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被災ノムコウにある希望―福島の高校生から学んだこと

須藤靖

須藤靖 東京大学教授(宇宙物理学)

 福島高校では、10人余りの生徒と一緒にいろいろと議論することができた。そこでは、今回の原発事故を受けて「科学の発展が予想もしない危険を生み出してしまう可能性にどう向き合うべきか」、「果たして科学を進めることは善なのか」、「高度な科学を理解することが困難な一般の国民にとって、国の科学・技術政策に対してどのように主体的にかかわることが可能なのか」などなど、矢継ぎ早に問いかけられた。むろん私には一緒に考え議論するのが精一杯で、明確な「正解」を提供することなどできなかった。

 正直なところ、理学系の科学者の多くが、あえてそのような問題に向き合うことを避けてきたことを認めざるを得ない。大学の理学部物理学科において、原子力発電、さらには放射能に関する講義をしてきたところはほとんどなかったのではあるまいか。

 私自身、社会や政治とは直接的な接点をもたない天文学を研究していることを口実として、そのような問題を直視しない自分を正当化してきたことが否めない。しかし、今やそのような弁解は認められない時代になった。すでに福島県の高校生はそのような現実に直面せざるをえない現状を明確に自覚している。

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