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国連PKOは日本にとって重要な国際貢献の一形態

「日本は孤立しかねない」との危機意識を持ち、何らかの形で関与し続けることが必要だ

篠田英朗 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授

自衛隊の南スーダン撤収の余波

南スーダンの首都ジュバで施設建設を支援する陸上自衛隊のPKO派遣部隊=2016年11月拡大陸上自衛隊岩手山演習場で2016年10月、安全保障関連法に基づく「駆けつけ警護」の訓練をする陸上自衛隊員たち。南スーダンPKO第11次派遣部隊となる陸自第9師団第5普通科連隊が公開した=岩手県滝沢市

 自衛隊施設部隊の南スーダン撤収が、国民の大多数の賛同を得て、実施される。撤収決定前は、いわゆる駆けつけ警護から日報隠ぺい疑惑まで、南スーダンに派遣された自衛隊が、論争の渦中に置かれていた。治安情勢が小康を保っている時期を見計らって、厄介なPKO(国連平和維持活動業務)から引き揚げるのが賢明だ、というのが、政府関係者のみならず、国民一般の考え方なのだろう。

 しかし、国連PKOミッション(UNMISS)それ自体が縮小するどころか、増派の必要性が議論されているところで、日本だけが撤収していくことの意味は、過小評価できない。国内世論の面では良いとして、日本の外からは「なぜ今撤収するのか」という印象を与える行動に見えるだろう。

 現代国連PKOで、「南スーダンよりももっと楽に参加できる場所」、のようなものはない。政局や憲法論に終始して空回りした結果、もたらされるのは国連PKOへの参加の停滞だけであるような気がしてならない。南スーダンからの自衛隊の撤収の余波は、長く続いていくかもしれない。

 PKO法が導入されたのは25年前である。1991年湾岸戦争で「金は出しても人は出さない国」と揶揄(やゆ)された経験を反省し、「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたい」という決意を、実行に移すためであった。しかし、現時点で、われわれはまだ、どのように憲法が求める国際協調主義を推進していくのか、判然とした見込みを立てられていない。

日本にとって国連PKOが持つ意味

陸上自衛隊岩手山演習場で2016年10月、安全保障関連法に基づく「駆けつけ警護」の訓練をする陸上自衛隊員たち。南スーダンPKO第11次派遣部隊となる陸自第9師団第5普通科連隊が公開した=岩手県滝沢市 拡大陸上自衛隊岩手山演習場で2016年10月、安全保障関連法に基づく「駆けつけ警護」の訓練をする陸上自衛隊員たち。南スーダンPKO第11次派遣部隊となる陸自第9師団第5普通科連隊が公開した=岩手県滝沢市

 日本は地域機構に属さない現代世界では稀有(けう)な国の一つだ。そのため日米同盟に過剰な重要性が置かれている。同時に、国連の重要性も、非常に大きい。

 現代世界のほとんどの国々が、実質的な活動を行う地域機構に属している。数々の地域機構が活発に動いているのは、ヨーロッパだけではない。アフリカ、中東、南アジア、オセアニア、中南米、いずれの場合でも、地域機構・準地域機構が重なり合って、域内で、あるいは域外でも、様々な活動を行っている。東アジアでも東南アジア諸国連合(ASEAN)や上海協力機構(SCO)がある。

 地域機構・準地域機構は、ヨーロッパ連合(EU)やアフリカ連合(AU)を筆頭に、様々な形態で、国際的な平和活動を行っている。世界のほとんどの諸国は、国連PKOに参加しながら、さらに地域機構を通じても、国際平和活動を行っている。国連と地域機構、地域機構同士の間の平和活動を通じた連携も、ますます密接なものになっている。

 日本、韓国、北朝鮮のように地域機構に属さない極東の国々は、現代世界では、例外的な存在である。日本が国際平和活動に貢献したいと思った場合、国連を通じた貢献は、地域機構を通じた活動の欠落を補うという、大きな重要性を持つはずなのだ。

控えめな日本と積極的な中国

 それにもかかわらず、国連の中核的な活動であるPKOに対する日本の貢献は、非常に控えめなものにとどまっている。日本の国連PKOへの派遣要員の数は、193加盟国中54位にとどまる。南スーダンからの部隊撤収後は、最下位近くまで落ち込んでいくことになる。財政貢献は米国、中国に次いで3位だが、かつて全体予算の2割を日本が拠出していたことを考えると、現在の1割未満のシェアは、大幅な貢献度の低下である。

 これに対して中国は、日本を上回る財政貢献をしつつ、全体12位の約2,500人のPKO要員の提供を行っている。巨額の二国間援助を世界各地で流し込み続けていることもよく知られている。

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筆者

篠田英朗

篠田英朗(しのだ・ひであき) 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授

 学生時代より難民救援活動に従事し、クルド難民(イラン)、ソマリア難民(ジブチ)への緊急援助のための短期ボランティアとして派遣された経験などを持つ。国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)では、日本政府から派遣されて、投票所責任者として勤務した。ロンドン大学(LSE)で国際関係学Ph.D.を取得して、ロンドン大学およびキール大学で非常勤講師を務めた後、1999年より広島大学平和科学研究センター助手、2005年より助教授(07年に准教授の改称)及び同大学国際協力研究科を兼務。2013年4月より東京外国語大学総合国際学研究院教授。紛争後地域における平和構築活動について研究を進めている。ケンブリッジ大学ローターパクト国際法研究センターおよびコロンビア大学人権研究センターの客員研究員を歴任。  著書は、『集団的自衛権の思想史―憲法九条と日米安保』(風行社、2016年)、『国際紛争を読み解く五つの視座:現代世界の「戦争の構造」』(講談社、2015年)、『平和構築入門:その思想と方法を問う』(ちくま新書、2013年)、『「国家主権」という思想:国際立憲主義への軌跡』(勁草書房、2012年)(サントリー学芸賞)、『国際社会の秩序』(東京大学出版会、2007年)、『平和構築と法の支配:国際平和活動の理論的・機能的分析』(創文社、2003年)(大佛次郎論壇賞)(韓国語訳版2008年)、『Re-examining Sovereignty: From Classical Theory to the Global Age』(Macmillan, 2000[中国語訳版{商務印書館、2004年}])、『日の丸とボランティア:24歳のカンボジアPKO要員』(文芸春秋、1994年)。その他、『紛争と人間の安全保障:新しい平和構築のアプローチを求めて』(国際書院、2005年)(上杉勇司と共編)など、共著・論文多数。http://home.hiroshima-u.ac.jp/hshinoda/ 日本平和学会理事、特定非営利活動法人ピースビルダーズ理事、一般社団法人広島平和構築人材育成センター(HPC)代表理事。2007年より外務省委託「平和構築人材育成事業」を統括し、2015年からは「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」を実施者として指揮する。