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緊張する朝鮮半島情勢

韓国大統領選の行方が影響、中国が北朝鮮を制御できるかがカギ

児玉克哉 社会貢献推進国際機構理事長、インドSSI大学国際平和創造研究センター所長

 朝鮮半島の緊張が高まっている。トランプ大統領、金正恩最高指導者、習近平国家主席、プーチン大統領、安倍首相と世界的にみてもかなりのツワモノぞろいだ。これに韓国大統領選が絡んでくる。この特別な状況下では、ありえないと思えるシナリオも考えておかなければならない。

危険な役割を期待されている日本

拡大金正恩・朝鮮労働党委員長が指導した朝鮮人民軍の特殊作戦部隊降下および対象物攻撃訓練。日時は不明。朝鮮中央通信が報じた=朝鮮通信
 トランプ大統領は、中国に圧力をかけながら、中国ができないならアメリカが軍事力を使ってでも問題を解決すると公言している。4月13日のトランプ大統領のツイッターだ。「I have great confidence that China will properly deal with North Korea. If they are unable to do so, the U.S., with its allies, will! U.S.A.」(中国が北朝鮮を適切に管理できると信じている。しかしもし中国ができなければ、同盟国とともにアメリカがやる。)中国を持ち上げているようにみえるが、中国にチャンスを与え、できなければ堂々とアメリカが武力行使をするという脅しだ。アメリカが武力行使をしても中国は文句をいうな、という牽制といえる。ちなみに同盟国とともに、とあるが、これはまず第一に日本のことだろう。日本は大変に危険な役割を期待されているのだ。

 金正恩氏の北朝鮮も負けてはいない。武力行使には武力で、核攻撃には核攻撃で応じると強気の姿勢だ。北朝鮮にアメリカに対抗できる力があるわけではないが、ソウルを破壊することはできる。極めて危険なチキンゲームが行われている。ただこのチキンゲームは非対称のチキンゲームだ。アメリカはチキンゲームの主役の一国だが、ほとんどリスクはない。北朝鮮は主役でありリスクを負うが、アメリカは主役でリスクは負わず、韓国と日本がリスクを負うのだ。

 果たしてトランプ大統領は本気で武力行使を想定しているだろうか。

 トランプ大統領が北朝鮮に武力攻撃をするときに考慮すべき点は主に2つだ。まず第一に、中国がアメリカの武力行使に反発して、米中間の紛争に発展しないことだ。ロシアまで参戦すると想定できないくらいの大混乱に陥る。もう一つは、北朝鮮からの反撃を最小限に抑えることだ。首都ソウルは南北国境からわずか40キロである。核ミサイルでなく、通常のミサイル爆撃でも大都市ソウルは大きな被害を受ける。もちろんアメリカからすれば在韓、在日米軍基地の被害も最小限に抑えたい。

斬首作戦にはいくつかの懸念

 斬首作戦について語られることが多い。ともかく北朝鮮問題の中心は、金正恩氏という個人である。この国家リーダーの斬首によって新たな展開を模索するということだ。この作戦には幾つかの懸念がある。

 どれだけ確実に金正恩氏の殺害ができるか。殺害が失敗した時に報復攻撃があるのではないか。仮に殺害できたとしても、その前後に北朝鮮からのミサイルが発射されることがあるのか。殺害の後の北朝鮮の政権交代が混乱なくできるのかどうか。

 北朝鮮には隠された情報も多く、読みきることができないということが、不安を深める。

 おそらくアメリカ軍は、斬首作戦とともに、軍事基地総破壊戦略を展開すると考えられる。金正恩殺害計画がどのようになろうとも、ほとんどの軍事基地が破壊されるなら、報復の能力は限定的になる。限定的に1~2の基地攻撃は報復攻撃を招くが、総攻撃をするなら報復能力は低下する。

 米ソ冷戦時代には、アメリカはまずトータル・ニュークリア・ディストラクションを戦略に入れた。つまりソ連のすべての核ミサイルを先制攻撃によって破壊するという戦略だ。これが完全にできればアメリカの一人勝ちになる。しかしすぐに、ソ連もアメリカも移動式ミサイルやSLBMなどの開発によって、相互確証破壊(Mutual Assured Destruction, MAD)を確立した。つまり米ソのどちらか一方が、相手に対し核兵器を使用した場合、もう一方の国が先制核攻撃を受けても核戦力を残存させ核攻撃による報復を行うことができる状態だ。核戦争になったらどちらも滅亡する、ということが明確になれば、どちらも攻撃はしない、ということだ。恐怖の均衡による平和が可能だという理論になる。

 北朝鮮は軍事大国と比較すると、まだまだ技術の発展途上国だ。移動式ミサイルシステムもあるにせよ、 ・・・続きを読む
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筆者

児玉克哉

児玉克哉(こだま・かつや) 社会貢献推進国際機構理事長、インドSSI大学国際平和創造研究センター所長

三重大学副学長・人文学部教授などを歴任し現職。専門は国際平和論、市民社会論、NGO論など。国際平和研究学会の現事務局長でもあり、世界の平和研究の中核を担っている。グローバルな視点から社会科学の発展に寄与している。核兵器廃絶へ向けた「ヒロシマ・ナガサキプロセス」を提案し、世界的な運動を繰り広げている。2012年にインドの非暴力国際平和協会より非暴力国際平和賞を受賞。

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