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アレハンドロ・ホドロフスキー監督の映画『エンドレス・ポエトリー』拡大アレハンドロ・ホドロフスキー監督の映画『エンドレス・ポエトリー』で主人公の母親と恋人の詩人の2役を演ずるパメラ・フローレス=公式サイトより
11月28日(火) 午前10時から局で「報道特集」の定例会議。急遽、広島に行くことに。核廃絶のための「賢人会議」の取材だ。14時45分発のJAL便に飛び乗り、広島空港に16時20分着。そこから車を飛ばして、午後5時前には「賢人会議」会場のグランドプリンスホテル広島に着く。間に合った! ホテルは海に面したゴージャスな施設で、クリスマスムードに彩られ大勢の観光客が訪れていた。

 午後5時半から予定されている「賢人会議」の締めくくりの記者会見。ところが始まってみて驚いた。海外からの「賢人」たちの姿が全くないのだ。座長の白石隆日本貿易振興機構(JETRO)アジア経済研究所長と外務省の担当官3人の計4名のみ。ええっ? せっかくアメリカ、カナダ、ロシア、フランス、ニュージーランド、ドイツ、エジプトなどから15人の「賢人」が参加していたのに、記者会見に参加しないとは。会議はほとんど非公開だった。さっそく記者会見で「海外からの参加者がこの場にいないのはおかしいのでは?」と質問したら、座長の白石氏から「ご指摘されてみればそうですね」という趣旨の回答があって肩透かしを食らった。まいった。その後も共同通信の太田昌克編集委員らが突っ込んだ質問をしていたが、賢人会議の中身についての一般的な説明に終始していた印象だった。核兵器禁止条約に反対する日本政府の姿勢を検証するには、この「賢人会議」の議論の中身と日本の「橋渡し」的役割の実効性を考察することが必須の作業なのだが。

 会見が終わり、やれやれと言った気分で帰りの便のことを考えていた。すると何とホテルのロビーに、明らかに参加者と思われる「賢人」たちがくつろいでいるではないか。思い切って話しかけてみたら、何と「賢人」のひとり、アメリカのカーネギー国際平和財団のジョージ・パーコヴィッチ副会長だった。ホテルの従業員が親切で、ロビーの端のインタビューが可能な場所まで案内してくれた。日本の役割に期待していると。さらにもうひとり、彼はニュージーランドからの「賢人」ティム・コーリー氏。こちらにも話を聞いたが、彼らは本当はメディアに対してきちんと話をしたいのだ。それがなぜそうならないのだろうか。

 インタビュー後、空腹を紛らわすため30分でお好み焼きを胃に流し込んで空港へ。羽田に着くと午後11時を過ぎていた。人から薦められていたアレハンドロ・ホドロフスキー監督の映画『エンドレス・ポエトリー』をみる。すごいや。映画の快楽。映画の自由。イメージの乱舞。主人公(=ホドロフスキー自身の少年・青年時代)の母親役と恋人の詩人ステラ役の2役を演じるパメラ・フローレスという女優に圧倒された。特に酒場で主人公と初遭遇する際のステラのシーンが大好きだ。ステラが酒場に入ってくるや、いきなりビールをガブ飲みして豪快にゲップを吐き散らす。それだけで惚れこんでしまった。何だか若いころの詩人の白石かずこを思い出した。だから映画はパラダイスだ。「意味などない。生きるだけだ。生きろ! 生きろ!」「こころを開き、世界のむせび泣きを聞いている」。いいなあ、この映画。

日馬富士騒動に違和感

11月29日(水) 「賢人会議」が意見を聴取したNGOなどの市民グループのなかの川崎哲さんにインタビュー。ノーベル平和賞を受賞したICAN(「核兵器廃絶国際キャンペーン」)の日本の運営委員であり、ピースボートの共同代表でもある。川崎さんはきのうまで広島にいたが、いったん東京に戻って、それから今日から再び広島へと向かう超過密スケジュールだった。国際軍縮会議は川崎さんたちにとっては欠かせない場なのだ。それで新幹線に乗り込む直前の30分をあけていただき、午後1時半から新横浜でインタビューを受けていただいた。北朝鮮の核ミサイル危機が叫ばれている今だからこそ、核廃絶の声をあげなければならないのだと。「橋渡し」だなんて日本がまるで善意の第三者みたいで。当事者なのに。川崎氏の主張はきわめてクリアだった。

 午後2時過ぎから日馬富士関の引退記者会見。 ・・・続きを読む
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筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて――モスクワ特派員滞在日誌 1991-1994』(筑摩書房)、『二十三時的――NEWS23 diary 2000-2002』(スイッチ・パブリッシング)など。共著に『テレビはなぜおかしくなったのか<原発・慰安婦・生活保護・尖閣問題〉報道をめぐって>』(高文研)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店)など多数。

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