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野党再編の軸は「消費税減税」 旧民主党の再結集なら滅びの道

衆議院の任期満了まで1年あまり。ようやく動き始めた野党再編だが……

田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授

 現在の衆院議員の任期満了は来年の10月。いつ解散・総選挙があってもおかしくない時期に入っているが、今回はいつもとは事情が違う。新型コロナウイルスの感染拡大というかつてない状況、それとも関連する東京五輪の行方が不透明で、その動向に首相の解散権が強い制約を受けているからだ。

 おまけに安倍晋三内閣の支持率は、コロナ対策での不手際もあり、このところ低迷気味だ。もちろん、追い込まれ解散や自暴自棄解散もないとはいえないが、安倍首相にすれば、東京五輪開催前に自ら政権を崩壊させるようなことは、よほどのことない限りやらないであろう。

ようやく始まった野党結集の動き

 一方、目を野党に転じると、安倍内閣への支持率が下がり、不支持率が上がっても、野党の支持率がその分、上昇しているわけではない。国民、有権者から見ると、「ほかに政権を託せる人や党が存在しない」というのが現状だろう。こうした傾向はここ数年、世論の基調となっている。

 とはいえ、これから1年ほどの間に、衆議院の解散・総選挙は必ずおこなわれる。野党としても、手をこまねいているままですむわけもない。そんななか、ようやく懸案だった野党結集の動きが始まった。

 7月15日、野党第一党の立憲民主党は国民民主党との幹事長会談で、枝野幸男代表の両党合流構想を提示した。「両党がそれぞれ解散し、新設合併方式で新党を結成する」ことを申し入れたのだ。

 これまで立憲民主党は、自らが存続政党となって国民民主党を「吸収」する意向であったから、それなりの前進には違いない。だが、新党名は「立憲民主党」を引き継ぐというから、なんともわかりにくい。

会談前、撮影に応じる立憲民主党の福山哲郎幹事長(左)と国民民主党の平野博文幹事長=2020年7月15日、国会

野党第一党としての成果に乏しい立憲民主党

 振り返れば、立憲民主党は2017年秋の衆院解散・総選挙の際、希望の党をめぐる騒動で“漂流”する人たちを収容した救命ボートだった。あの局面で果断に新党を立ち上げ、有為の人材を救出した“枝野立憲”の功績は小さくない。

 だが、それから3年間、野党第一党の「特等席」に座っていたにもかかわらず、その成果は極めて乏しい。最近の毎日新聞の世論調査でも、政党支持率は9%で維新の10%にも及ばない。3年経っても支持率が一桁では、野党第一党の資格があるとは思えない。もはや役割を終えたと言わざるを得ない状況である。

 枝野代表の上記の提案を受けた国民民主党は17日、党内で議論をしたものの、新党名をめぐって異論が多く、枝野案に同調するには至らなかった。ただ、立憲民主党との合流については、党内の反対意見は1割程度だったといわれる。

国民民主党の両院議員懇談会であいさつする玉木雄一郎代表(中央)=2020年7月17日、東京都千代田区、

勢いのない立憲が主導権をとろうとしても……

 立憲民主党は結党当時の勢いから、当初は単独政権を目指してきた。それが、この3年間で困難になったことから、国民民主党を吸収合併する方向に戦略を転換したのだろうが、勢いを失った今の立憲に国民民主が吸収されることはありえない。そこで、今回の「新設合併方式」の提案になったのだろうが、実質的には吸収を求めている印象がぬぐえない。

 そもそもこの種の政党の合流案件は、一党が突出した勢いで走っていれば、ことさら誘わなくても、他党のほうが合流してくるものだ。だが、現状はそうではない。勢いのない立憲が主導権を握ろうとすればするほど、合流そのものが実現しなくなる。

 党名の「立憲」にこだわることがいけないとは言うつもりはないが、この言葉があるから、立憲民主党を支持しているという人が多いとは、私には思えない。

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