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立憲民主党に必要な理念は「リベラル」ではない

「立憲自由民主主義」を旗印にせよ

小林正弥 千葉大学大学院社会科学研究院教授(政治学)

立憲民主党の枝野幸男代表拡大立憲民主党の枝野幸男代表は「私はリベラルであり、保守であります」と言った

3極の中における可能性

 新聞各社の衆院選序盤の情勢予測では、与党が堅調で「希望の党」が伸び悩み、立憲民主党が躍進する勢いだ。与党が勝利するとすれば、それは野党が大きく二つに分かれてしまっているからであり、このような事態を招いた小池百合子氏と前原誠司氏の責任は重い。

 安倍政権が持続するのは民主主義にとって深刻な事態である。「自・公」「希望・維新」「立憲・社・共」の3極と言われる中で、野党の2極が協力しなければ政権の専制化をとどめることはできない。このことを改めて顧みるべきだろう。

 情勢予測をみる限り、新党の中で民主主義や議会政治の復権につながる可能性を立憲民主党にみている人が多いのかもしれない。だからこそ、政権批判の声がこの党に向かっているのだろう。この党の政治的使命は重い。

 選挙における枝野幸男代表の党首第1声「右とか左という時代じゃない。国民に言うことを聞かせる上からの政治を、草の根の国民の声に基づいた政治へ変えていこう」(10月10日)という言葉は共感を呼んでいる。民主主義の理念をまさしく言い表しているからだ。これまで日本の大半の政党は市民との間に距離があったが、この政党は市民の気持ちに応える可能性があると受け止められているのだろうか。それは、安保法反対の際の大規模デモと、枝野代表や福山哲郎幹事長ら当時の民進党議員が呼応して戦った――その際の熱気が立憲民主党の成立を後押しし、現在のツイッターのフォロー数や個人カンパの殺到に表れている。

 しかし、少人数で旗揚げしたこの党は、候補者数が少なく、躍進してもまだまだ小さい。選挙後には政党の大きな再編が予想されるが、今までの民進党のような政党に戻るようだと元の木阿弥になってしまうだろう。民主主義を甦らせ、日本政治全体を変えるためには、今までの民主党や民進党とは異なる新しい存在として、自らの思想や主張を確立していく必要がある。そのために求められるのは、どのような理念だろうか。

リベラル派とは?

 メディアはこのグループを「リベラル派」としばしば呼んでいるし、当事者たちにもそういう意識を持っている人がいるようだ。この新党ができるかどうか注目を集めていた時に筆者もリベラル派という言葉の説明を求められたが、むしろ「立憲民主主義」という理念を旗印に掲げるべきだろうと答えた。約2年前から立憲民主党という名称を提起していた私は、新党にこの名称が望ましいと思っていたのである(「国民連合政府を超えた平成「維新」の実現を(下)――立憲連合という正義の戦略」WEBRONZA)。

 そもそもリベラル派という言葉は、日本政治では1990年代ころから使われるようになり、いわゆる政治改革や政権交代において重要な役割を果たした。それ以前は、野党は社会党・共産党が中心で「革新」という呼び方が用いられていたが、社会主義や共産主義は左翼であるのに対し、それとは一線を画す言葉として「リベラル」が登場したのである。それゆえ、保守派が常套句的に「リベラル派は左翼」と批判するのは間違いである。 ・・・続きを読む
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筆者

小林正弥

小林正弥(こばやし・まさや) 千葉大学大学院社会科学研究院教授(政治学)

1963年生まれ。東京大学法学部卒業。2006年より千葉大学大学院人文社会科学研究科教授。千葉大学公共研究センター共同代表(公共哲学センター長、地球環境福祉研究センター長)。専門は、政治哲学、公共哲学、比較政治。マイケル・サンデル教授と交流が深く、「ハーバード白熱教室」では解説も務める。著書に『対話型講義 原発と正義』(光文社新書)、『日本版白熱教室 サンデルにならって正義を考えよう(文春新書)、『サンデル教授の対話術』(サンデル氏と共著、NHK出版)、『サンデルの政治哲学 〈正義〉とは何か』(平凡社新書)、『友愛革命は可能か――公共哲学から考える』(平凡社新書)、『人生も仕事も変える「対話力」――日本人に闘うディベートはいらない』(講談社+α新書)、『神社と政治』(角川新書)など多数。共訳書に『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業』(ハヤカワ文庫)など。

 

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