小池劇場、枝野フィーバー、自民党大勝……。秋風が吹く中、見えてきた日本政治の今後
2017年10月27日
衆院選が終わった。「小池劇場」があったり、枝野幸男氏率いる立憲民主党が突然、熱狂をうんだりしたものの、ふたを開けてみれば、自民党が公示前と並ぶ議席を獲得して大勝した。
だが、局所的な小変化は起きつつある。今回、「不意打ち解散」が図に当たった安倍晋三首相だが、解散後のメディアの世論調査の内閣支持率は40%を切る水準で、不支持率はそれを上回っていた。選挙後の世論調査では、メディア各社で支持・不支持の結果が割れているが、割れていること自体が、かつてのような盤石の内閣支持とは言えないことをはからずも表している。
こうして与党の万全の勝利とも言えず、かといって、つかの間の「政権選択選挙」の期待もあっけなく裏切られた衆院選後の日本は、台風一過とともに秋風が吹く状況になっている。
代表自ら「完敗」と認めた希望の党が敗北したのは明らかだが、議席を減らしたという点では、公明党、共産党、日本維新の会も同様である。ここから何がみえてくるか。
まず、指摘できるのは、希望、維新という「改革」を唱える政党が受け入れられなかった事実である。もはや「改革」は政党の看板公約たり得ない。
そもそも制度改革には時間がかかり、コストも多大である。とても小政党の手に負えるものではない。希望の党が一時、見通したように、連立政権の一翼を担うほどの勝利を収めたとしても、そうした脆弱(ぜいじゃく)な政権基盤では改革を実行することは不可能である。
振り返れば、1990年代の統治機構改革、2000年代の小泉純一郎政権下の構造改革は、冷戦終結後のグローバル化に伴う世界の民主化・経済成長に追いつくための改革であったが、グローバル化が混迷と深化を遂げつつある現下の情勢では、改革のアイデアはもはや「外」に求め得ない。とすれば、内発的な改革が必要になるのだが、オリジナルとは名ばかりのお手軽な手作りの改革では、到底広い支持を集める見込みはない。ここはじっくりと改革案を熟成しなければならないところなのである。
その意味で、希望と維新は改革という「オワコン」にしがみついた末、失敗したとも見ることができるのである。
公明党の敗北は小選挙区事情によるところが大きいが、自民党、とりわけ安倍内閣の右派路線に引きずられたこと、野党に旗幟(きし)鮮明なリベラル勢力としての立憲民主党が登場したこともまた、敗因である。今後、公明党は憲法改正に消極的になり、消費増税での軽減税率の制度化には積極的になるだろう。いずれも自民党にとっては、文字通り「ブレーキ役」となるのである。
共産党は、選挙区での候補擁立の有無で野党候補の当選を左右する力を持っていることがあらためて示された。自民党と対抗するためには、野党として共産党との連携は――「共闘」とまではいかない場合もあるにせよ――必須だと言えよう。
こうしてみると、公明、共産という老舗の組織政党が、与野党の中でそれぞれ存在感を発揮する図式が、従来以上に浮き彫りになったのである。
以上の構図を踏まえたうえで、今回の衆院選で最大の出来事であった民進党の解体について考えてみたい。
民進党の希望の党への「合流」という「名を捨てて実をとる」決断をした前原誠司・民進党代表だったが、小池百合子・希望の党代表による「排除」のプロセスで、思わぬ結果を招くこととなった。すなわち、衆議院民進党は希望の党への合流組、無所属組、立憲民主党に分裂、参議院の民進党は残ったのである。これは、自民党の大勝と相まって、リベラルに期待してきた層に大きな落胆を生んだが、同時にいくつかの積極的な事態も生まれた。
第一に、民主党政権の「負の遺産」が過去のものへと清算されつつある。
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