小泉進次郎氏ら若手議員が提唱、子育て政策めぐる財源・メニューの議論のたたき台に
2017年07月31日
日本の少子化傾向に歯止めをかけようと自民党の若手議員グループが提唱した「こども保険」が、賛否両論の議論を呼んでいます。耳慣れないこの提案をどう考えたらいいのか? 28日に引き続き、若手グループのリーダー小泉進次郎衆院議員と、社会保障問題に詳しい権丈善一・慶応大学教授の対談をお届けします。(司会は浜田陽太郎・朝日新聞デジタル編集部次長)
――小泉さんが自民党の若手議員とつくった「2020年以降の経済財政構想小委員会」が昨年11月、新たな社会保障改革案を発表したときの記事を読むと、財源がないのに高齢者にだけ臨時給付金として4000億円というお金を出すのはおかしいとか、医療費の自己負担について、高齢者だから下げるのではなく、健康管理に努力したら下げる「健康ゴールド免許」を提唱するなど、高齢者偏重の社会保障にメスを入れる、シルバー民主主義に立ち向かうといった姿勢が垣間見える気がします。ただ、今日の話を聞くと、そのあたり、小泉さんのなかでも少し考え方が変化したということでしょうか。
小泉 シルバーポリティックスを打破するやり方が、社会を分断する方向に進むのか、それとも融和統合する道を見つけられるのか、ずっと考えていました。とはいえ、社会保障が高齢者に手厚いというのは、事実なんですね。子ども保険に照らしていえば、社会保険の給付の大半は高齢者向け。子ども向けの社会保険なんてものはそもそもないわけですよね。
保険以外の話をすると、たとえば医療は、69歳までは3割負担、70から74歳は2割負担、75歳以降は1割負担という具合に、高齢者ほど負担割合が低い。僕たちの「小委員会」では、高齢者であっても負担できる方は負担できるし、逆に若い人であっても負担がきつい方はきつい。年齢で分けるべきではないという議論をして、そうした方向の提言も出しました。それをとらえて、高齢者偏重に切り込んでいくというメッセージが伝わっているのかもしれないけど、最終的に意図しているのは社会の分断を避けるということです。
――高齢者偏重に切り込むと、やはりお年寄りは不安や不満を持つのではないですか。社会の分断を招かないためには、相当な工夫が必要になると思いますが。
政府の骨太方針にこども保険が明記されてから1カ月ちょっとですが、その間、いろんな講演会や勉強会にお呼びがかかる。そこで、こども保険のお話をすると、最後は必ず協力的な雰囲気で終わる。こども保険を最初に耳にしたときは、いろいろ思うところがあった。だけど、子ども子育てのための財源をなんとかして捻出する、それによって社会全体で子どもを支えるというところにおいて、異論はない。だったら、前向きに考えてみようというかたちになる。
自分自身、議論を通して自分の中での理解が深まっているし、その先にあるものへの「視野」も生まれてきています。言い方をかえると、こども保険をきっかけに、将来、どんな社会をつくりたいかというところまで、目がいくようになった。こうした僕の体験を、国民全体の体験に変えていける可能性があると、いますごく期待をしています。
――こども保険の先にあるものへの「視野」とは何でしょうか。
小泉 社会保障の観点から社会を語るとき、高齢者1人を何人の若者で支えられるかというモデルでよく語られますよね。かつての日本は多くの若者が高齢者を支えた「お神輿型」、いまは支える若者の数が減った「騎馬戦型」、将来は1人の若者が1人の高齢者を支える「肩車型」だと。これを、多くの高齢者が1人の若者を応援する社会に変えていけないか。そういう大転換のきっかけがこども保険だと思っているんですよ。
――現役世代が高齢者を支えるというのは自然でわかりやすいのですが、その逆はほんとうにあり得るのでしょうか。
小泉 こども保険で集まったお金を使うにあたり、高齢者の活躍を組み込めないかというイメージですね。地方を回っていると、高齢者のなかには、社会から必要とされている、社会の役に立っているという実感がほしい、という人がいっぱいいるわけです。そういう人たちは、別に現役時代並みの給与が欲しいわけではないんですね。それを考えるとね、社会の仕組みとしてできることいっぱいあるんじゃないかと。
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