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【科学朝日】学校とデジタル (collaborate with 朝日ニュースター、11月24日放送)

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 朝日グループのジャーナリズムTV「朝日ニュースター」は、通信衛星などを利用して24時間放送しているテレビチャンネルで、ケーブルテレビ局やスカパー!などを通じて有料視聴することができます。4月から始まった新番組「科学朝日」は、高橋真理子・朝日新聞編集委員がレギュラー出演する科学トーク番組です。WEBRONZAでは、番組内容をスペシャル記事としてテキスト化してお届けします。

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ゲスト 国立情報学研究所情報社会創刊研究系教授 新井紀子さん

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高橋:こんばんは。科学の最先端にひたる「科学朝日」。案内役の高橋真理子です。本日取り上げるテーマは、「学校とデジタル」です。小中学校をはじめとする教育現場で、最新のデジタル機器を使おうという動きが盛んになっています。例えば、デジタル教科書やデジタル黒板といったものが出てきて、少しずつですが学校で使われはじめています。インターネットの爆発的な普及、次々と現れる新しい情報機器、世の中全体がデジタル化に向かって突き進んでいる中、学校も変わらざるを得ないのでしょう。一方で、教育にデジタルを大幅に取り込むことが子どもたちにどんな影響を及ぼすのか、一抹の不安も覚えます。教育のあり方は、わたしたちの誰もが関心を持つことですが、学校の中のことは、一般人にはなかなか分からないのも現実です。本日は、学校とデジタルについて、現状を多角的に捉え、これからのあるべき姿を探っていきたいと思います。ゲストは、国立情報学研究所情報社会相関研究系教授の新井紀子さんです。新井さんよろしくお願いいたします。

新井:こんばんは。どうぞよろしくお願いいたします。

高橋:新井さんはですね、一橋大学の法学部のご卒業なんですね。そのあとに、アメリカのイリノイ大学で数学を勉強された、非常に珍しい経歴ですよね。

新井:はい。そうかもしれませんね。

高橋:なんで法学部から数学を勉強されようと思われたんですか?

新井:実はわたしは中高まで算数、数学がすごく苦手で、大学入学した後は絶対に数学はすまいと思っていたのです。ところが、大学に入ってから習った数学が、思いのほか楽しかった。それで、「こんなに楽しいならやってみようかな」っていうふうに思ったのがきっかけなんですね。

高橋:でも全く納得できませんね、その説明は。どうして大学の教養学部の数学が楽しく・・。

新井:高校までの数学は得意だったけれども、大学の数学が嫌になったっていう方は少なくないんですけど、私はたまたま逆だったんですね。今の所属に来ましてからは、フィールドが情報にシフトしました。というわけで、2回ほど大きくフィールドが変わってます。

高橋:情報が専門っていうのは、これまた分かりにくくて、なかなかイメージが湧きにくいんですよね。数学者っていうのはある種のイメージがあるんですけども。で、新井先生の最も有名なご業績と言うと、ネットコモンズという、学校現場で非常に使いやすい情報発信機能を持ったソフトウェアですかね、を作られたということがあるんですが、これは一言で言うと、どういうものなんでしょうか。

新井:まず少し経緯をお話しします。ネットコモンズというソフトウェアの開発を始めたのは2001年でした。その頃わたしは、ネット上に中高校生を集めて、発展的な学びを実現するような自由な学びの場を作りたい、それを中高校生に無償で開放したいっていう夢を持っていました。ウェブならばそういう夢も実現可能かもしれないということで、システムを1から開発したんです。そして、その夢に賛同してくださった先生方たちとウェブ上に「e-教室」という学び場を作りました。「e-教室」には、数学を学ぶグループや、経済について学ぶグループができたりして、それぞれの学びは、今もロングセラーを続けている本になったりしました。e-教室の活動が一段落したとき、開発したシステムをどうしようかということになりました。このシステムはきっと学校さんに提供したらいろんな使い道ができるんじゃないかということになり、学校の先生方に最初のユーザーになっていただいて使っていただきました。こういう機能が欲しい、ああいう機能が欲しいというようなフィードバックをいただき、3年くらい研究した後、2005年に教育機関中心に無償で提供し始めたんです。それがネットコモンズというソフトウェアなんですね。今は全国で3,000を超えるくらいの教育機関にご利用いただいてます。

