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[152]あきれたもんだぜ、林文子横浜市長

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

8月20日(火) 午前中、「報道特集」の定例会議。今週は横浜のカジノ(統合型リゾート・IR)誘致を取材することになったので、長年にわたって横浜を取材している知己に横浜市政の現況を聞いてみた。要するに、2年前の横浜市長選挙の時の林文子市長のカジノ誘致「白紙化」は、争点外しのための露骨な選挙対策に過ぎず、彼女は官邸=菅官房長官の「いいなり」で、カジノ誘致にはもともと積極派だったのだという。市長選で選挙カーの前に、三原じゅん子(自民)、牧山弘恵(立憲民主)、林候補、佐々木さやか(公明)の4人の女性が勢ぞろいした光景が全てを語っているとその時の4ショット写真を送ってきてくれた。神奈川県の黒岩知事もカジノに前向きだし「救いがない」という。市議会議員も与党多数で、立憲はこの問題では本当にダメだと。半ばあきらめ気味に語っていた。

 18時半からワシントンDC在住のIさんと打ち合わせ。アメリカの大統領選挙は、このままではトランプの再選が確実という。理由は民主党があまりにも不甲斐ない状態であり続けているからだと。いつもながらの慧眼。

8月21日(水) 朝、早起きしてプールへ。このところ運動不足で体がなまっている。

田島道治が昭和天皇とのやりとりを記した「拝謁(はいえつ)記」など。何冊ものノートや手帳にびっしりと書き込まれている=2019年8月19日午前、東京都渋谷区のNHK放送センター田島道治宮内庁長官が昭和天皇とのやりとりを記した「拝謁記」
 見逃していたNHKスペシャル『昭和天皇は何を語ったのか~初公開・秘録「拝謁記」~』をみる。田島道治初代宮内庁長官の昭和天皇拝謁の際の会話記録である。まいったなあ。丁寧に掘ればいくらでも番組が作れるほどエピソードに溢れている予感もするが、やはり中心的な論点は、天皇の戦争責任なのだろう。その点でいえば、昭和天皇は「道義的な責任」を自身で感じてはいたらしいが(別の史料では、マッカーサーに対して、直接、間接的に、命乞いをしていた可能性もある)、本質的な意味での「戦争責任」については驚くほど無自覚だった姿が浮き彫りになっている。どこか「他人事」のような感覚が戦後になっても残っていたようだ。

 この番組で僕が注目したのは、マッカーサー記念館に保管されていた田島からマッカーサーにあてた1948年11月の書簡だ。「日本の国家再建のために最善を尽くす所存です」。番組ではほんの短くしか紹介されていなかったが、これは明らかに昭和天皇からマッカーサーへの意思表示である。つまり「退位はない」という意思だ。資料入手にはNHKの社会部ががんばったという話を聞いた。政治部につぶされないように、秘密裏に作業を進めていたらしい。解読解説に一橋大学・吉田裕名誉教授を配したあたりに、番組担当者のギリギリの抵抗のようなものを感じたが、どうなのだろう。

横浜市長が持っていた書類を……

定例会見でIR誘致を発表する林文子市長=2019年8月22日午後2時32分、横浜市役所定例会見でカジノを含む統合型リゾート(IR)誘致を発表する林文子市長=2019年8月22日横浜市役所

8月22日(木) 横浜市のカジノ誘致表明の取材。関内駅前=市役所前の市民の抗議集会に向かうが、高齢者が多い。人数もそこそこ。立憲民主党の真山勇一参議院議員が駆けつけていた。14時からの林文子横浜市長の定例記者会見。TBSの横浜駐在さんによると、こんなに多くのカメラ、記者たちが押しかけた定例会見は最近みたことがないと。

 会見は、市が作成したパワーポイントを使って早口で「取説」を読んでいるような感じで始まった。幹事社の2つの質問にも、早口で流してしまいたいという対応が見え見えだった。それで最初に挙手して質問した。2年前の「白紙」を撤回したのは、有権者にたいする「裏切り」ととらえる人がいるだろう。今の説明で納得すると思うか? 住民投票は行う? 市長は「裏切ったという気持ちはないですよ」「お言葉ですが、白紙というのは、やらないとは言っていないんですから」と。会見は1時間半ほどで、「あとの予定があるので」ということで打ち切られた。列席していた横浜市の幹部らの表情を僕はじっと観察していた。幹部連は市長を「お守りする」ヒラメのような表情だった、と言えば言い過ぎだろうか。ひとり視線を決してあげようとしない人がいたけれど。

 会見が終わって会見室の外に出てみて驚いた。大勢の市民たちが、市長に抗議状を渡したいと市長室前に押しかけてきているではないか。Kディレクターが来て「Mカメラマンが、市長室に帰ってきた時に、市長が持っていた書類を

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