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どこへいく?安倍改造内閣

粘り腰と野党の低迷で危機を脱出。首相は憲法改正を諦めていない

西田亮介 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授

起死回生をかけた内閣改造

 第3次安倍第3次改造内閣が発足して3週間が経過した。森友学園や加計学園の問題、南スーダンPKOの日報隠蔽問題、第1党の地位を都民ファーストの会にゆずることになった先の都議選での敗北、自民党国会議員の度重なる不祥事、高水準を維持してきた内閣支持率の低落など、まさに逆風が吹きすさぶなか、起死回生をかけた内閣改造だったが、メディア各社の世論調査によると、今のところ支持率は下げ止まり、政権は一息ついているようにみえる。

 周知のとおり、2012年12月に始まった第2次以後の安倍内閣は、第1次内閣とあわせた通算在任日数が、佐藤栄作、吉田茂の各内閣に次ぐ戦後歴代3位の長さを記録することに象徴されるように、近年の内閣にない強靱(きょうじん)性と安定性をみせ、「安倍1強」とも評されてきた。今回の内閣改造は、揺らぎのみえた「1強」の立て直しを図ろうとするものだが、果たしてどうなるか。

 本稿では、こうした狙いをもつ内閣改造について、人事の「手堅さ」を指摘するとともに、背後にある論功行賞的な面を概観する。さらに、内閣支持率や自民党の政党支持率を野党第1党の民進党の状況とあわせて分析する。そこから浮かぶのは、過去の「粘り腰」の実績もあり、安倍政権はなんとか眼前の危機は脱するのではないかという見立てだ。

 そのうえで、安倍政権のこれからについて、首相が個人として強い関心を示してきた憲法改正を軸に展望したい。政局の動向や北朝鮮のミサイルといった体感的な危機を背景にして、社会を基礎づける憲法の改正をせき立てるような状況は望ましくない。改造内閣と自民党の今後の動きに、有権者は油断なく目をこらすべきだというのが、筆者の主張である。

初閣議を終え、記念写真に納まる第3次安倍・第3次改造内閣の閣僚たち=3日、首相官邸拡大初閣議を終え、記念写真に納まる第3次安倍・第3次改造内閣の閣僚たち=3日、首相官邸

「目玉」に乏しい「手堅い」人事

 今回の内閣改造と自民党役員人事の最大の特徴は、「手堅さ」に尽きる。逆に言うと、派手で耳目を引くような世論の大向こうをうならす「目玉人事」は、ほとんど見当たらなかったと言っていい。

 メディアの報道からもそれは伝わってきた。新内閣が発足する前日の8月2日までに、大臣や党役員の人事が次々と漏れ出し、3日の朝刊各紙には大臣と自民党役員人事の一覧表が並んだ。それは、派閥の推薦に従って粛々と進んだ、自民党のかつての組閣時の報道を彷彿(ほうふつ)とさせた。

 政党には、とくに与党の場合、要職を分配する役割と、選挙互助会としての側面がある。権力と地位を追求するのは政治家の性であり、そのためには選挙で当選せねばならない。それゆえ、これらの側面のいずれかが機能不全を起こすと、党内で不協和音が生じる。

主流派、非主流派の双方に配慮

 今回は、疑惑や不祥事、地方選挙での敗北を受けての組閣だけに、対外的には、とにかく「手堅さ」を印象づけて信頼の回復に努めるとともに、党内的には、従来の安倍内閣の骨格は最低限保ちつつ、主流派、非主流派の双方の事情に最大限配慮したように思われる。

 たとえば、折にふれ安倍政権に異論を唱えてきた石破茂氏の冷遇は変わらないが(それどころか、石破氏に近い斎藤健氏を農相に抜擢するなどの切り崩しもおこなわれているというのが、読売新聞論説主幹・小田尚氏の見立てだ=読売新聞8月19日付朝刊「補助線」)、過去に総裁選への立候補を模索した野田聖子氏を総務相、「脱原発」を主張する河野太郎氏を外相にあてるなど、非主流派を重要ポストに起用した。

 一方で、今回、党の政務調査会長に就任した岸田文雄氏の意向を尊重し、懸案の防衛大臣には経験者の小野寺五典氏を、国会答弁が迷走して顰蹙(ひんしゅく)をかった金田氏の後任には上川陽子氏を起用するなど、主流派にも目配りをする。副総理、官房長官、経済産業大臣といった内閣の中核の布陣は維持し、自民党役員については、二階俊博幹事長、高村正彦副総裁といった気心の知れた顔ぶれを留任させた。

 くわえて見逃せないのは、目立たない論功行賞的な差配だ。たとえば加計学園問題で矢面に立った萩生田光一氏は幹事長代行に就任した。これまでの内閣官房副長官と比べて人目にはつきにくいが、要職と言っていいだろう。

一定の成果はあったが、予断許さぬ状況

 このように「手堅さ」を押し出した内閣改造だが、「成果」のほうはどうだろうか。

 メディアの世論調査をみる限り、内閣支持率は下げ止まりの様相をみせる。たとえばNHK放送文化研究所の「政治意識月例調査」によると、内閣改造直後の8月4日~6日に実施された調査の支持率は39%で、7月調査の35%からアップしている。ただ、不支持率は43%(7月の不支持率は48%)で、依然、支持率を上回る。他のメディアの世論調査も同様の傾向だ。

 要するに、かつての安定した「一強」の状況とは、明らかに様変わりしている。安倍内閣にとって今回の改造は、一定の「成果」は見られるものの、予断を許さない状態が続いていると言える。

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筆者

西田亮介

西田亮介(にしだ・りょうすけ) 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授

1983年生まれ。慶応義塾大学卒。同大学院政策・メディア研究科後期博士課程単位取得退学。博士(政策・メディア)。専門は情報社会論と公共政策。著書に『ネット選挙』(東洋経済新報社)、『メディアと自民党』(角川新書)、『マーケティング化する民主主義』(イースト新書)など。