メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

[3]一緒に関わる人を増やしていくことが大事だ

目の前の問題を誰かのせいにせず、踏み出せる人がいたら自分から行動を起こそう

松本一弥 朝日新聞WEBRONZA編集長

この連載は、2017年3月19日に東京・渋谷のLOFT9で行われた、最低賃金の引き上げなどを求めるグループ「エキタス」(AEQUITAS)が主催したトークイベント「最低賃金1500円とfight for 15」(バーニーサンダースの活躍やオキュパイ・ウォールストリートを支えた、雲と草の根の架け橋)の内容を、加筆修正の上、3回にまとめたものです。
イベントの様子拡大イベントの様子
エキタス(AEQUITAS)について
「エキタス」(AEQUITAS)はラテン語で公正や正義の意味。ポスト3・11の路上の政治と労働問題/労働運動をつなげるため、エキタスは2015年9月からソーシャルメディアを中心にキャンペーンを開始。10月からは「最低賃金1500円」を訴えの軸としたデモを定期的に開催している。
「最低賃金1500円」は労働力のダンピングを食い止め、格差と貧困の広がりに抗する声であり、全世代的な生活の苦しさを告発する叫びだとエキタスはとらえている。エキタスはまた、不公正な立場に置かれている中小企業への政策的な支援もセットで訴えているほか、貧困たたきや月100時間残業法などの問題に対しても緊急に路上の抗議を組織し、人びとの怒りを世間に伝えている。30~40人ほどのネットワークがあり、エキタス京都、エキタス東海、様々な労働組合とも連絡を取りながら連携の方法を模索している。
登壇者と略歴
小林俊一郎(こばやし・しゅんいちろう) 司会を担当。大学3年生。1996年生まれ。大学入学当初より市民運動に携わる傍ら、地域の労働組合に加盟するなどして労働運動にも関わり始める。エキタスのメンバー。
山崎憲(やまざき・けん) 独立行政法人労働政策研究・研修機構主任調査員。中央大学法学部兼任講師。1967年生まれ。在職中に明治大学大学院経営学研究科経営学専攻博士課程修了。博士(経営学)。2003年から2006年に外務省専門調査員として在デトロイト日本国総領事館に赴任。
著書に『働くことを問い直す』(岩波書店、2014年)、『デトロイトウェイの破綻―日米自動車産業の明暗』(旬報社、2010年)、『フレキシブル人事の失敗―日本とアメリカの経験』(黒田兼一との共著、旬報社、2012年)、『仕事と暮らしを取りもどす―社会正義のアメリカ』(遠藤公嗣、筒井美紀との共著、岩波書店、2012年)ほか。
大西連(おおにし・れん) 認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長。1987年、東京生まれ。2010年ごろからホームレス支援、生活困窮者支援に携わり、2014年より現職。著書に『すぐそばにある「貧困」』(2015年ポプラ社)。
清水直子(しみず・なおこ) プレカリアートユニオン執行委員長 1973年生まれ。フリーライターを経て2012年4月、プレカリアートユニオンの設立に参加、書記長に。2015年9月より執行委員長。著書に『ブラック企業を許さない!』(かもがわ出版)、『知らないと損する パート&契約社員の労働法 Ver.3』
(東洋経済新報社)、『自分らしく働きたい』(大日本図書)、『おしえて ぼくらが持ってる働く権利』(合同出版)など。
栗原耕平(くりはら・こうへい) 1995年生まれ。都留文科大学4年 大学で労働問題を勉強しながら、エキタスで活動を続けている。
藤川里恵(ふじかわ・りえ) 1992年生まれ。高校生の時に貧困を経験、大学生の時のアルバイトがきっかけで労働問題に関心を持つ。現在はエキタスメンバーとして活動中。

いろんな人を巻き込む必要性

大西連さん拡大大西連さん

大西 みなさん、ついてきてますか?  大丈夫ですか? (会場笑)。 はい。今いろんな話が出て、取り組みもすごい地味ですけどいろいろ語られました。あと、エキタスもいろんな地方でどんどんやったらいいと思うんですけど。

