メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

安倍政権と民主党政権の意外な共通点

政策から見えてきた2009年政権交代の意義と民進党が目指すべき道

竹中治堅 政策研究大学院大学教授

安倍晋三・自民党総裁と蓮舫・民進党代表の党首討論拡大安倍晋三・自民党総裁と蓮舫・民進党代表の党首討論

 

民主党政権との比較で成果を誇示する安倍首相

 安倍晋三政権は自らの政権の成果を誇示するとき、民主党政権の時と比較することが多い。たとえば安倍首相は、政権発足5年目となる今年1月、衆議院本会議でこう発言している。

 「民進党(筆者注 民主党)政権の際の子ども手当のように財源がはっきりしないというような提案ではなく、しっかりした財源も含めた、実現可能で責任ある案を出していただきたいと思います」

 自民党もまた、2014年総選挙の公約で次のように謳っている。

 「2年前、日本経済は 危機に瀕していました。そして、政権交代。『強い経済を取り戻せ』。これこそが国民の皆さまの声と信じ、『三本の矢』の経済政策を、全力で、前へ、前へと進めてまいりました。岩盤規制にも果敢に挑戦してきました。アべノミクスの2年間で、雇用は100万人以上増え、この春は賃金も過去15年間で最高の伸び『経済の好循環』がしっかりと生まれ始めました」

民主党の政策はだめ? 自民党の政策は違う?

 2009年と12年、日本政治は二度、本格的な政権交代を経験した。当然ながら、前者の民主党政権と後者の自民党・公明党政権は比較される。

 今日、民主党政権は「失敗」であったというのが、一般的な見方であろう。実際、一部の研究者は「民主党政権がなんであったか、また何故に失敗したか」という問いに基づき、共同研究をおこなっている。

 民主党政権の政策の内容は全否定されるほどひどいものだったのであろうか。安倍政権になって、政策は大きく変わったのだろうか。

 筆者はこれまで数人の政治学者とともに、09年と12年の政権交代によって政策がどのような影響を受けたか、共同研究してきた。本稿では、共同研究から得られた知見を踏まえ、安倍政権と民主党政権の政策には、じつは似通ったものがかなりあることを論じたい。そのうえで、民主党政権はなぜ、「失敗」と評されることが多いのか、その理由を検証し、さらに現在の民進党が直面する問題を指摘してみたい。

コーポレート・ガバナンス改革を進めた民主党

 安倍政権と民主党政権の政策を比較すると、集団的自衛権の行使容認の憲法解釈変更や、安全保障関連法のように、大きく変更された事例はもちろんある。また、農業政策のように、政権交代のたびに内容が見直されたケースもある。

 ただ、その他の多くの国内経済・社会政策を精査すると、違う側面が見えてくる。すなわち、安倍政権がいま実施している政策には、民主党政権が始めた政策を継続したり、進化させたりしたものが多いのである。

 いくつか例をあげよう。

 安倍政権はコーポレート・ガバナンスを改革するため、14年に会社法を改正。スチュワードシップコードやコーポレート・ガバナンスコードも導入した。会社法改正で上場企業などに社外取締役の設置を促す規定が盛り込まれたほか、ガバナンス・コードでは上場会社が2人以上の独立社外取締役を導入することを強く求められることになった。

 じつは会社法改正への道を切り開いたのは民主党政権である。野党時代からガバナンスの強化を含む公開会社法構想という改革案をまとめていたのである。09年に鳩山由紀夫政権がスタートして間もなく、千葉景子法務大臣が法制審議会にガバナンスのあり方などの面から会社法制を見直すことを諮詢、会社法制部会で会社法改正の議論がはじまっている。12年9月には、社外取締役の導入を促す方向で会社法制を見直すことになった。

 ところが、折あしく政権末期の混乱のさなか。当時の野田佳彦内閣は会社法改正案を国会に提出することなく、退陣した。

・・・続きを読む
(残り:約3484文字/本文:約4992文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
デモクラシーやJournalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


関連記事

レコメンドシステムによる自動選択

筆者

竹中治堅

竹中治堅(たけなか・はるかた) 政策研究大学院大学教授

1971年生まれ。東京大学卒業後、大蔵省入省。スタンフォード大学政治学部博士課程修了。同大学客席研究員、政策研究大学院大学准教授などを経て2010年から現職。専門は日本政治論、比較政治学。署著に『参議院とは何か』(中央公論新社)、『首相支配-日本政治の変貌』(中公新書)、『二つの政権交代:政策は変わったのか』(編署、勁草書房)など。