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科学技術を法の文脈でとらえる難しさ--「人体の不思議展」裁判は新時代を開くか

中村多美子

中村多美子 弁護士(家族法、「科学と法」)

遺体に対する敬虔な感情やそれを尊重しようとする秩序は、様々な時代的・文化的・宗教的背景にあっても、社会がそれなりに共有してきたものだ。現在、死体の遺棄や損壊は刑法で禁止されているが、学術研究目的など一定の理由がある場合について特別法でその例外が定められている。このように、法は、ある種の「常識」(社会的な思いこみ、と言ってもいい。)をベースにしている。
2008年に松山市で開かれた「人体の不思議展」

 他方で、科学は、人々が持っている「常識」を疑い、「常識」や「直感」ではなかなか気づけない科学的事実を明らかにする方法論である。技術もまた、それまでの常識を越える事柄を実現する。「人体の不思議展」の公式ホームページでは、

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