 そもそも、何でコミュニティー・オーガナイジングっていうかというと、けっこう難しく感じちゃうかもしれないですけど、究極的には私たちだけで解決できないことがたしかにある、ということなんです、正直に言って。

 NPOの活動をやっていて特に思うんですね。例えばもやいっていう団体は東京に事務所があるんで、それこそ北海道の人とか、沖縄の人で困っている人がいた時に何かをするのか?っていうのがなかなか難しいと。そういうことがあります。

 それから一つの団体だけで何かをするってすごく大変なんですね。衣食住っていいますよね。着るものと食べるものと住む場所っていうんですけど、もうひとつ「イショクジュウ」があると思っているんですよ。

 それは、メディカルな病院とかの「医」と、仕事の「職」ですね、それから「充」って、要は精神的なもので、つながりとかそういったものだと思うんです。それぞれが段階を上がっていくごとに点から面になっていくっていうかね。例えば食料だったら、はじめが炊き出しとかなら、毎週やるとかならそんなにできなくはないわけですね。ボランティアレベルでできなくはない。洋服とかも、例えば古着とかでいいなら、カンパを集めれば、寒い時期とか毛布とかカンパを集めれば多くの人がもしかしたら支援してくれる。

 でも住まいになるとけっこうハードルが上がるわけです。初期費用が20万円ぐらいかかる。100人に初期費用を提供しようと思うと、20万円×100人=2000万円が必要になるんですね。それが食料だったら、米を送ってくれる農家さんを一個見つけたら、何百キロって送ってもらえば何百食分って用意できるんですけど、だんだんその生活に必要なフェーズが上がっていくと、それに対応して、やっぱり一つの団体とか、少ないリソースでそれをまかなうっていうのはやっぱり現実的じゃなくなってくるというのがあって、いろんな人を巻き込まないと支援とか活動自体ができないですね、現場での活動が。それこそ地方の人を巻き込まないと政策提言はできない。

かかわる人を増やすことで、初めていろいろなリソースが生まれる

大西 だって国に要望しますって言って、東京の新宿でこういう支援をやってます、じゃあそれを国に「こういうのつくってください」って言っても、「いやいや、新宿の事情が全国で同じなわけじゃないでしょ」と言われちゃうわけですね。それが例えば北海道でもこういう問題が起きてる、北陸でもこういう問題が起きてると。全国でこういう問題が起きていて、全国の人が声を上げているとなると、全国の人たちみんなで要望すれば、国も無視はできない。

 そういうふうに、一人とか一つの団体だと当然やれることの限界があるんですね。だってみんな忙しいし、さっきの質問の話じゃないですけど、なかなか仕事しながら活動できないと。でもそういう人が10人いたら、もしかしたら1人は2時間ぐらいコミットできるかもしれないですね。そういうふうに広げていくことによって、一緒にかかわっていくことを増やしていくことによって、初めていろんなリソースが生まれて、いろんなことができるっていうのがある。

企業や行政とは違う立ち位置を生かす

大西 我々が何をやってるかっていうと、単純に言うと三つあって、いわゆる当事者の支援ですね。それと可視化、発信っていうのと、制度化っていうのをやっているんです。それはどういうふうにやってるかっていうのをもうちょっとブレークダウンすると、要は企業とか行政とは違う立ち位置の良さっていうものを生かしてるわけですね。

 具体的に言うと、例えばいわゆるNPOって実は全国に5万個もあるんですよ。それはあんまり知られてないと思うんですが、多くはボランティアだったり、非常に地域のローカルな活動やってるところが圧倒的に多いんですね。

 よく言われるのは、アメリカやヨーロッパに比べて、日本は市民セクターが弱いというふうに言われます。ただ実際は町内会とか商店街とか、いわゆる市民セクター、市民活動と呼ばれるものは、実はとてもたくさんあって、それはいわゆる社会を変えるっていう動きにもしかしたらあんまり機能してないかもしれないですけど、実はリソースってたくさんあるんですね。

