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本当は怖い小池百合子氏のリセット

ポピュリズムで進める新右派転換。戦後リベラルの価値観・規範は崩壊の瀬戸際か

中野晃一 上智大学国際教養学部教授・政治学(日本政治、比較政治、政治思想)

危機ごとに右傾化を進める保守

「希望の党」設立の会見で話す小池百合子代表=9月27日午前、東京都新宿区拡大「希望の党」設立の会見で話す小池百合子代表=9月27日午前、東京都新宿区

 「改革保守政党を目指す」。先月27日、新党「希望の党」の結党の記者会見で、代表の小池百合子・東京都知事はそう語りました。象徴的な言葉だと思います。

 冷戦の終結期以降、日本の保守には何度も危機がおとずれました。そのたびに「改革」を掲げた「保守」が現れて保守を救い、政治の右傾化を進めてきた経緯がありました。今回も同様の事態が起きる可能性があります。

日本の右傾化の特徴とは

 日本の右傾化には、幾つかの特徴があります。

 一つには、政治主導であること。社会は政界の右傾化を追うかたちで、右傾化してきました。二つには、右傾化のプロセスが単線的ではなく、限定的な揺り戻しを挟みながら、じわじわと進展すること。三つには、右派がそのまま強大になるのではなく、新しい右派に変質するなかで起きることです。私はこれを「新右派転換」と呼んでいます。

 新右派転換において主導的な役割を果たした政治リーダーの一人に小泉純一郎氏がいます。不人気を極めた森喜朗首相のもと、野党第1党の位置を固めた民主党(当時)にじわじわと迫られ、自民党が危機感を募らせるなか登場したのが、自民党の異端児だった小泉氏でした。

新右派転換を進めた小泉首相

 2001年の総裁選で「自民党をぶっこわす」と絶叫し、本命の橋本龍太郎氏を破って首相になった小泉氏は、無党派層からも支持も集めて高い支持率を維持。新自由主義的な「構造改革」を進める一方、靖国神社参拝など国家主義的な姿勢も示し、日本の新右派転換を進めました。2005年の郵政解散・総選挙では自民党に300近い議席をもたらしました。

 今回、もともと自民党だった小池さんが希望の党を結党した姿は、小泉氏を彷彿(ほうふつ)とさせました。森友・加計学園問題に機に深刻化した安倍・自民党の危機に際し、改革を掲げて登場。立ち位置も、民進党の前議員を受け入れる条件に「憲法改正」「安保法改正」を突きつけたことから分かるように、安倍氏の右傾化路線を同じ方向です。仮に、希望の党が選挙後、政界で一定の位置を占めれば、安倍路線をさらに進め、新右派転換をはかろうとするでしょう。

 そう考えると、希望の党への民進党議員の合流に際し、小池さんがリベラル派を排除した理由が見えてきます。

リベラルたたきに転じたわけ

 選挙がどんな結果になるか、まだ分かりませんが、「国難突破解散」とまで言う安倍氏ですから、選挙後に何らかのかたちの「挙国一致・救国内閣」をつくる発想があっても不思議ではありません。

 小池さんにすれば、希望の党でいきなり過半数をとるのは難しいとすれば、自民党との大連立であれ、新たな政界再編であれ、そこに希望の党も関わっていく。換言すると、自民党から政権をいきなり奪うのではなく、まずは保守二大政党制の一角を占める。そのために、とりあえず完膚無きまでにリベラル勢力をたたくことが得策だと判断したのでしょう。

 リベラルサイドから見て恐ろしいのは、民進党の前原誠司代表も小池さんと歩調をそろえたように見えることです。

限界があった民主党のリベラル路線

 民進党(民主党)はここ数年、安保法案廃案や「共謀罪」反対など、リベラルな主張をしてきました。「安保法案の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)の要求に応じて野党共闘にも取り組み、2016年の参院選では一定の成果を上げました。

 しかし、この路線にはもともと限界がありました。2012年12月に野田佳彦政権が崩壊した後の民主党の顔ぶれ、とりわけリーダー層をみると、保守系が多い。反安倍のなかで、市民社会の動きに引きずられるかたちで己の意に反して「左」に引っ張られていましたが、前原さんが今回、その縛りを解いたわけです。

 安保法制への抗議行動が盛り上がった2015年秋から2年がたち、「永田町」を拘束する効果が弱まってきた面もあります。もちろん、政治的に覚醒した草の根の市民の動きは着実に進んでおり、決して冷めたわけではないのですが、大きな抗議行動のように可視化されるわけではないため、市民運動は終わったと誤解している政治家は少なくありません。

 前原さんもその一人です。彼が代表になった段階で、社民党や共産党や自由党、そして市民との共闘を断ち切るほうに向かう危険がありました。

 それが現実となり、日本の政治からリベラル政党が消えるかもしれない。いわばその瀬戸際にきているというのが、いまの状況です。

小池さんはアメリカ型ポピュリズム

 そこで気になるのが、小池さんや希望の党の「適当さ」です。 ・・・続きを読む
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筆者

中野晃一

中野晃一(なかの・こういち) 上智大学国際教養学部教授・政治学(日本政治、比較政治、政治思想)

東京大学(哲学)および英国オックスフォード大学(哲学・政治学)の両校を卒業ののち、米国プリンストン大学にて政治学の修士号および博士号を取得。主著『右傾化する日本政治』(岩波新書)、『戦後日本の国家保守主義―内務・自治官僚の軌跡』(岩波書店)、共著に『いまこそ民主主義の再生を!新しい政治参加への希望』(岩波ブックレット)、『ヤスクニとむきあう』(めこん)など、日本再建イニシアティブ著『民主党政権失敗の検証 日本政治は何を活かすか』(中公新書)および『「戦後保守」は終わったのか 自民党政治の危機』(角川新書)でプロジェクト座長。

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