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 1号機と3号機が水素爆発を起こした福島第1原子力発電所で、2号機も圧力抑制室が壊れた。定期点検中で運転していなかった4号機でも爆発と火災が発生。自然鎮火したものの、15日午前中から大気中に漏れ出る放射性物質が一気に増え、日本各地で通常より高い放射線量を観測した。原発から離れた地点での放射線量は健康被害が心配されるほどではないが、原発敷地内では一時、健康被害を起こしうる放射能量が観測された。いったい原発で何が起きているのか。判明している状況をわかりやすくまとめておく。

 福島第1原発には原子炉が6基ある。3月11日に大地震が起きたとき、1~3号機は稼働中、4~6号機は定期点検中で核燃料は原子炉から抜かれていた。揺れを関知するや稼働中の炉にはすぐに制御棒が入り、核分裂反応は止められた。その後、水を循環させて原子炉を冷やすのが停止手順だが、地震で停電となって冷却システムを動かせなかった。停電に備えて置いてある非常用ディーゼル発電機は、大津波をかぶったためにすべて使えない。「電源喪失」という非常事態になった。

 核分裂反応が止まっても、核分裂生成物がほかの元素に変わる現象(崩壊)が自然に続き、熱が出る。この「崩壊熱」をとる作業が原子炉停止には欠かせない。残っている機能を使ったり、送り込まれた電源車を使ったり、冷却機能を維持する努力が続いた。

 しかし、十分な冷却ができない。原子炉の中では、核燃料が水にひたされて入っている。核分裂反応で水を沸騰させ、出てきた水蒸気でタービンを回す、というのが原発の仕組みだ。タービンを回した水蒸気は冷やされて水となり、原子炉の中に戻ってくる。核分裂が止まっても熱が出続けると、水蒸気が増える。冷やして水にするところがうまく働かなければ、原子炉内の圧力は高くなる。圧力計は高い数値を示し、一方で水位は下がって燃料棒が水から頭を出す状態になった。

拡大鉄骨がむき出しになった福島第一原発1号機=東京電力提供

 こうなると、燃料を覆っている材料のジルコニウムが高温水蒸気と反応し、水素を出し始める。水素はもっとも軽い気体で、弁のわずかな隙間などから外に出ていきやすい。

 12日午後3時半ごろ、1号機の建物が爆発、上部が吹っ飛んだ。建物内にたまった水素が空気中の酸素と反応して爆発したとみられている。このとき、敷地内では1015マイクロシーベルト毎時の放射線量を観測。だが、短時間で569→270.5と下がった。

 1号機では午後8時20分から海水の注入を開始。「1時間に少なくとも20トン」注入するが、水位がなかなかあがらない状態が続いた。

 13日未明、今度は3号機で冷却機能が喪失する。水位はどんどん下がり、燃料棒の4分の3が水上に出た。圧力を下げるために蒸気を外に出す「ベント」を10時過ぎに始める。蒸気には少量の放射性物質が含まれるが、大惨事を防ぐためにはやむを得ないと判断された。蒸気を出し始めると、水位は順調に上がり始めたように見えたが、昼過ぎに再び低下。海水注入も開始したが、なかなか水位が上がらず、翌14日午前11時過ぎ、1号機よりも大きな水素爆発が起きた。1号機も3号機も壊れたのは建物だけで、原子炉格納容器は無事だった。

 14日午後1時25分、ついに2号機も冷却機能喪失した。水位が下がり始め、蒸気を抜く「ベント」を始めた。すぐに圧力が下がったが、なぜか水位も一気に下がり、こちらも海水注入を開始する。夜になって、蒸気を出すために開く弁を2カ所に増やした。深夜、それがなぜか二つとも閉まってしまう。15日午前1時半ごろ、水位計が下に振り切れ、燃料棒がすべて水から出た状態になった。午前6時10分、爆発が起こり、圧力抑制室の圧力が3気圧から1気圧に下がった。圧力抑制室が壊れて、中の蒸気が抜けたと見られる。その後、水位は燃料棒の下から3割の高さまで上がる一方、格納容器の方は5気圧程度に保たれた。

 15日午前6時14分、定期検査中だった4号機付近で爆発音が聞こえた。9時38分、4号機4階付近で火事が見つかり、11時には自然鎮火した。壁には8メートル四方の穴が二つあいた。なぜ、止まっていた原子炉から火事が出たのかはよくわからないが、通常は40度に保つ燃料保管プールの温度が14日夕方には84度まで高まっていた。その結果、水素が発生した可能性はあると考えられている。

 原発敷地内での放射能量は、15日午前から急に高くなった。一番高い数値は、10時に4号機の山側で観測された400ミリシーベルト毎時。通常使う「マイクロシーベルト毎時」の単位を使うと、40万という大きな値になる。これを1時間あびると、白血病のリスクが高まるなど間違いなく健康被害を受ける。このため、作業員は5階のプールの様子を確かめるのを断念した。同じ時刻に4号機のそばでは100ミリシーベルト毎時、2号機と3号機の間では20ミリシーベルト毎時を記録している。

 敷地正門前では、午前7時50分1941マイクロシーベルト毎時、8時31分8217マイクロシーベルト毎時、9時11930マイクロシーベルト毎時(約12ミリシーベルト毎時)、10時15分8837マイクロシーベルト毎時と推移した。

 茨城県では10時20分に1.8マイクロシーベルト毎時を観測。放射性物質が広がっていることが確認された。

 午前11時、菅首相が30キロ圏内の住民に屋内待避を指示。午後になると、敷地正門前の放射線量は12時半1362マイクロシーベルト毎時、3時半596マイクロシーベルトと下がってきた。

 福島以外の各都道府県で午後4時までに観測された最も高い値は茨城県の5.6マイクロシーベルト毎時。埼玉県は1.2マイクロシーベルト毎時、東京都は0.8マイクロシーベルト毎時が最高値だった。

 


筆者

高橋真理子

高橋真理子(たかはし・まりこ) 朝日新聞 科学コーディネーター

朝日新聞 科学コーディネーター。1979年朝日新聞入社、「科学朝日」編集部員や論説委員(科学技術、医療担当)、科学部次長、科学エディター(部長)などを務める。著書に『重力波 発見!』『最新 子宮頸がん予防――ワクチンと検診の正しい受け方』、共著書に『村山さん、宇宙はどこまでわかったんですか?』『独創技術たちの苦闘』『生かされなかった教訓-巨大地震が原発を襲った』など、訳書に『ノーベル賞を獲った男』(共訳)、『量子力学の基本原理 なぜ常識と相容れないのか』。

 

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