「NPOってよくわからん」という人はまだまだ多い

大西連さん(右端)拡大大西連さん(右端)

大西 ただ一方で、NPOのように最近生まれたものってまだまだ認知がされていないということもあります。例えばですが、これはさっき楽屋で話したんですけど、うちの祖母がですね、「連ちゃんはちゃんと勉強して就職するのかと思ったら、NPOというよくわからんところで働いて、何か壺を売ってるんじゃないか」と(会場・笑)。壺を売って、悪いことをしてお金稼いでるんじゃないかと思ってたんですね。ただまあこういった問題やってて、例えばビートたけしと一緒にテレビで話したりすると、急にばあちゃんは何か「連ちゃん偉くなったぞ」と。「日本社会を変えるために何かやってるぞ」と。蓮舫さんとツーショットって写真撮ったのを持ってったらですね、「あなた立派なやつじゃないの。いつ出馬するんだ?」みたいな。「実家帰っておいで」みたいな。

 そういうふうにまだ知られてないっていうことはめちゃくちゃ大きくて、労働組合も同じだと思うんですね。組織率めっちゃ下がってますけど。ちなみにこの中で労働組合に入ってる人どれぐらいいますか?  ああ、けっこうさすがエキタスのイベントですね。私、経営者なんで入れてないんですけど。でもそれも含めて、まわりにあまりそういう存在がいなかったりとか、知られていないって問題たくさんあって、そういうニーズってたぶんたくさんあるんですね。

NPOが行政の下請けとなっている現状

大西 一つの大きな問題は、さっき出ていたような資金調達とか、実際にこれは清水さんとこの団体とかが直面している問題だと思うんですけど、専従の人をどう確保するかとか、資金をどう確保するかっていうことで、今起きてる問題は、多くのNPOは残念ながらけっこう民間企業の支援スタッフだったり、国や自治体のいわゆる仕事を委託を受けるという形でやっているということがあるんです。

 結果的に委託っていっても、だいたい日本は単年契約っていうか、日本の公的機関っていうのは複数年契約があんまりできませんので、単年契約でワーキングプアで働くという感じです。週4日、専門職、例えば福祉系だと、福祉の専門職が週4日勤務。で、手取りの金額は18万とか。社会福祉士とかの資格を持っててですね、単年契約で働いて、福祉の仕事をすると。ただ要は行政の下請けになってるんですね。

 本来の意味では三すくみの関係にあって、それぞれがそれぞれのバランスをとりながら、公的セクター、企業、それから支援センターっていうのをバランスよく様々な形で協力させながら、たまに声をあげたり、闘ったりすることもありながらやっていくべきなんですけど、現状はそうなっていないっていうのがあります。

延々と流されてくる赤ん坊をどうするか?

大西 じゃあそれどう変えるかっていう話なんですけど、これは最後、私がみなさんをあおる話なんですけど。「旅人と赤ん坊のメタファー・寓話」。これはアメリカのNPOセクターとかで非常によく使われる寓話をちょっと私なりに解釈してるんで、私はちょっと作り話を入れてるんですけどね。

 どういう話かというとですね、ある旅人が歩いていて川にさしかかりました。川にさしかかって、ふと川を見ると赤ん坊が流されてると。「いやいや、これはいかん」と。旅人はどうするか。急いで助けますよね。まあ助けないやつもいるかもしれないですけど、助ける旅人は急いで川に飛び込んで赤ん坊を助けますと。で、赤ん坊を助けて、岸へ向かって一緒に泳いでですね、赤ん坊を岸までたどりついて、そっと下ろしたそのとき、「ああ、よかった。赤ん坊は助かった」と。ただふと川を見るとですね、もう一人流れてくると。「ああ、これはいかん。急いで助けなきゃ」。赤ん坊を川岸に置いて、その旅人はまた川に戻って赤ん坊を助けます。

