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ルポ 「北」まで500メートル、非武装地帯で

南北国境の最前線、韓国側の監視所で見た兵士たち

伊藤千尋 フリー・ジャーナリスト

韓国軍の監視所。非武装地帯を示すDMZと七星師団のマークが掲げてある=拡大韓国軍の監視所。非武装地帯を示すDMZと七星師団のマークが掲げてある=2017年9月27日、春川市郊外で 撮影・筆者
 北朝鮮による核開発とミサイルの相次ぐ打ち上げが緊張を高めている朝鮮半島。北朝鮮との偶発戦争を招きかねない根本的な要因は、いまだに戦争状態が続く朝鮮戦争と、停戦協定後も続く韓国と北朝鮮との敵対関係にある。

 この時期、南北の国境線はどうなっているのだろうか。9月27日、韓国北部の春川(シュンチョン)市から北に向かった国境地帯の山中にある韓国軍の監視所を訪ねた。北側の監視所とは500メートルしか離れていない、まさに最前線だ。

 訪問したのは非武装地帯(DMZ)と呼ばれる両国の国境線の一帯だ。普通、日本からの観光客が行くのは首都ソウルに近い板門店のDMZだが、今回訪れたのは外国人がほとんど行かない場所で、春川市の北約50キロの国境地帯にある第7歩兵師団(七星師団)の監視所だ。『韓国の軍隊――徴兵制は社会に何をもたらしているか』(中公新書)の著者で春川市にある翰林聖心大学の尹載善教授に軍との連絡をつけていただき、かつて七星師団の部隊員でこの監視所に勤務していた朴潤秀氏に同行していただいた。

「冬のソナタ」の舞台は軍事都市

 ドラマ「冬のソナタ」の舞台となった春川市は韓国北東部にある江原道の中心都市だ。ソウルから車で2時間ほどかかる。市内の春川高校は「冬のソナタ」の主人公が通ったという設定で、巨大なダム湖に浮かぶ小島には二人がデートした並木道がある。

 この街は国境に近いだけに朝鮮戦争のさいには最後の激戦地となった。今も全国各地で訓練を終えた新兵が前線に配置されるために集結する地で、韓国軍の基地が集中する。「冬のソナタ」の舞台は、実は軍事都市でもあるのだ。

 市街地を抜けて山岳地帯に入ると、行く手にコンクリートの遮断壁がいくつも出てきた。1辺が1メートルほどの直方体のコンクリートの塊が道路際に並ぶ。北朝鮮の戦車が攻めてきた際にはこれで行く手を妨害するのだ。交通のためだけなら造る必要もないトンネルもある。これもいざというときに爆破して行く手をふさぐためのものだ。

 間もなく道路の両側には韓国軍の基地が次々に現れた。最初は歩兵の訓練所のような小規模なものだったが、次第に軍用車や倉庫が並ぶ本格的な設備になってきた。

北朝鮮との国境に近い韓国軍の野砲基地の掩体壕。砲身は北に向く=拡大北朝鮮との国境に近い韓国軍の野砲基地の掩体壕(えんたいごう)。砲身は北に向く=2017年9月27日、春川市郊外で 撮影・筆者
 10人ほどの兵士が銃をかついで基地内を行進する。コンクリートの建物すべてに緑や茶色の迷彩色が施してある。「為國献身、軍人本分」と門に掲げた基地は丘に続き、丘の上には迷彩色の建物が並ぶ。丘がまるごと基地になっている。

 いきなり戦車が10両ほど目に飛び込んできた。道路際の基地から道路側に砲身を向け、いつでも出動できる態勢だ。砲兵部隊の基地には台形をしたコンクリート製の掩体壕(えんたいごう)がいくつも並び、その空洞部分から巨大な砲身が北に向かって延びる。

「脱北」を誘う「卍」のマーク

 1時間ほど走ったところで、バリケードが行く手をふさいだ。師団の歩哨所だ。見張りに立つのは完全武装で自動小銃を肩にかけた兵士だが、その表情はいかにもあどけない。 ・・・続きを読む
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筆者

伊藤千尋

伊藤千尋(いとう・ちひろ) フリー・ジャーナリスト

1949年、山口県生まれ、東大法学部卒。学生時代にキューバでサトウキビ刈り国際ボランティア、東大「ジプシー」調査探検隊長として東欧を現地調査。74年、朝日新聞に入社し長崎支局、東京本社外報部など経てサンパウロ支局長(中南米特派員)、バルセロナ支局長(欧州特派員)、ロサンゼルス支局長(米州特派員)を歴任、be編集部を最後に2014年9月、退職しフリー・ジャーナリストに。NGO「コスタリカ平和の会」共同代表。著書に『地球を活かすー市民が創る自然エネルギー』『活憲の時代』『変革の時代』『ゲバラの夢、熱き中南米』(以上、シネフロント社)、『一人の声が世界を変えた』『辺境を旅ゆけば日本が見えた』(以上、新日本出版社)、『世界一周 元気な市民力』(大月書店)、『反米大陸』(集英社新書)、『観光コースでないベトナム』(高文研)、『闘う新聞ーハンギョレの12年』(岩波ブックレット)、『燃える中南米』(岩波新書)など。

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