高橋:日本の親というのは、ファミコンが登場した頃からデジタルに振り回されてきたっていうのが実感だと思うんですよね。この辺でやはり一度立ち止まって、じっくり教育とデジタルについて考えることはぜひ必要だと思っております。今日は、じっくり新井先生にその辺りをお伺いしたいと思います。いったんCMです。

~CM~

高橋:「科学朝日」本日のゲストはこの方、国立情報学研究所教授の新井紀子さんです。改めまして、よろしくお願いいたします。

新井:よろしくお願いいたします。

高橋:本日のテーマは「学校とデジタル」です。非常に大きなテーマなんですけれども、新井先生が開発されて、今非常に広く使われているネットコモンズというソフトウェア、もう少し詳しくご説明いただけますでしょうか。

新井:はい。2000年の森政権の時代、E-ジャパン構想が発表されましたが、その柱の1つが教育の情報化だったんですね。それが柱になりましたので、その後、様々な目標が掲げられました。学校にパソコン教室を必ず設置するとか、高速の回線を設置するとか。学校ホームページの開設もその目標の1つだったんですね。情報に関する言葉は、ホームページにしても高速回線にしても、学校にとって聞き慣れない言葉だったでしょうから、目標を達成するためにもの学校関係者はものすごい努力をなさってきたと思います。こうして、様々な機器、あるいはソフトウェア等がどんどん入ってきたんですけれども、その結果、教育を支援するというよりは、ICTがかえって先生を疲れさせているっていうような面が生じてきました。いくつもハードウェアが入ったことによって、そのメンテナンス費用が学校の経営を圧迫する、という例も伺いました。その様子を伺っているうちに、「e-教室」を作るために作ったネットコモンズがお役に立つのではないかと思ったのです。ネットコモンズを無償で学校に提供したならば、ウェブでできる様々なことを1つにまとめることができて、そういうのをワンストップシステムとかって言うんですけれども、そういうことが可能になるのではないかと。そして、予算規模が大きい学校も、予算規模が小さい学校あるいは教育委員会でも、平等にだれもが簡単に利用ができるように無償で提供しようというふうに思ったんですね。

高橋:そのe-教室というシステムを開発しようと思われたのは、やっぱりE-ジャパンでパソコンが全ての学校に行き渡ったからというのが1つの動機だったんですか?

新井:いえ、全然そうじゃないんです。

高橋:あ、そうなんですか。

新井:2000年という年は、ちょうどインターネットが家庭にも普及し始めた頃だったんですね。そこで、学校ではなかなか制約があるような発展的な学びを、一流の大学の先生が提供しますっていうような、未来型の学校みたいなのを作ってみたくて実験的に立ち上げたものなのです。

高橋:あー、じゃあ学校で使うことは想定されてなかった。

新井:ええ。想定してなかったんです。

高橋:自宅学習みたいなことですか。

新井:そうですね。放課後活動というか、そういうようなことで始めたんです。でも、2005年くらいになると、学校やご家庭でのブロードバンド接続もものすごく普及しましたので、これだったらば学校の基盤としても使えるなというようなタイミングだったなと思いますけどね。

高橋:で、そういう活動をしているなかで、学校現場が困っているのが見えてきて、ちょうど作ったものが学校現場でも役に立つというふうになってきたわけですね。

新井:はい。そうです。

高橋:で、歴史的な説明は分かりましたが、じゃあネットコモンズっていうので何ができるのかっていうのを。

新井:そうですね。ネットコモンズの説明をするのはすごく難しいんですけれども、どうしてかというと、あまりにも機能が多いせいなんですね。一番分かりやすいところで、学校ホームページの機能からまずご説明しましょうか。ちょっとこちらの画面が。

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高橋:あ、ダメサイト6カ条とありますね。

新井:こちらが先に出ましたか。ネットコモンズというのは一般的に、コンテンツとかユーザーを何かマネージメントしてくれるっていうのでコンテンツマネージメントシステムとかグループウェアとかって呼ばれているんですけれども。