 これがいわゆる、困っている人がいた時に何らかのアクションを起こして、実際に問題解決にコミットするというフェーズなんです。ただ、次の赤ん坊がいることに気づくんですね。2人目の赤ん坊を助けたら、今度は3人目の赤ん坊が流れてくると。あれれれ、これはいかんぞと。次から次へ助けていって、10人ぐらい助けたら旅人はもうへとへとです。もう服は濡れて重くなってくるし、寒いし、「旅がしたいのに何で赤ん坊助けてるんだろう」とか、「自分がこのまま放っておいても、だれも何か傷つかないんじゃないか」みたいな、そんなことを考えはじめるわけですね。

 場合によって、旅人にはここで選択肢が三つあります。助け続けるか、見なかったふりをするか。で、多くの人はここでストップするんですけど、実は三つ目があるんですね。三つ目は何かっていうと、赤ん坊が流されているっていうことを多くの人に伝える。

 昔だったら「助けてくれ」って声上げたんですけど、いまだったらツイッターでつぶやく、インスタグラムで撮るっていうことがもしかしたらあるかもしれないんですけど、「この川で赤ん坊が流されてるぞ」って、「だれか助けてくれ」って声をあげます。声を上げるっていうフェーズが生まれます。

 そうするとどうなるか。そのツイート見た人が、百人中百人が助けてくれるわけではありません。でも例えば3万リツイートとかされたらですね、そのなかの何人かはもしかしたら来てくれる。と、一緒に助けてくれます。一緒に助けると今度は赤ん坊を助け続けることができるようになるわけですね。

 順番に助ければ、ちょっと休憩ができるみたいな。ただそれでも限界がくるわけです。人数増やさなきゃいけない。つぶやきながら赤ん坊を助けると。ツイッターでまあ実況しながらですね、赤ん坊を助け続けて、「お金も欲しい」とか、「こういう物資が必要だ」、そうやって助けます。

「赤ん坊」が流されてくる理由を探り、解決する

大西 ただそれだけでも問題は解決しないわけですね。なぜかっていうと、人が増えると組織になるので、効率的な助け方を考えたり、堤防をつくろうとか、ロープを使おうとか、いろんなアイデアが生まれます。また実際にシェアされたり、リツイートされたり、広報部隊ができたりとかがあるんですけど、ただ赤ん坊が流されていることには変わりはないわけです。

 では、次の問題とは何か。それは、どうして赤ん坊が流されているのかをちゃんと調べて、つまり問題を突き止めてその問題を解決しなきゃいけないですね。そこで旅人の中」から例えば調査隊をつくります。調査隊は上流に向かいます。上流に行ったら今度は、どうやら悪い男が組織ぐるみで赤ん坊を近辺からさらってきて川に投げているらしいと突き止めました。次にどうするか。討伐隊をつくって、その男たちをやっつけると。

 これは社会問題の解決のフェーズっていうのを私がすごいアレンジしちゃって、つくり変えた話なんですけど、これがすごく重要なんですね。これって今日のテーマでもある、いわゆる草の根とクラウド、グラスルーツとクラウドっていうところの接着点としてもそうですし、それから皆さんにお伝えしたいのは、エキタスのみんなもそうなんですけど、自分が何をするかっていうこと。今日の山崎さんの話にもありましたけども、それは非常にリンクするんですけど、皆さんは赤ん坊が流されてることに気づいてるんですね。

 さっきアンケート用紙に書き込まれたのをみたら、「私、何したらいいですか?」っていうのがあったんです。いやいや、みなさんもう気づいているでしょうと。だって流されてるんですよ。ブラック企業もあるんですよと。貧困があるんですよと。格差あるんですよと。ホームレスの人がいるんですよって。

 で、流されてるのに気づいたら何するか。それは何とかしましょうよって。確かに忙しいですけど、えっ、リツイートぐらいできるでしょうって、それは。その問題に自分の人生の1日24時間のうちの10秒間を注ぎ込むことって、そんな難しいことですか? って言えると思うんですね。

