メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

言葉で人に勇気を与える仕事

慶応大学生が考えるジャーナリスト像 「メディア同士の意見のぶつかり合いも見たい」

松本一弥 朝日新聞WEBRONZA編集長

新企画 慶応大学 VS. 朝日新聞WEBRONZA
 朝日新聞WEBRONZAは慶応義塾大学とコラボし、ジャーナリズムが直面している様々な問題や、「取材とは何か」といった課題などを慶応大生と一緒に考える授業を秋から新たにスタートします。その第一弾として、ジャーナリズムを勉強している慶応大生のみなさんを招いて座談会を開きました。以下はその内容を編集したものです。

(向かって左から)内海奈南さん、高山智也さん、反保真優さん、田村葉さん拡大(向かって左から)内海奈南さん、高山智也さん、反保真優さん、田村葉さん

(向かって左から)田村葉さん、石田有紀さん、稲垣ひよりさん、佐藤信吾さん拡大(向かって左から)田村葉さん、石田有紀さん、稲垣ひよりさん、佐藤信吾さん
(向かって左から)稲垣ひよりさん、佐藤信吾さん拡大(向かって左から)稲垣ひよりさん、佐藤信吾さん

◆出席者

文学部3年 石田有紀(いしだ・ゆき)/文学部2年 稲垣ひより(いながき・ひより)

法学部政治学科3年 内海奈南(うつみ・なな)/法学部政治学科3年 髙山智也(たかやま・ともや)

法学部政治学科3年 反保真優(たんぽ・まゆ)/環境情報学部3年 田村葉(たむら・よう)

社会学研究科修士2年 佐藤信吾(さとう・しんご)/法学部政治学科3年 内海奈南(うつみ・なな)

◇司会 松本一弥・WEBRONZA編集長

なぜジャーナリズムに関心があるか

(向かって左から)内海奈南さん、高山智也さん拡大(向かって左から)内海奈南さん、高山智也さん

――今日はメディアに関心を持っている慶応大学生のみなさんに集まっていただきました。まず、なぜジャーナリズムに関心を持つようになったのか、自己紹介を兼ねてよろしくお願いします。

内海 法学部政治学科3年の内海奈南です。ジャーナリズムにはもともと興味があり、将来はテレビ局で働きたいと思っています。以前は民放に関心があったのですが、大学でメディアについての授業を受けるなかで、NHKの方に傾いてきた感じです。

髙山 法学部政治学科3年の高山智也です。記者志望です。高校生の時、テレビや学校で教わる歴史と、ネット上に流れる歴史が異なることが多く、どちらが正しいのかってイライラしていました。僕は白黒はっきりつけたい性格ですので、記者になってそれをしたい気持ちが強くあります。それがジャーナリズムに関心を持ったきっかけです。

言葉で人に力や勇気を与えられる仕事に興味がある

反保真優さん拡大反保真優さん

反保 同じく法学部政治学科3年の反保真優です。以前に読んだスポーツの記事で、係員の誘導ミスで失格になった競歩の選手が「自分のミス。これを機に競技の広めることができてうれしい」とコメントしていることに感銘を受けました。そんな風に、言葉で人に力や勇気を与えられる仕事に興味を持ち、すごいと感じ、新聞記者になりたいという思いが強くなりました。

田村葉さん拡大田村葉さん

田村 環境情報学部3年の田村葉です。大学の社会学の授業で、社会はいろんな人の関係の集積の結果できていることを知り、自分も何かしら社会の役に立ちたいと考えました。私の場合、言葉で何かできないか、自分が何か書いたり言ったりすることで、社会的記憶の蓄積にかかわれればうれしいと思い、ジャーナリズムに興味を持ちました。

メディアが取り上げる貧困像に違和感を感じた

(向かって左から)田村葉さん、石田有紀さん、稲垣ひよりさん拡大(向かって左から)田村葉さん、石田有紀さん、稲垣ひよりさん

石田 文学部3年の石田有紀です。ジャーナリズムに関心をもったきっかけは、大学で新聞をつくるサークルに入ったことです。実際に記事を書く経験を通じ、伝えることの難しさを感じました。プロの方々の新聞づくりとはどういうものか、興味を持っています。

