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核抑止に替わる、平和維持のメカニズム構築を

「核兵器禁止条約」採択、これからが日本の出番だ

児玉克哉 社会貢献推進国際機構理事長、インドSSI大学国際平和創造研究センター所長

拡大核兵器禁止条約の採択後、わき上がる議場。スマートフォンで採択を報告する外交官も相次いだ=7月7日、ニューヨークの国連本部

 広島・長崎への原爆投下から72年の年月が経とうとしている。あれだけ非人道的な兵器でありながら、核兵器はこれまで、国際条約で禁止されてこなかった。ちなみに化学兵器は化学兵器禁止条約によって、生物兵器は生物兵器禁止条約によって開発、生産、貯蔵等が禁止されている。核兵器は破壊力、影響力ともに巨大でありながら、開発、生産、貯蔵、使用についての禁止は、核拡散防止条約や部分的核実験禁止条約・包括的核実験禁止条約などによって、限定的に行われきただけだ。核兵器を最初に製造・保有した5つの核兵器大国は、そのまま国連安保理の常任理事国であり、彼らが核兵器を開発、生産、貯蔵することは、「常態化」されてきたのである。

122カ国・地域の賛成で核兵器禁止条約を採択

 2017年7月7日に、核兵器の生産や保有、使用などを広範に禁じる「核兵器禁止条約」が、122カ国・地域の賛成多数により採択された。歴史的とも言える瞬間だ。

 この「核兵器禁止条約」は9月から署名を受け付け、50カ国が批准した後に発効する。122カ国・地域にとってこの条約の批准に高いハードルはない。すでに100カ国を超える参加が予想されており、発効は時間の問題だ。

 この国際条約制定のプロセスは、対人地雷禁止条約のオタワプロセスやクラスター爆弾禁止条約のオスロプロセスとよく似ている。つまり非人道的兵器の禁止条約を、軍事大国が入らなくても、中堅諸国(ミドルパワー)や国際NGO主導で成立させるということだ。軍事大国が入ると、軍事兵器の禁止条約の制定はほとんど不可能だ。結局、核拡散防止条約のように、「Nuclear Club」と言われるような軍事大国の特権クラブを認めることにしかならない。自分たちの都合のいいように、部分的な制限を加えるのが関の山だ。

 今回の「核兵器禁止条約」は非核保有国と国際NGOが主体となって、核保有国が入らない状態で核兵器についての国際ルールを一方的に決めたものだ。「核保有国が入らない核兵器禁止条約は意味がない」という声も強い。しかし、核保有国を入れたら、核兵器禁止条約はほぼ永遠に実現しないという現実もある。ヤクザが参加してヤクザ禁止法を作ることができないのと同じことだ。ヤクザ以外の人が禁止法を作るしかない。

 現在、核保有国はアメリカ、ロシア、イギリス、中国、フランス、インド、パキスタン、北朝鮮、イスラエルの9カ国である。この9カ国は同条約に関する交渉や投票には参加しなかった。また日本、韓国、ドイツなどアメリカの同盟国も加わっていない。

失望をかう日本の不参加

 特に日本の不参加は失望をかっている。日本は広島、長崎への原爆の悲劇を経験した国だ。核兵器廃絶にむけての活動は、被爆者とともに平和団体が積極的に進めてきた。日本政府はこれまで、核兵器廃絶決議案を提出し、少なくとも形式上は「核兵器のない世界」の実現に向けた努力をみせてきた。しかし今回の「核兵器禁止条約」では核大国アメリカと足並みを揃えた。残念だ。核兵器廃止のためには、世界で真っ先に意思表示をするはずの日本が、122カ国・地域の中に入っていない。「核兵器禁止条約」の成立を素直に喜べる気持ちにはなれない。

 では、何が問題で、どのようにこれからすべきなのだろうか。喜んでも、悲しんでもいられない。現実に核兵器は存在し続けており、この「核兵器禁止条約」が批准されても、あたかも何もなかったかのように、核大国は核兵器の開発・製造・貯蔵をし続けるだろう。「核兵器禁止条約」を「意味なきもの」にするのではなく、 ・・・続きを読む
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筆者

児玉克哉

児玉克哉(こだま・かつや) 社会貢献推進国際機構理事長、インドSSI大学国際平和創造研究センター所長

三重大学副学長・人文学部教授などを歴任し現職。専門は国際平和論、市民社会論、NGO論など。国際平和研究学会の現事務局長でもあり、世界の平和研究の中核を担っている。グローバルな視点から社会科学の発展に寄与している。核兵器廃絶へ向けた「ヒロシマ・ナガサキプロセス」を提案し、世界的な運動を繰り広げている。2012年にインドの非暴力国際平和協会より非暴力国際平和賞を受賞。

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