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神岡発!重力波は人の「空間観」を変える〈WEBRONZA地底から科学カフェ2〉

梶田隆章×尾関章

梶田隆章×尾関章

 アインシュタインが相対論で予言した未知の波――それが時空のさざ波とも呼ばれる重力波だ。東京大学宇宙線研究所は岐阜・富山県境の神岡鉱山地下で、これを捕まえようとしている。空間そのもののかすかな揺らぎを感じとるために数年かけて造られるのは、レーザー光を往復させる1辺3kmのL字形パイプだ。神岡の地底でその原型機を見た後、科学者と科学記者が重力波を捕まえる意義を話し合う。

《対談》梶田隆章さん(東京大学宇宙線研究所長)/尾関章(朝日新聞編集委員)《資料・撮影協力》大橋正健さん、三代木伸二さん、内山隆さん、宮川治さん(いずれも宇宙線研)=この記事に添えた実験室内の写真は、三代木さん、内山さんが撮影

☆この採録では、当日の対談をできる限り忠実に再現しましたが、不要な箇所、わかりにくい箇所などを削ったり、正確を期すために一部言葉を補ったりしています。本文に添えた図の一部は、当日用いたものとは別のものになっています。

尾関 《席に戻って》はい。ということで、3km×3kmとなれば、もっと迫力があるものになると思いますが、今まさに、その原型機CLIO(100m×100m)の心臓部分をのぞかせていただいたということになるかと思います。いろんな、先ほどからコメントをいただいているんですが、私が驚くのは、結構実験のことに関心がおありになるんですね。で、それを、梶田さんにお話を伺っていきたいなと思っています。まず、埼玉県の25歳の女性の方から、とても楽しく拝見させていただいていますというお言葉の後、ご質問として、この実験を重ねていくうちに、パイプがずれたりすることがないんでしょうか。それが、誤差を呼んだりしませんかという。

梶田 はい、分かりました。えーとですね、これは、まあ、今日見ていただいているCLIOの装置でも、大体パイプの直径が30cm、40cm、そのくらいあります。で、レーザーのビームは、まあ、せいぜい数cm以下なので、たとえちょっとくらいパイプが動いたとしてもですね、実験の感度には影響がないようにできています。

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