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北朝鮮の核・ミサイル「本格開発」にギアチェンジ

朝鮮半島有事を未然に防ぐための鍵を握る日本

児玉克哉 社会貢献推進国際機構理事長、インドSSI大学国際平和創造研究センター所長

拡大国連安全保障理事会による北朝鮮への新たな制裁決議採択を受け、取材に応じる安倍晋三首相=9月12日、首相官邸
 北朝鮮の核実験やミサイル発射がとまらない。8月29日には、北朝鮮は火星12号と見られる中距離弾道ミサイルを発射し、日本の領土上空である北海道を横切るコースを飛翔して襟裳岬の東方約1000kmの海上へと落下させた。9月3日には北朝鮮はこれまでで最大級の核実験を行った。北朝鮮は、この実験を大陸間弾道弾(ICBM)搭載用の水爆実験としている。ミサイル発射は今年に入って頻繁に繰り返しているが、核実験はしばらくの間、行っていなかった。2016年9月9日の北朝鮮建国記念日以来、1年ぶりである。トランプ大統領が誕生してからは初めてである。トランプ大統領は北朝鮮に対して強い態度で臨んでおり、核実験の実施は「一線を越える」とみなすと示唆してきた。北朝鮮はこうしたトランプ大統領の「警告」から核実験はしないと見られていたが、簡単にその一線を超えてしまった。しかも「水爆」と主張するくらいの大型の核実験であった。

中国と北朝鮮の関係は悪化している

 8月29日の中距離弾道ミサイル発射は、米韓合同軍事演習中であり、それに対する抗議の意味があるとみられていた。しかし、今回の米韓合同軍事演習は北朝鮮への配慮もあってか抑え気味のものであったし、9月3日の核実験は、合同演習が終わった後に行われている。9月3日には、中国やロシア、インドなど新興5カ国でつくるBRICSの首脳会議が福建省アモイで始まっている。中国政府に対する当て付けとみる向きもある。最近、中国と北朝鮮の関係は悪化している。習近平氏と金正恩氏との間には深い溝が出来つつあるといわれる。

 私は、以前と状況が異なりつつあるのではないかと考えている。つまり以前は、当て付けやアピールのためが主目的だったのが、アメリカに脅威を与える水爆核弾頭搭載のICBMの完成に本気で取り組んでいるのではないか。つまり、「当て付け」のための日程調整は二の次であり、それよりも「完成」へ向けて急ピッチの研究開発が進められているという感がある。9月9日の建国記念日には「何かが起こる」といわれた。昨年は5度目の核実験が9月9日に行われており、今年も核実験かミサイル発射のいずれかが行われると予想された。しかし9月9日には何も起こらなかった。すでに北朝鮮の核・ミサイルは「当て付け」から「本格開発」にギアが変わっているのだ。

「真面目に」アメリカに対抗しようとしている金正恩氏

 北朝鮮は本気で、超大国アメリカと張り合おうとしている。客観的に考えると、圧倒的な国力の差、軍事力の差、経済力の差からして、どうしようとも米朝対立において、アメリカの優位が揺らぐことはない。どんなに頑張っても北朝鮮がアメリカに決定的打撃を与えることはまずありえず、少しでも打撃を与えたら、アメリカは北朝鮮を完全崩壊させるだけの軍事力を持っている。北朝鮮がアメリカに立ち向かえることはありえないのだが、金正恩氏は「真面目に」アメリカに対抗しようとしている。そう考えなければ、北朝鮮の戦略は理解ができない。

 私はこのことこそ、北朝鮮の最大の脅威だと考えている。つまり、北朝鮮内の情報異常、思考異常により、ありえないはずの判断が連続で行われ、それに振り回されている。評論家の中には、こうした異常な展開を、金正恩氏の「しっかりと練られた戦略」と説明する人もいる。私はそうではなく、あまりに現実離れする危険な戦略を平気でするから、それがあたかも熟慮された戦略にみえるだけだと考えている。これは、全く危険な状況だ。北朝鮮が踏み越えてはいけない「一線」を踏み越える可能性は十分にある。そして、対応するのが、言動を読みにくいトランプ大統領だ。「常識」で冷静に考察しているだけでは読みきれない嵐の展開がありうるのだ。

 北朝鮮は既に相当な経済制裁を受け孤立状態にある。一般的にはこうなる前に外交交渉で一定の妥協がある。しかし北朝鮮はそうした交渉をほとんど受け入れず自らの主張を訴え、 ・・・続きを読む
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筆者

児玉克哉

児玉克哉(こだま・かつや) 社会貢献推進国際機構理事長、インドSSI大学国際平和創造研究センター所長

三重大学副学長・人文学部教授などを歴任し現職。専門は国際平和論、市民社会論、NGO論など。国際平和研究学会の現事務局長でもあり、世界の平和研究の中核を担っている。グローバルな視点から社会科学の発展に寄与している。核兵器廃絶へ向けた「ヒロシマ・ナガサキプロセス」を提案し、世界的な運動を繰り広げている。2012年にインドの非暴力国際平和協会より非暴力国際平和賞を受賞。

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