(向かって左から)稲垣ひよりさん、佐藤信吾さん拡大(向かって左から)稲垣ひよりさん、佐藤信吾さん

稲垣 文学部2年の稲垣ひよりです。私、愛知県の田舎の出身で、父親を病気で亡くし、母子家庭で育ちました。まわりにも母子家庭の子がけっこういて、貧しい家が少なくありませんでした。ただ、メディアがセンセーショナルに取り上げる貧困像と、私のまわりの貧しい家との間には明らかに乖離(かいり)があり、なぜメディアはセンセーショナルなものばかり取り上げるんだろうと、ずっと違和感を持ってきました。ジャーナリズムは誰のためにあるんだろう、そんな思いから、ジャーナリズムを学ぶことにしました。今は記者を志望しています。

佐藤信吾さん拡大佐藤信吾さん

佐藤 社会学研究科修士課程2年の佐藤信吾です。大学院で社会学とマスコミュニケーションの勉強をしています。規範的なことには興味がなく、むしろ物事がなぜ広まり、正しいとされ、常識とされるのかという問題に興味があります。将来はそちらの方面の研究を続けていければいいなと思っています。

朝起きてから寝るまでの間、ニュースにどう接しているか

――次に、ふだん、ニュースとどう接しているかを聞かせてもらえますか。朝起きてから夜寝るまでの間、どんな媒体を経由してニュースを知るのか。

高山智也さん拡大高山智也さん

髙山 体育会のバドミントン部に入っていて、昼間は学校の授業、その後、夜まで練習という毎日です。ニュースに接するのは練習後の夜か、授業前の朝になります。具体的には、帰宅したら、ご飯を食べながら、録画しておいたNHKの「ニュースウォッチ9」を見ます。そこで興味を持ったニュースについては翌日、家でとっている朝日新聞の朝刊でじっくり読みます。

(一同から「へえー」「すごいね」の歓声)

高山 ご飯を食べる時間にテレビを見る分には、そんなに時間のロスはないんで。

石田 私はわりと時間にゆとりがある方なんで、朝、しっかり起きられた時は、まずテレビをつけて、NHKのニュース情報番組「おはよう日本」を見て、前日のニュースを知るという感じです。その後、学校に行くまでに眠くなければ、新聞も読んで学校に行きます。日中は空いた時間に新聞のデジタル版サイトなどを見て、日々ニュースに接しています。

――ニュースに接している時間は一日に合計どれぐらいですか?

石田 合計すると1日1時間ぐらいはニュースに接しています。

稲垣 私は寮で暮らしていて、テレビは食堂にしかなくて自分の部屋にはないので、テレビはあまり見ません。朝は寮の棚に置いてある読売新聞の見出しだけをぱっぱっと見て、通学途中の電車の中では日経新聞電子版を読んでいます。株をやっているもので……。学校から帰ると夕刊を読みます。共同通信の政治部でアルバイトをしているので、世に出る前のニュース原稿を見ながら、政治について学んでいます。

田村 朝起きて、歯を磨きながら(笑い)、朝日新聞を読みます。なかでも「声」の投書欄がおもしろいと思っていて、忙しくても必ず目を通します。登校する時は池袋に出るまでに20分ぐらいかかるので、混んでいる電車の中でラジオを聞きます。荻上チキさんがコメンテーターをつとめる「Session 22」というTBSラジオの番組を聴き、ニュースの見方を広げるようにしています。さらに余力があれば、よっぽど気になるニュースについては大学のデータベースで検索し、各紙を読み比べます。

LINEで記事をチェック、ツイッターで海外ニュースも

内海奈南さん拡大内海奈南さん

内海 私は1週間の中で忙しい時と忙しくない時の差がけっこうあって、忙しくない時は、新聞を読みます。特に社説欄が好きなので、しっかり読みますが、忙しい時は新聞を見ない日もあって……。そんなときは、LINEに流れてくるいろんな新聞社のニュースで、何があったかチェックします。ヤフーニュースでは確認していませんが、そんな形で確認している。それからツイッターで海外ニュースも見ます。いろんな人がリツイートして、ニュースへの意見を述べているのを読むのは、楽しいです。

(向かって左から)内海奈南さん、高山智也さん、反保真優さん拡大(向かって左から)内海奈南さん、高山智也さん、反保真優さん

反保 朝日、日経、読売の三社共同プロジェクト「新s」(あらたにす)に参加させてもらっているので、朝日と読売と日経の3紙を無料で購読しています。朝に、30分から1時間かけて読みます。通学に30分ぐらいかかるので、その間はデジタル版を見たり、興味を持ったニュースに関しては解説のサイトで背景を調べたりしています。夜はテレビで「NEWS ZERO」や「報道ステーション」を見るようにしています。

――夜のニュース番組は何を一番見ますか?

