小池氏主導で公約などを決定、党組織としてのガバナンスが存在せず
2017年10月09日
9月25日、小池百合子氏は、安倍晋三首相が衆議院解散を表明する会見を行う数時間前、東京都知事としての記者会見で、「希望の党」結成と自らの代表就任を宣言し、それまでの、新党結成についての若狭勝氏・細野豪志氏らの協議結果を「リセット」するとして、都知事と国政政党代表を兼務する考えを表明した。
同日夕刻、安倍首相が会見を開き、臨時国会冒頭での衆院解散を表明。9月27日、小池氏と「小池新党」への合流を表明していた14名の議員とで「希望の党」結党記者会見を開いて綱領を発表した。
9月28日、臨時国会冒頭で衆議院は解散されたが、同日、民進党は、両院議員総会で「希望の党」に合流し、事実上解党すること、次期衆院選で、(1)民進党からの立候補内定者の公認を取り消す、(2)希望に公認を申請する、(3)民進党は候補者を擁立せず希望を全力で支援する、という「3本柱の方針」を全会一致で承認した。
ところが、小池氏は、「民進党全員を受け入れることはさらさらない」と発言し、民進党の議員のうち、リベラル系は公認から「排除」する方針を明らかにしたこと、「安全保障法制を基本的に容認」などを内容とする「政策協定書」への署名を公認の条件としたことで、希望の党に公認申請しない前議員が相次ぎ、枝野幸男氏が「立憲民主党」を設立し、そこにリベラル派議員が加わった。
一方、国政政党を立ち上げ党首になった以上、小池氏が都知事を辞任して総選挙に出馬すべきではないかという声が、希望の党の内部だけではなく、与党の自民党側からも上がっていたが、小池氏は「しっかりと都知事としての役割を果たす」などと述べて、少なくとも、現時点(10月9日)では、衆議院選挙への出馬は否定している。
希望の党は、以上のような経過で、国政政党として発足し、10月22日投開票の総選挙で、最初の国民の審判を受けることになった。では、この党をどう評価すべきか、この党に「希望」はあるのか。
間違いなく言えるのは、この党には、現時点では、組織としての実体が全くないということだ。党の綱領も、選挙公約も、所属議員の間で議論されたものではなく、支持されたわけでもない。党の代表であり、創設者である小池氏の意思により、その責任において設定されたものである。そして、党組織としてのガバナンスがまだ存在せず、所属議員の活動の健全性を確保するためのコンプライアンスの仕組みも整っているとは思えない。
10月6日に選挙公約が公表され、3つの柱として「消費税増税凍結」「2030年までに原発ゼロを目指す」「憲法改正論議の推進」が掲げられているが、このうち、選挙後に実効性をもった「有権者への約束」となり得るのは、2019年 10月に予定されている消費税増税の凍結だけであり(財源のことはともかく、希望の党が選挙で勝利すれば、消費税の引き上げはできないということになるはずだ)、「原発ゼロ」は、あくまで「目指す」ということであり、当面の問題である停止中の原発の再稼働に対する対応も明確になっていないので、13年先の2030年に原発ゼロをめざしていくという「方向性」を示す意味はあっても、具体的で実効性をもった約束となるものではない。また、憲法改正論議の推進というのも、具体的に何をどのように改正していくのかは示されておらず、単に、党内で「必要な憲法改正の議論は行っていく」という、言わば当然のことを言っているに過ぎない。「12のゼロ」というのも、国政選挙の政策として取り上げるべきものとは思えないものが多く、現実的な「政策」とは言い難い。
つまり、希望の党には、政党としての実現しようとしている政策も具体化されていないし、組織として、所属議員を統制するシステムも議論を集約し一元化する仕組みもない。
単に、東京都知事選挙と都議会議員選挙で強さを見せつけた小池氏が立ち上げ、代表に就任した政党であることから、その公認候補には相応の集票が見込めるということで、いくつかの政党から離脱して無所属となっていた議員が合流し、さらに、代表自らが党の存続を事実上断念した民進党から、多数の議員(前議員)が合流したことで、それなりに大所帯の「政党」になったというだけの「党」である。
言ってみれば、希望の党というのは、小池氏が作った“壮大な空箱”に過ぎないのである。
しかし、小池氏も、「安倍一強打倒」ということを明確に打ち出しており、民進党・前原代表の「どのような手段を使ってでも安倍政権を終わらせる」という強いメッセージと結びついたことで、今回の衆院選で、安倍政権を打倒するという方向での一致結束が図れるのであれば、現時点においては「壮大な空箱」であっても、「反安倍政権」の受け皿であることに“最大の意義”があると言えよう。
安倍首相による今回の衆議院解散は、絶対に許してはならない「最悪の暴挙」である。本来、衆議院解散は、憲法69条の場合に限定するのが憲法の趣旨であり、
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