 みなさんはもう問題を知ってるわけですよね。問題を知った皆さんがこのあと何をするか。ぜひ、この旅人として飛び込んでほしい。やれることは当然限られてますが、限られているなかでやれることを探してほしいですし、見つけてほしいなというふうにあおって、私はきょうは話そうと思ってました。

横のつながりを重視した労働組合のベンチャーを目指して

清水直子さん拡大清水直子さん

小林 ありがとうございました。次に、清水さんのところの具体的なお話をぜひお聞きしたいなという感じなんですけど、よろしいでしょうか。

清水 今、日本の労働組合は、いわゆる限界集落というような意味で、限界組合になっているところがあります。限界集落っていうのは高齢化率が高くなってるから、このままほっといたら消えてなくなりますねということですね。労働組合もそういう状態になっているところがあるようです。

 企業内組合として、会社とあまり対立しないで組織は維持していますよというところは、形はあるかもしれませんが、そうではなく、むしろ闘っているという自負を持っていて、だれでも一人でも入れる、特に今まで労働組合から縁遠かったようなパートやアルバイトや非正規の人が地域で入れるユニオン労働組合にその傾向があるようです。

 1980年代くらいに全国各地にいくつもできたと思うんです。それを最初につくった、いわゆる豪腕な人間的には魅力があり、能力も高く、体力もあるが、ボスのように、縦の人間関係のなかで労働組合を運営しがちな、でもその人の能力のおかげである程度の規模までは組合は維持されてきた組合の方が、該当する。設立当時30代、40代だったとすると、今はおじいさんになっていて、戦略的にそのあとの世代を育ててこなかったおかげで、執行部が高齢化していて、もう何年かしたらなくなりそうだというような状態の、特にユニオンと言われている組織、特に地方の組織はそうなっているように見えます。

 私が組合活動をはじめたのが2007、8年。闘っているユニオンの様子や、いろいろな労働組合の様子を見て、今までにない強さをもった組合をつくりたいと思って、いろいろな工夫をしながら取り入れられるものは取り入れながら、できるだけ縦でなく横の関係で、そのそれぞれの組合員のもっている力をできるだけ引き出して、その人が今度は担い手、さらに担い手を育てる人になるような工夫をしてきました。

 だからといって、どんどん分裂していくというわけでもなく、そうやることによって、すごい強い組合になったらいいなということを思い描きながら、活動をしてきています。まあうまくいってるところもあれば、まだまだ全然、言ってるだけだろうというところもあるんですけれども、労働組合のベンチャーのようなことを目指して既存の組合の近くに組合をつくっています。

踏み出せる人がいたら行動を起こしてほしい

清水 既存の組合の批判をしているばかりでは、「何にもやってくれないんだ」ということをお客さん的に言っているかぎり、自分たちが今生きて暮らして働いている、自分も含めたこの労働環境はどんどんどんどん経営者側に近い人たちのいいようにやられていってしまいます。

 困難なのは百も承知です。だからあんまりそういう突きつけるみたいなことは言うのは忍びないんですけど、でもだれかのせいにしていたら、自分たちがやっぱりつらくなっていくので、もし踏み出せる人がいたら、自分の職場でいい条件を勝ち取るために、行動をもしよかったら起こしてほしいなと思います。

 そのためのサポートとか、一緒に闘うっていうことは私たちの仕事なので、いくらでもやります。そういうことができるし、特に日本の労働組合法って労働者側に、今のところはとても有利につくられているので、一人でも組合に加入したら、もうその人のことで交渉を申し出たら会社は逃げられないっていうところまで法的な縛りがかかってるし、合法的にけんかができるんですよ。

職場の問題にかかわって行動することで、人生の主人公になれる

清水 だからスマホでロールプレイングゲームをするかのように、まさに自分の人生の主人公になって問題解決できるんですよ。自分の職場の問題に自分が関与して、いろんな作戦を立てながら行動することで、結果が本当に変わってくるし、お金も手に入ります。今よりはいい何かが手に入るんです。

