掘り崩される自由と民主主義
2017年06月16日
加計学園問題における前川喜平前次官の倫理的抵抗――公僕の志は、官僚制の歴史的退行を食い止められるか(WEBRONZA)
拙稿「加計学園問題における前川喜平前次官の倫理的抵抗――公僕の志は、官僚制の歴史的退行を食い止められるか」で述べたように、加計学園問題における前川喜平前次官などの倫理的告発は、官僚制度の変質に対する行政内部からの抵抗である。この官僚制の変化は、2015年の安保法「成立」に始まる政治的体制変化の一環だ。
このような変質は、行政機関以上に明確に国会に現れている。昨日朝(6月15日)「成立」した「共謀罪」法の審議やその採決を見れば、これは誰の目にも明らかだ。
そもそも政府は、約30時間半の審議で衆議院法務委員会において強行採決を行い、参議院ではわずか17時間50分しか審議しなかった。党首討論すらしなかった。このように急いだのは、加計学園問題での追及を回避したり都議選への影響を減らしたりするためだと観測されている。
しかも参議院では委員会採決すら省略した。6月13日に野党が法務大臣の問責決議案と議員運営委員長の解任決議案を出したのに対して、与党は14日に参院法務委員会の審議を打ち切り、参院本会議を開いて「中間報告」を行い、そのまま一気に強行採決を行った。野党4党は猛反発して内閣不信任案を提出し、夜を徹して抵抗したが、ついに15日午前7時10分過ぎから採決された。
「中間報告」後の採決という手法は異例で、国会法では、委員会の審査中の案件については「特に必要があるとき」のみに許されるが、その説明は国会で与党から何もなかった。与党が委員長を務めているのに行ったのは初めてだ。委員会を重視する国会の原則と慣例が打ち壊された。
自由党と社民党などの7議員は「牛歩」を行い、3議員は投票の制限時間を超えたとされて「投票せず」の扱いとなった。憲政の尊厳が侵されているのだから、このくらいの抵抗が今の議会人になければ、戦前に専制政府と戦って議会政治の礎を築いた先人たちに申し訳が立たないだろう。
民進党はじめ野党が「参院の自殺行為」「究極の強行採決」(楱葉賀津也氏)、「とんでもない暴挙」(野田佳彦氏)、「議会制民主主義の否定で、与党の究極の審議拒否」(山井和則民進党国対委員長)、「民主主義に牙をむいたかのような狂暴な国会運営」(蓮舫民進党代表)などと一様に非難したのは、当たり前である。憲政の伝統が再び蹂躙されたのだから。
もはや「強行採決」という表現すら弱すぎるかもしれない。
「強行採決」は、与野党の合意なしに採決を強行することだ。良し悪しは別にして、今までの国会でも先例がある。少数派の意見の軽視や熟議の欠如という点で議会主義の理想からは批判されるが、それだけでは議会制民主主義の破壊とまでは言えない。
しかし委員会採決の省略となると、
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