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誰の声を聴くか――政権交代時代の科技基本計画

小林傳司

小林傳司 小林傳司(大阪大学コミュニケーションデザイン・センター教授)

 第4期の科学技術基本計画原案が総合科学技術会議で取りまとめられた。閣議決定を経て、今年の4月から正式に基本計画として動き出す。総合科学技術会議の答申の名称は「科学技術に関する基本政策について」(以下、「第四期案」と記す)であり、総合科学技術会議議長の菅直人から内閣総理大臣菅直人への答申となる。少し面白い構造である。
総合科学技術会議に出席した菅直人首相。スクリーンには科学技術基本計画の文字=2010年12月、首相官邸で、飯塚悟撮影

 周知のとおり、科学技術基本計画は1995年施行の科学技術基本法にもとづき、今後10年程度を見通した5年間の科学技術政策の計画だ。現在が第3期の最終年度である。

 ところで、政策とは何か。政府の政策の場合、あらっぽく言えば、どんな事柄に、どの程度の税金を使うかを決めることであろう。では、「事柄」とそのための「予算」を「どうやって」決めるのか。予算を支出すべき項目(事柄)の決め方と、予算の額の決め方が問題となろう。ここで、「誰が」決めるかは一応脇に置いておこう。科学技術政策の場合の立案プロセスとしては、各種審議会の検討を官僚が取りまとめつつ総合科学技術会議で答申を出し、それを受けて内閣が予算案をつくり、最終的に国会で決定する。だから、形式的には国会が決めると言ってよい。問題はプロセスである。

 煎じつめれば、「どうやって」決めるかという問題は、誰の声を聞いて決めるかの問題である。今回の第4期案はこの点で興味深い問題を提起している。

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