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財務省の文書「改ざんの疑い」を報じた2018年3月2日付の朝日新聞朝刊拡大財務省の森友文書改ざん問題の第一報=2018年3月2日付「朝日新聞」朝刊 撮影・筆者

2月27日(火) 久しぶりに朝、がっつりと泳ぐ。体重が1.65キロ減。「沖縄タイムス」の新ワジーワジー通信の原稿を書く。

 たまたまCSのTBSニュースバードをみていたらTBC(東北放送)の大槻記者が、石巻市立大川小学校が閉校になったという小特集のストーリーを伝えていた。胸に迫ってくるストーリーだった。震災からまもなくの大川小学校を取材した時にみた泥に埋まった教室の光景が目に焼き付いている。そして学校近くの土手に並べられていたたくさんのランドセル……大川小学校の悲劇は長くしっかりと伝えられなければならない。生き残った少年の、その後の成長ぶりに救われる思いがした。ところで、これは全国ニュースで取り上げられたのだろうか。

 午後6時前の東京駅発の常磐線で福島県いわき市へと向かう。午後8時すぎにいわき着。Kディレクターと打ち合わせ。いわき市は廃炉ビジネスで景気がいいという噂を耳にするが、本当にそうなのだろうか。

福島第一原発3号機の建屋に入る

2月28日(水) Sカメラマン、社会部K記者と合流して、福島第一原発3号機の取材へと向かう。福島第一原発の3号機の建屋上部に完成した燃料取り出し用カバー(ドーム型の屋根状の遮蔽構造物)の内部に入る。建屋の5階部分にあたる。地上から30メートルほどの高さ。エレベーターで屋上カバー内部に入る。放射線量が非常に高い場所なので長時間とどまることができない。将来の燃料棒取り出し作業も無人の遠隔操作で行われる予定の場所だ。燃料プールを間近に見ることが可能だが非常に線量が高く、あっというまに500マイクロシーベルト/時を超えてしまった。会社から持参した線量計が鳴りっぱなしになる。東京電力としては、手がつけられないほど高い放射線量だった建屋上部がここまでになったことをアピールしたいのだろうことは重々承知の上での取材だ。確かにここまで来るには相当の苦労があったに違いない。僕らの装備も息が苦しくなるほどの重装備になる。

 ただ、これは廃炉作業のうちの入り口の入り口段階。無傷の燃料棒の取り出しの行程に至る準備なのであって、3号機の原子炉で溶けだした核燃料デブリは、どれくらいの量がどういう状態にあるかはまだごく一部しか把握されていない。そして廃炉作業の最も過酷な行程こそがその核燃料デブリ取り出しなのだ。緊張する時間が持続してとても疲れた。僕自身は福島第一原発構内に入るのはこれで7回目だが、この日の放射線量が最も高かったのではないか。装備を脱ぐだけでたくさんの段階を踏まなければならない。

 現場を離れたのがもう午後4時半を過ぎていた。その日の夜に前々から約束していた会合があって、今のままでは間に合わない。それで運転手さんにお願いして郡山まで移動してもらい、そこから新幹線で東京に戻ることにした。ところが郡山市内に入ったところで道路が大渋滞していて、新幹線にあと1分という時差で乗り遅れてしまった。悔しい、というか自分の判断のダメさを思い知る。もっと初めから郡山で決めていれば迂回する必要はなかったのだから。

 結局、東京駅には午後9時前に到着。約束の時間に1時間強遅れた。申し訳なかった。新幹線内でDVDで持参したドキュメンタリー映画『ラジオ・コバニ』をみる。まいった。シリア・クルドの強靭な精神と、ラジオというメディアがもつ力。YPJ (クルド女性防衛部隊)の女性兵士たちの実際の戦闘シーンをみて、いろいろなことを考えさせられた。旧知との会合は盛り上がったが愚痴っぽい酒はダメだ。その流れで新宿のEへ。

調査報道の矢に興奮

3月1日(木) アルコールを抜くためもあって朝から泳ぐ。何やってんだか。その後、知人から強く奨められていたドキュメンタリー映画『私はあなたの二グロではない』を渋谷でみる。ジェイムズ・ボールドウィンによる、アメリカ合衆国という国の成り立ちに対する根源的な異議申し立ての映画である。二グロをアフリカ系アメリカ人と言い替えて済ませたり、「人種なんか関係ないよ」とばかり安直な融和を説くエセ・ヒューマニズムを敢然として拒否する。こういう映画があるからこそアメリカでは、『Detroit』(デトロイト)や『Get Out』(ゲット・アウト)『Do the right thing』(ドゥ・ザ・ライト・シング)という映画などが成り立ちうるのだろうか。リーフレットに掲載されていた越智道雄氏の文章が実に深く、蒙を啓かれた。トランプ登場の必然とボールドウィンの異議申し立ての関係をわかりやすく解題しているのだ。トランプの暴言が「市場調査」だという指摘は実に鋭いと思う。

3月2日(金) 朝日新聞が朝刊一面トップ記事で、「森友文書 書き換えの疑い」というスクープ報道。縦見出しに「財務省、問題発覚後か」。この記事を読む限り、 ・・・続きを読む
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筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて――モスクワ特派員滞在日誌 1991-1994』(筑摩書房)、『二十三時的――NEWS23 diary 2000-2002』(スイッチ・パブリッシング)など。共著に『テレビはなぜおかしくなったのか<原発・慰安婦・生活保護・尖閣問題〉報道をめぐって>』(高文研)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店)など多数。

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