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O111食中毒事件と「目に見えないもの」

武村政春

武村政春 東京理科大学准教授(生物教育学・分子生物学)

集団食中毒やウイルス感染症の広がりがニュースなどで報じられると、人々は改めて、身の回りに存在する目に見えない「病原体」の存在を実感するものである。ここ数年は、インフルエンザウイルスの爆発的大流行、宮崎県における口蹄疫ウイルスによる家畜被害など、そうしたことが社会的話題になることが多いように感じる。

 そんな中、生肉に潜んでいた腸管出血性大腸菌と呼ばれる細菌が、幼い子ども2人を含む尊い命を奪ったというニュースは、同じ年頃の子どもを持つ者として胸が潰れるものであった。ウイルスよりもさらに身近な存在である細菌が、私たちヒトに対し、ある者は友好的であるにもかかわらず、ある者は極めて「敵対的」にはたらくという御し難い「隣人」であることを、私たちに思い知らされることともなった。

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