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軍事ギーク(おたく)が見た北朝鮮兵器の実情

「張りぼて」疑惑の真相とそこから透ける北朝鮮の意図とは

小泉悠

平壌での金日成主席の誕生105周年慶祝軍事パレードに登場した弾道ミサイル「北極星」=朝鮮通信拡大平壌での金日成主席の誕生105周年慶祝軍事パレードに登場した弾道ミサイル「北極星」=朝鮮通信
 

 去る4月15日、北朝鮮の首都・平壌では、故・金日成の主席生誕105周年を祝う軍事パレードが大々的に行われた。

 北朝鮮に限ったことではないが、こうした晴れの場は新兵器を披露する機会として用いられる事が多い。2015年、モスクワで開催された対独戦勝70周年パレードにおいて、新型戦車をはじめとする次世代装甲車両が一挙に公開されたのはその一例である。

 今回の平壌におけるパレードでは、これまで知られていなかった各種の弾道ミサイル群が登場し、世界的な注目を集めた。北朝鮮の核・弾道ミサイル開発を問題視するトランプ政権が、軍事力行使も辞さずとの姿勢を取っている最中であったから、これ見よがしに登場してきた新型ミサイルに注目が集まるのは当然であったとも言えよう。 

「先の曲がったミサイル?」

  ただ、中には随分と粗雑な論評もあった。とりわけ目立ったのは、英国紙『SUN』。展示されたミサイル側面のブースター先端部が外側に向かって反っていることに着目し、張りぼてではないかと指摘した。日本でもいくつかのメディアがこれに追随し、「北朝鮮のミサイルは張りぼてだ」というキャンペーンを張ったようである。

 しかし、ちょっと調べてみさえすれば、これがソ連製のS-200という長距離防空システムであり、側面のブースター先端部は意図的にあのような形状に設計されていることがわかるだろう。そもそも対外的に軍事力を見せつけるべき軍事パレードに先の曲がったミサイルを登場させることは、普通ならば考えにくい。

 にもかかわらず、北朝鮮についてはこのような論説がまかり通ってしまうのは、一種の侮りというものであろう。

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筆者

小泉悠

小泉悠(こいずみ・ゆう) 未来工学研究所研究員

1982年千葉県生まれ。早稲田大学大学院卒業後、民間企業勤務を経て外務省国際情報統括官組織で専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所客員研究員などを歴任。ロシアの軍事・安全保障政策に詳しい。著書に『プーチンの国家戦略』(東京堂出版)、『軍事大国ロシア』(作品社)。