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続・空爆後のシリアで目指すべき到達点はどこか?

原点は、シリア国民や難民たちの幸福を第一に考えること

金恵京

アレッポ東部のマサケン・ハナノ地区で食料の配給を受ける人々が長蛇の列を作る。多くの集合住宅は激しく破壊されているが、避難所から移動してきた避難民が生活を始めていた=9日午後、アレッポ20170110拡大シリア・アレッポ東部のマサケン・ハナノ地区で食料の配給を受ける人々=2017年1月9日

求められる現実的な判断

 前稿で述べたようにシリアにおける現状を概観すれば、国際社会が理想的かつ明確な方針を出せないことは明らかである。「イスラム国」はいうまでもなく、シリア国内のどの勢力も国際的な支援を受けるに足る条件を備えておらず、今後のシリアを全幅の信頼をもって任せられるだけの組織となり得ていない。

 一方で、ロシアが本腰を入れてシリアに軍事介入を行ったことで、アサド政権の軍事上の優位が確立し、反政府勢力、「イスラム国」共に力を落としている。そうなった以上、政情が安定するまでアサド政権はロシアとの連携を解くことはないであろうし、ロシアとしても新たに地中海における軍事上の拠点を得た以上、シリアから手を引くという選択肢はあり得ない。

 では、明確な方針がとり難い状況であるから、国際社会は事態を放置すれば良いのであろうか。私はそれは怠慢でしかないと考えている。

 国際社会はシリアの情勢が深刻化するまでに、幾つか介入できるポイントがあった。例えば、2011年の内戦初期段階、2013年の最初のサリンが撒かれた段階、難民が大量発生した2015年夏などである。それらを看過し、大量の難民や一般市民の犠牲者を出すに至って、シリアの将来を問題の多いアサド政権とロシアの方針のみに任せて静観するというのは、国際社会として責任を放棄していることと同義である。

 では、どうすれば良いのかと考えれば、やはり王道ともいえる国連による積極的な介入以外にない。ロシアの介入に対抗するために、トランプ政権のように大国が軍事力で介入すれば、シリアという国が本来持つ内戦の規模を大きく超えた状況が生まれてしまい、冷戦期と同様に代理戦争の様相を呈し、事態は再び先が見えなくなる。

 また、欧米諸国がアサド政権やロシアの方針に反対したとしても、かつて国連総会決議すら振り切ってクリミア併合を強行した際のロシアの反応を考えれば、国際的な非難は無視されて終わってしまうであろう。

必要な国際社会の関与と監視

 そこで、想定しなければならないのは、「現実的な妥協」と「あるべき民主的な世界像」との両立である。 ・・・続きを読む
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筆者

金恵京

金恵京(きむ・へぎょん) 日本大学危機管理学部准教授(国際法)

国際法学者。日本大学危機管理学部准教授、早稲田大学博士(国際関係学専攻)。1975年ソウル生まれ。幼い頃より日本への関心が強く、1996年に明治大学法学部入学。2000年に卒業後、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修士課程に入学、博士後期課程で国際法によるテロリズム規制を研究。2005年、アメリカに渡り、ローファームMorrison & Foester勤務を経て、ジョージ・ワシントン大学総合科学部専任講師、ハワイ大学東アジア学部客員教授を歴任。2012年より日本に戻り、明治大学法学部助教、日本大学総合科学研究所准教授を経て現在に至る。著書に、『テロ防止策の研究――国際法の現状及び将来への提言』(早稲田大学出版部、2011)、『涙と花札――韓流と日流のあいだで』(新潮社、2012)、『風に舞う一葉――身近な日韓友好のすすめ』(第三文明社、2015)、『柔らかな海峡――日本・韓国 和解への道』(集英社インターナショナル、2015)、最新刊に『無差別テロ――国際社会はどう対処すればよいか』(岩波書店、2016)。

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