 もちろんそれがすごく簡単なこととは限らないし、つらいこともあるけれども、自分が主人公になって取り組むことができれば、自分もやるんだっていう人が増えてくれると本当にうれしいし、どうやったらいいかは、いくらでも一緒に考えて、一緒に動くことはできます。そんな人がいたらあとで声をかけてください。

小林 はい。実際に活動をしていらっしゃる方々、活動していらっしゃる団体なので、何か困っているとか、何かやりたいっていう人は、ぜひまず声をかけてみてほしいし、何か自分でできることないかなって思う人がいたら、積極的に自分で何かアクションを起こしてほしいなっていうふうに思います。

考える時間まで奪われ、怒ることすらできない人たちへ

藤川里恵さん(左)と栗原耕平さん拡大藤川里恵さん(左)と栗原耕平さん

小林 で、ですね、僕たちは基本的に外に出て、路上に立って人を集めて、対外的にキャンペーンをやっていくっていう、そんなようなことをやってきました。エキタスはまあそれだけじゃないんですけど、こういう勉強会やったりとかしてるし、個人個人何かいろいろやってることはもちろんあるんですけど、思うところをエキタスのメンバーの2人にちょっと話しほしいんですけど。

藤川 さっき清水さんとか大西さんのお話にあったんですけど、何かやりたいなと思って、一歩踏み出すっていうことももちろん重要だし、そういう人たちがいないといけないっていうのは本当にその通りなんですけど、「ロールプレイングとかやっている時間があるんだったら自分のために」っておっしゃってたんですけど、私は逆だな……逆だなじゃないけど、と思う部分もあって。

 若い人たちっていうのは、考えられないこともある。それはばかにしてるんじゃなくて、考える時間さえ奪われてると私は思ってるんですね。だからゲームをしたり、何かアニメを見たり、何かそういう趣味みたいなものを持って、で、それを生きがいに、必死で「社畜」って笑いながら生きてるんだと思うんですよ。そういう人たち、なかなか声を上げられない人たち、怒れない人たち、そういう人たちがいるんですよね。

 そういう人たちにただ「頑張って一緒にやりましょう」って言っても、それはもちろん大事なんだし、清水さんたちは本当にていねいにやってるから、そういう人を育てられてると思うんですけど、エキタスがやっていきたいなと思っていることは、そういう政治的なものがちょっといやだと、嫌悪感感じるなとか、むしろ腹立たしいみたいな人たちを近くに寄せていきたいっていうか。そういう人たちに自分の問題なんだって思ってもらいたいんですよね。

一般の人も組合の人も互いを知り、変われる場にエキタスがなれれば

藤川 で、労働組合の人たちは何かだんだん保守的になってきてたりとか、いろいろ派閥があったりとか、いろいろ難しいんですけど、そういうのと関係なく、市民運動の場に来ている人たちがいて、そういう人たちは社会問題とか労働問題に興味があるわけですよ。

 だからその人たちを活動家としてこう引き抜いてくるっていうか、そこと労働組合を近づけていくっていうことができるわけだから、エキタスっていう場は何て言うんですかね、一般の人が組合とか貧困問題を知る場にもなるし、組合の人が一般の人の苦しさとか怒っていることを身近で感じて、刺激を受けて、自分たちも変わらなきゃってなる場になればなと思って活動してるんですよ。すみません。長くなったんですけど、こんな感じでエキタスってやってるんです(会場・拍手)。

デモの参加者や労働組合や団体のプラットフォームに

藤川里恵さん(左)と栗原耕平さん拡大藤川里恵さん(左)と栗原耕平さん

栗原 そうですね、僕も実は先にユニオン運動のほうに関わってて、ユニオンの運動をやってて。まあそれは何でかっていうと、やっぱり身の回りにすごい労働問題とブラックバイトの問題もあるし、貧困の問題もわりと身近にいろいろあったので、そういう問題をどうにかするためにユニオンっていうのになったんですけど。

