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[65]何やってんだか、の日々

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

松元ヒロ=28日、東京都新宿区の紀伊国屋ホール、小暮誠撮影 2016松元ヒロさん= 2016年、撮影・小暮誠
12月19日(火) 午前10時から『報道特集』の定例会議。今年最後の放送に向けての話。退位の決まった天皇の象徴としての生き方の原点をさぐるという企画。もう1本はカタル―ニアの独立問題。現地で日下部正樹キャスターが取材している。

 世の中、年末モードに入って雑用に追われる。その合間をぬって中野で開催されてきた橋口譲二さんの写真展へ。明日までの開催なのでギリギリ間に合った。初日に来た時は、開催場所の大学に爆破予告があったとかで、写真展が中止になっていた。肖像写真がまさに80~90年代の時代の記録になっていた。なぜか郷愁に誘われる。

 その後、思い立って池袋の東京芸術劇場で開かれる松元ヒロさんの独演ステージに向かう。チケット売り場で「当日券でなるべく前の方を」と注文したら、3列目に1席空きがあった。ラッキー。ハコ(劇場)によって、同じ演目でも立ち上がってくる中身、内容はずいぶん違うものだ。芸術劇場は初めてという松元さんも、はじめはちょっと戸惑っているようにも感じたが、何の、何の、本調子にすぐになっていた。出し物は『ワシントンDC訪問記』と、上原正一さんの自伝的青春小説『キジムナーkids』から。後者は内容が沖縄戦を舞台にした小説からの語りだったので、笑い飛ばすようなものではない。きわめてシリアス。これを聞くのは2回目だが、どんどん引き込まれていった。新作に期待が広がる。

 局に戻って、今日が締め切り日だった原稿があることを催促のメールで知って唖然。さっそく真夜中から原稿を書きだす。

12月20日(水) ほぼ徹夜。2時間ほど眠る。その後に『週刊現代』のコラム記事。午後、局で保阪正康さんへのインタビュー。本当は全編ノーカットで放送したいくらいの濃い内容だったが仕方がないのだ。『報道特集』では。夜、新宿の沖縄料理店で「一水会」の忘年会。2次会も新宿を漂流。

酒は何一つ解決しないというのに

12月21日(木) 朝9時からプールで泳ぐ。こんなに早くから泳ぐのは久しぶりだ。ところが、世の中にはそういう人々も結構いるのだ。それらの人たちはひたすら黙々と泳いでいる。もっとも、うるさく騒いで泳ぐ人はあんまりいないが。僕もゆっくりと30分以上泳いで、心身が少し楽になった。思い切って散髪に行く。いつもと違うところに行った。これが勝手が違って容赦なくバッサリと切られた。半分以上後悔している。

 局で原一男監督との対談原稿の校正。夜、A氏ら3人と今年10回目の忘年会。何やってんだか。酒は何一つ解決しないというのをわかっているのにさ。

12月22日(金) 午前11時からホテルニューオータニでW氏らと打ち合わせ。会場のティーラウンジには何だか人がやたら大勢いる。すごい数である。その理由がまもなくわかった。午前11時半スタートでランチのビュッフェ(バイキング)というのをやっていて、それをお目当てにグループで繰り出してきているのだ。そのビュッフェで一気に盛り上がっているのだった。こちらは仕事の打ち合わせで粛々とお茶していて、何だか場違いなところにいる感じになった。今どきのホテルの生き残り策は大変だと思う一方、それで何が悪いの?という気持ちも強い。

 見損なっていたホドロフスキーの『リアリティのダンス』をみる。『エンドレス・ポエトリー』はこの作品の完全な続編という位置づけだと再確認。映画の自由。想像力の自由。退廃の自由。夕刻から神保町でメディア仲間の集い。再び局に戻って今年の洋画のヒット作だという『ゲット・アウト』をみる。何だかなあ。後味が悪い作品だ。けれどもこれを娯楽作品にしてしまうアメリカのパワーというか。

 21時からCSニュースバード「ニュースの視点」で『今年下半期の映画を振り返る』の収録。日本一の映画通だと尊敬している宮内鎭雄さんとご一緒する。宮内さんは去年(2016年)は年間600本、映画をみたと豪語していたが、何と今年は670本だと! すげえや。今年下半期の宮内さんと僕で選んだそれぞれの作品は、以下の通り。こんな選出は他では絶対にやらないよなあ。

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