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仏大統領夫人はシモーヌ・ド・ボーヴァワール?

マクロン大統領と「並んで歩く」ブリジット夫人は「ファースト・レディー」のお手本

山口 昌子 在フランス・ジャーナリスト

 エマニュエル・マクロンが仏大統領に就任して5月で1年。40歳の若さにまかせ、外国訪問も多く、その超人的な活動ぶりが注目を集めているが、支持率のほうは1年で約20ポイントも減少した。一方、24歳年上のブリジット夫人の方は人気上昇中だ。フランスを代表する女性としてシモーヌ・ド・ボーヴァワールと並んで引用されるなど、明暗をわけた。

激しい批判をあびたメーデー

マクロン仏大統領とブリジッド夫人=2018年4月27日、パリ・エリゼ宮(AP)拡大マクロン仏大統領とブリジッド夫人=2018年4月27日、パリ・エリゼ宮(AP)

 マクロン大統領夫妻は、5月10日(木)の公休日「キリスト昇天の大祝日」からの大型連休を南仏ブレガンソンの大統領府の別館で初めて過ごし、久しぶりの休暇をサイクリングなどで英気を養った。

 大統領は5月1日のメーデーの日は、国有鉄道(SNCF)の民営化反対の長期ストや公務員削減反対などの大規模デモ(内務省発表で14万5千人、労組発表で21万)でフランス全土が揺れるなか、オーストラリアを公式訪問中で、野党・極左政党「服従しないフランス」のメランション党首らから激しい批判を浴びた。

 デモには「ブラック・ブロック」と呼ばれる黒ずくめの服装に覆面の「破壊家」が1200人も参加し、マクドナルドなどの店舗が襲撃されたほか、警官隊と激しく衝突し、300人近くが拘留された。

精力的に外国訪問、支持率はダウン

 「趣味は海外旅行」と揶揄(やゆ)されるほど、マクロン大統領の外国訪問は多い。この1年で28カ国、41回。ドイツは6回も訪問した。

 ちなみに5年の任期中にオランド前大統領は221回、サルコジ元大統領の167回、外国を訪れている。このペースを維持すると、5年間に2人の前任者を抜いて、新記録樹立する公算は大きい。外国だけでなく、国内の地方訪問も多く、首都パリに滞在したのは132日と1年の3分の1程度だ。

 ただ、支持率は、失業率を軽減を目指した、従業員側に厳しい新労働法をはじめ公務員の大幅削減、また税金問題などでの荒療治がたたり、就任当初の約60%が40%前後まで大きく減らした。

夫人の人気は急上昇中

 大統領の人気低迷とは対照的に、当初は「24歳年上」ばかりが話題になったブリジット夫人の方は、人気上昇中だ。

 「フランスいち美しい」と、シャネルの主任デザイナー、カール・ラガフェルドが絶賛する脚線美を惜しみなく見せるミニ・スカート姿は、そこはフランスのこと、「年がいもなく」などとセクハラめいたヤボな批判はない。大統領就任式に着たブルーのミリタリー調のスーツをはじめ、モードにうるさいパリっ子をうならせている。

 トランプ米大統領の国賓第1号として夫妻で訪米した時は、ピンクの上着や白のスーツ姿などで米国民を魅了。年齢を忘れさせた。

 夫人のお好みはルイ・ヴィトン製のスポーティーなスーツ。バックも当然ながらルイ・ヴィトンだ。最近は大統領夫人らしいシックなスーツ姿もありで、女性雑誌やゴシップ雑誌などには毎週、夫人が登場し、大半が好意的な見方だ。

 夫婦のメディア対策は、フランス中のパパラッチを掌握している雑誌専門通信社の女性社長ミシェル・マルシャンが担当している。オランドの密会情報も早々に握っていたといわれ、敵に回したらコワイ人物だ。

並んで歩く、されど立場もわきまえる

 「夫の後を歩くのではなく、並んで歩く」と夫婦の立場を定義した夫人だが、その言葉通り、「カップルというより、2人1組のチーム」「ボクサーのスパーリング・パートナー」(エリゼ宮スタッフ)というのが、2人に近くで日常的に接触している人たちの感想だ。

 午前4時45分起床で、「睡眠時間3時間」といわれたナポレオン並みのマクロン大統領の日程や健康管理は夫人の役割だ。といっても、公務や政治には口を出さず、出しゃばらない。オランド前大統領の前同居人の週刊誌「パリ・マッチ」の記者ヴァレリー・トリルヴェレールのように、人事に口を出して側近たちに嫌われることもない。

 あくまでも、「選ばれたのは私ではなく、彼」と立場をわきまえている。だから、彼女を利用して大統領に頼み事をしようなんて、不埒(ふらち)なことを考える者もいない。まさに「ファースト・レディー」のお手本だ。

 マルレーヌ・シアパ男女平等担当相は3月の訪米の際、ニューヨークの仏領事館でのレセプションでフランスの女性のシンボルは誰かを尋ねられ、「シモーヌ・ド・ボヴォアールとブリジット・マクロン」と即答した。ボヴォアールは「第二の性」の著者として、女性解放を世界に先駆けて説いた哲学者、作家であり、サルトルの伴侶でもある。 ・・・続きを読む
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筆者

山口 昌子

山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在フランス・ジャーナリスト

産経新聞パリ支局長を1990年から2011年までつとめる。著書に『ドゴールのいるフランス』(河出書房新社)、『フランス人の不思議な頭の中』(KADOKAWA)、『原発大国フランスからの警告』(ワニブックスPLUS新書)、『フランス流テロとの戦い方』(ワニブックスPLUS新書)、『ココ・シャネルの真実』(講談社+α新書)、『パリの福澤諭吉』(中央公論新社)など。ボーン・上田記念国際記者賞、レジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを受賞。

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