反保 報道ステーションです。

石田 「ニュースウォッチ9」をよく見ます。

佐藤 僕はネット中心です。朝起きると、フェイスブックで沖縄タイムス、朝日、産経、読売、毎日の各紙をフォローして、そのあとスマホのアプリでフォーサイト、クーリエ・ジャポン、ロイター、アルジャジーラ、BBCを見ます。テレビはほとんどまったく見なくて、すべてスマホ。テレビは週末にちょっと見るぐらいです。

ニュース媒体の信頼度は?

石田有紀さん拡大石田有紀さん

――みなさんがいろいろな媒体でニュースに接しているのがよくわかりました。それぞれの媒体の信頼度や親しみやすさについてはどうでしょうか。新聞、ネット、テレビと分けるとすると……。

髙山 新聞通信調査会の2015年の「メディアに関する全国世論調査」によると、信頼度が高いのは、トップがNHK、2位が新聞、3位が民放でした。この情報をもとに、まずNHKのニュースを見て、次に新聞を見るようにしています。

石田 私は直感的には、新聞が一番信用できると思っています。テレビは民放とNHKでかなり信頼度が違っていて、NHKは新聞と同じぐらい信用しています。もちろん新聞でもNHKでもやっぱり誤報はあるから、まあどこまで信じていいのかなっていうのはいまだによくわからないところです。ネットはほとんど信用していません(笑い)。

――えっ、若い人らしくないですね(笑い)。若者は一般的に「ネットに出ていたら信用する」という傾向がありませんか?

反保 私も新聞が一番信頼度が高いです。テレビは「中立」というところはあるのかなという感じはするんですけど、映像性であったり、何かキャッチーなことについてはけっこう娯楽性が高いなっていうイメージがあって、社会の動きを知るには新聞の方が幅広く知れるのかなという感じがします。ネットについては、「ネット=悪」っているわけでは必ずしもないとは思っていて、信頼できる出典に基づく情報は信用できるんじゃないかと思っているんですが……。いずれにせよ、自分で見極めてうまくつき合うことが重要だと思います。

田村 僕は新聞を一番信用しているっていうか、信頼したいと思っているんです。というのは、ラジオやテレビは向こうから入ってくるからすごい楽なんですが、でも新聞は寝ぼけながら読むと頭に入ってこなかったりするから、その分、ちゃんと何か自分で足を動かして情報を取りにいっているっていう実感が一番持てます。ネットは情報が膨大すぎて、ついていけていません。

稲垣 一日の中で触れている時間が一番長いので、新聞を一番信用しています。一紙だけだとその新聞のカラーに染まる、染まりやすいというのが新聞を読む上ではあると思うんですが、いろんな新聞を読むと、それぞれの新聞のカラーのズレを修正しながら読めるので、その分、お金はかかりますが、信用度が増します。テレビは実家にいた時から部屋にはなかったし、これまでテレビを見る機会がほとんどまったくなかったので、信頼については何とも言えません。ネットはバズるっていうんですが、流行(はや)らせるためにわざと過激な見出しをつけたり、本当じゃないのにセンセーショナルにリツイートされるようなことを書くという風潮がある限り、私はあんまり信用できないなって思っています。

・・・続きを読む
(残り:約9031文字/本文:約13537文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
デモクラシーやJournalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


関連記事

レコメンドシステムによる自動選択

筆者

松本一弥

松本一弥(まつもと・かずや) 朝日新聞WEBRONZA編集長

1959年生まれ。早稲田大学法学部卒。朝日新聞入社後は東京社会部で事件や調査報道を担当した後、月刊「論座」副編集長、オピニオン編集グループ次長、月刊「Journalism」編集長などを経て現職。満州事変から敗戦を経て占領期までのメディアの戦争責任を、朝日新聞を中心に徹底検証した年間プロジェクト「新聞と戦争」では総括デスクを務めた。著書に『55人が語るイラク戦争ー9.11後の世界を生きる』(岩波書店)、共著に『新聞と戦争』(上・下、朝日文庫)。

松本一弥の新着記事

もっと見る