 ユニオンの運動はリソース(資源)もまだ全然、清水さんの話にもありましたけど足りてないし、個別の問題をいくら解決していてもなかなか全体的な解決にならないっていうことで、エキタスみたいなことをはじめたんですよね。やっぱりデモみたいなものがかなり大きくなっているんですど、エキタスをやってみて気づいたのは、デモみたいなものに出てこれるような人たち、いわゆる社会問題とかっていうのも関心がある人たちも、実はいっぱい労働問題抱えてて、で、そのことをあんまりなかなか話せなかったみたいなところがあったんですよね。

 エキタスも最初、集まって飲み会して、「どんなところで働いてるんですか?」って聞いたら、何かずっと市民運動で一緒にやってきた人たちが、どこで働いてるか知ってなかったっていうような話になって。やっぱりデモみたいなものに出てこれるんだけど、やっぱり日常を変えるってものやっぱりものすごく大変なことで、デモに出てこれてる人でも、なかなか日常を変えるっていうのは難しいみたいな現実もあって。

 で、やっぱりそういうなかで、エキタスみたいなものがちゃんとこういう企画をやるとかして、労働組合とかあるいは貧困の支援の団体とかっていうののある意味プラットフォームみたいな形になることで、やっぱりそういう人たちと労働組合の接点をつくるっていうのはやっぱりしていかなくちゃいけないし、やっていきたいなっていうふうに思って、こういう企画もやってると。何かそういう草の根の運動と、やっぱりデモみたいな運動ですね。

 エキタスみたいに路上で声を上げるっていうのは、声上げると何かできる気になるんですよね。勇気もらえるし、力をもらえるんですよね。そういうなかで、やっぱりじゃあ日常も、自分の働き方も変えようと思って、組合入る人とか、実際いるんですよね。結構。そういう場にやっぱりエキタスがなりながら、デモと草の根の運動がうまく相互作用していけるといいなというのは強く思っているところです。

実は組合員はそれほど政治的ではない

イベント風景拡大イベント風景

小林 何かありますか?

清水 若干、見え方に誤解があるような気がするので、若干だけ補足します。労働組合の活動を政治的なものとして距離をとる人たちを、ということがありましたが、むしろ逆なんですね。

 例えば私たちの組合の組合機関紙に今日のイベントの案内を全員分入れたし、寄贈している先にももう何百と入れてるんですけど、きょうたぶん来てくれている人が今前にいる5、6人なんですよ。プレカリアートユニオンはあまり動員はやりようがないので、こういうイベントに来てくれますか? とか、エキタスがデモなりアクションやるよっていうのを呼びかけるしかないのですが、組合員がエキタスの掲げるテーマに関心を持っているわけではむしろない。

 だからむしろ政治的でもないんですよ。もっと何て言うか、もうちょっと本当にその人の足元の労働問題の解決に関心があって入ってきて、やっているのは日常的には労働問題、職場の課題の解決です。

 当然ですが、思想信条も一切問いません。そこをどうやってもっと目を外に向けた関心を持ってもらうかっていう意味で言うと、エキタスのデモやイベントにもっと来てもらって、刺激を受けてほしいっていうことで、むしろもっと政治的なセンスというか、目もつけてみてほしいなっていうぐらいの状態なんですね。だから労働組合を政治的なものとして距離をとる人たち、という表現というか見え方が、ちょっと逆という気はします。

自己肯定感を得られて、初めて政治にも関心が持てるように

栗原 僕、両面あるっていうか、何て言うんですかね、両方のベクトルがあるっていうか。特にデモ、エキタスから労働組合っていう流れだと、やっぱり労働組合みたいなものを経て、やっぱりある程度親密な関わりのなかで自己肯定感とかっていうのを得てこそ、デモみたいなもの、政治とかに関心を持てる人っていうのもやっぱりたくさんいると思ってて。

