書では、3Dプリンタに関して、アジアの研究論文における筆頭著者の国籍(資料ママ)をみると、米国が502件、中国が384件、韓国が173件、日本が115件、台湾が100件、シンガポールが103件で、台湾がかなり多い。しかも、これはフランスやイタリアのそれよりも多い。

 2015年10月、台湾で最も重要な国防科学研究・開発の拠点とされる「国家中山科学研究院(CSIST)」は、台湾が初めて現地開発した、軍需用部品の製造が可能な金属製3Dプリントシステムを公開した。台湾は、航空宇宙及び防衛産業の改善を長期目標としているが、この3Dプリンタは、より直接的には旧式化した軍用ミサイルや潜水艦の修復に活用していくという。

 この3Dプリンタは、第二次大戦中のドイツの主力戦車ティーガー2の装甲に匹敵する高硬度(30HRC)を持つ材料を生産することが出来るという。そして、それは航空宇宙材料規格(AMS-6514)を満たし、米連邦航空局の承認を受けた場合、航空機に使用することが出来るという。

防衛装備品を襲う部品切れ問題

 台湾の兵器システムは――幸いにもであるが――20年以上も未使用のままである。他方で、これはすでに製造ラインが閉鎖された兵器ばかりだということを意味している。

 もとより、軍需部品は「多種多様な少量の部品」を必要とする業界であり、これが軍事組織と産業界双方の負担となってきた。なぜならば、企業側はいつなんどき生産するかわからない少数の部品のために製造ラインを維持し、その固定資産税を負担し、人員を維持し、次世代人材を教育しなければならないからである。そのため、防衛装備品の維持費は本体価格より非常にかかる。そのため場合によっては不採算部門として製造ラインが閉鎖される。

 これが軍事組織を圧迫する。防衛装備品の購入後にかかる莫大な資金は国防予算を圧迫するし、基本的に旧式兵器であればあるほど部品価格は高騰し、ラインが極小か存在しなくなっているので部品入手までの時間も非常にかかることになる。

 特にこれはわが国のように貧弱な防衛産業基盤と非効率な調達システムを持つ国では、よりいっそう悲惨なことになる。予算的になかなか要求できず、出来たとしてもいつまでも手に入らない交換部品を待ち続けることになる。これでは有事の際、特に航空機関係はとてももたないだろう。

 そして、こうした状況の行き着く先は、DMSMS(Diminishing manufacturing sources and material shortages 製造原材料の減少、材料不足)問題である。これは装備品の製造能力の喪失と部品の枯渇により、兵器システム全体を放棄しなければならなくなる状況を意味している。

 この問題に対して、日本を除く韓国、ポーランド、中国、米国、オランダ、ロシアなどの各国政府が導き出した答えが3Dプリンタの軍事転用である。米中韓ポーランドはすでに金属製航空部品の製造に3Dプリンタを活用し、ロシアがT-14戦車の部品試作に使用している所以である。そして、台湾も同様の結論を得たということなのだ。

3Dプリンタで旧式兵器の維持・性能向上が可能に!

 実際、ミサイル・ロケットシステム研究部副所長の任國光氏は取材に対して、「海豹級潜水艦、海獅級潜水艦、海龍級潜水艦はいまやDMSMS問題に直面しているが、元の部品とその材料を分析することで、同じ材料で出来た精密なレプリカ部品を作ることが可能になった。また、わがCSISTが開発したGlory型ミサイル、天剣型中距離対空ミサイル、天弓型長距離地対空ミサイルは、より軽量かつ小型の部品に換装できるので、より多くの弾薬と射程を得ることが出来る」としており、報道の限りでは、確かにロケットエンジン部品も作れている。

 そして、彼らは今後もこうした研究を推進していくという――。

台湾軍に学ぶべきこと

 以上が各種報道を基にした台湾軍の取り組みについての内容だが、これらは何を意味しているのだろうか。 ・・・続きを読む
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筆者

部谷直亮

部谷直亮(ひだに・なおあき) 一般社団法人ガバナンスアーキテクト機構研究員

1984年生まれ。成蹊大学法学部政治学科卒業、拓殖大学大学院安全保障専攻修士課程(卒業)、拓殖大学大学院安全保障専攻博士課程(単位取得退学)。財団法人世界政経調査会 国際情勢研究所研究員等を経て現職、他にPR会社研究員、JBpressコラムニスト。専門は米国政軍関係、同国防政策、日米関係、安全保障全般。著書に共著『「新しい戦争」とは何か――方法と戦略』(ミネルヴァ書房、2016年)。

 

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