 何だろうな、自分の要は日常の中で、ものすごく力が奪われてる中で「政治を変えよう」って言われても、「いや、そんなの変わらないよ」って思っちゃう人ってやっぱりたくさんいると思うんですよね。でも、そういう何か労働組合みたいなものにつながって、そこでやっぱり相談して、「あなたは悪くないんだ」と。で、会社と闘ったりする中で、やっぱり政治とかにも関心持てるようになってくみたいな流れも一方であると思うんです。そこはこうたぶん二つの流れで相互作用でなっていくんだろうなっていうふうに思ったりします。

それぞれの運動は有機的につながりながら社会を変えていける

大西 そんなに対立するものじゃないっていうか。

栗原 対立するものじゃないですね。

大西 それはもちろん当然、活動とかには濃淡があるのはある種当たり前で。例えば、本当に極端な言い方をすると、何か、僕とか、例えばいわゆるネットで揶揄(やゆ)される「プロ市民」ですよね。いわゆるね(笑)。活動である種、生計を立てていたりとかね。で、国家が開いていれば国会議員といろいろやりとりすることもあれば、出馬趣意書の下書きを書くこともあれば、いろんなコミットメントの仕方があって当然なんですけど。

 確かに……あっ、僕も一応ぎりぎり20代なんですね。貫禄があるって言われるんですけど。それはもう20代の同級生の友人とかね、そういう人を見ると本当に、まあ生活がいっぱいいっぱいだったりする人も中にはいるから、そういう人がある種、声上げられないのもそれは当然だと思うし。でもだからこそ、僕らのようにこれに打ち込めるような役割の人も当然必要だし。でもデモだったりとか、ツイッターでつぶいやいたりとか、そういったことでやれることもたぶんあると思うんで。

 グループもそうだし、たぶん個人もそうだと思うんですよ。例えば「私は平日昼間あいてる」っていう人がいれば、平日の昼間にやれることをやってもらえばいいし、「いや、申し訳ないけど、すっげえ残業多くて、何もできない」って、それでもいいんだけど、心の中で応援してくれればいいわけです。

 何かそういう団体、グループもそうだけど、個々人のやれる範囲のやりたい、やれることでどう変えるか。それ、本当に山崎さんがね、最初に話してくれたことが大事だと思う。まず第一に考えることは、あなたは何がしたいのか。なぜそうしたいのか。どうやったらできるのか。じゃあやれる人を応援すればいいんです、っていうことをすごく意識できれば、そんなにドラスティックに、じゃああしたから社会はこう変わりますっていうのはないかもしれないですけど、ちょっとずつでも変わっていく種はまけるというふうに思って、僕はこういう活動やってますね。

社会を動かすことができるのは若者だ

山崎憲さん拡大山崎憲さん

山崎 労働関係とか社会保障を含めて、いろいろなところで話す機会がありますが、今日のイベントのように年齢が若い人が集まるところはほとんど経験がありません。だいたい、60代とか70代くらいの年配の人たちが大半を占めていることが多いのです。でも、社会を動かすことができるのは、年配の人ではなくて若者だということを僕は思っています。非常にみなさんに期待を持って、話をさせてもらっています。

・・・続きを読む
(残り:約7457文字/本文:約20501文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
デモクラシーやJournalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

松本一弥

松本一弥(まつもと・かずや) 朝日新聞WEBRONZA編集長

1959年生まれ。早稲田大学法学部卒。朝日新聞入社後は東京社会部で事件や調査報道を担当した後、月刊「論座」副編集長、オピニオン編集グループ次長、月刊「Journalism」編集長などを経て現職。満州事変から敗戦を経て占領期までのメディアの戦争責任を、朝日新聞を中心に徹底検証した年間プロジェクト「新聞と戦争」では総括デスクを務めた。著書に『55人が語るイラク戦争ー9.11後の世界を生きる』(岩波書店)、共著に『新聞と戦争』(上・下、朝日文庫)。

松本一弥の新着記事

もっと見る