高橋:どうしてそうカタカナ語ばっかり出てくるんでしょう。

新井:そうですよね。では、それはちょっと置いといて。かつての学校ホームページってどういうふうで、どんなところが課題だったか、というお話を先にしましょう。まず、せっかくアクセスしても、校歌や学校の目標、あるいは校長先生のお話くらいしか情報がないという学校ホームページ。こういうものが少なくありません。でもそれは、保護者や地域の方が今知りたいと感じている情報ではないんですね。あるいは、関連しますが、更新が滞っている学校ホームページですね。それでは、アクセスしても何も新しい情報は得られません。あとはですね、更新の負担が特定の先生に集中してしまっている学校ホームページの。ホームページを更新しているのは、たいていは、ITに詳しい先生ですね。

高橋:好きな先生が1人ぐらいいらっしゃいますよね。

新井:そういう方が一人で一生懸命更新しているんですが、他の先生は自分の学校のホームページを開いたことがない、というような状態。それでは、なかなか学校全体を表現するようなホームページにはなりませんよね。次が一番の問題点だったのですが、とにかく情報発信するまでにものすごく時間がかかる。学校のホームページを更新するには、まずはコンテンツを集めて、デザインを考えて、それをプログラムに表現をしなければなりません。その作業を担当の先生が休日返上でする。でも、それで終わりではなくて、次に校長先生のところに持っていって決裁をしてもらって。

高橋:学校ですからね。

新井:それを教育委員会のサーバーに置いていただいて、ようやく公開される。3日以上はかかるような作業だったんですね。ですから、どうしてもタイムリーな情報発信ができないんです。にもかかわらず、折角作った過去の記事は、更新によってどんどん消えてしまう。あるいはリンク切れを起こす。他にもデザインの不統一とかそういうようないろんな問題があったんですね。学校サイトというのは、保護者が楽しみに開く、というものではなくて、外部の方が学校を訪問しようと思ったときに住所と電話番号を調べるくらいのことにしか使われてこなかったんですね。

高橋:なるほどね。わたしぐらいのもう子育てをだいぶ昔に終えたような年代の者からすると、まず各学校がホームページを持っているっていうこと自体がちょっと驚きなんですよね。今回新井先生に来ていただくということで、わたしも自分の母校の小学校のホームページを見てみたんですよ。

新井:ご覧になった。

高橋:子どもが卒業した小学校も見ましたが、同じ公立であっても、確かに作りは全然違っていて、今おっしゃったダメサイトがぴったり当てはまるようなホームページ、確かに未だにありますね。

新井:1年に1回更新するかしないかというような学校がまだ15パーセントくらいあるやに聞いていますね。そういうものから脱して、ITが詳しくない方でも、どなたでも使えることができるようなもの。いつも言っているんですけど、ITが苦手な40代の国語の先生にも楽しく使っていただけるような、マニュアルを見なくても、研修をしなくても易しく使えるようなものということを心がけてずっと開発をしてきたんですよ。

高橋:なるほど。

新井:ネットコモンズで作ったサイトを1つぐらいご紹介しましょうか。

高橋:お願いします。はい。

新井:これは広島市立の瀬野小学校という学校のホームページです。ホームページを配信するためにはサーバーというものが必要なんですけど、瀬野小学校のサーバーは学校にも教育委員会にも置いてなくて、レンタルサーバーを利用しています。そのレンタルサーバーに無償のネットコモンズをインストールして学校ホームページを作っているんですね。今、レンタルサーバーも安いので、コストはほとんどかかっていません。開くとまずは新着情報に目に入ってきます。どうも今日は6年生は修学旅行に行っているようですね。ちょっとこの記事をクリックして読んでみましょうか。「新幹線に乗りました。これから博多へ向かいます。」と速報が出ています。これをお書きになったのが、6年生の担任の先生のようですね。投稿者名に「6年生」とありますので。しかもこれは新幹線からということになりますと、携帯電話からたぶん。

高橋:えー。写真をここに送ってアップすると。

新井:ええ。

高橋:携帯からできるんですか?

新井:ええ。ネットコモンズは日本のものなので、日本の主要3社の携帯電話には全部対応しているんです。外国産が多いCMS界では、そういうCMSは珍しいと思うんですけれど。やっぱり、修学旅行先で子どもたちがどう過ごしているというようなことは、保護者の方から大変ご関心が高い。

高橋:そうですよね。

新井:この日だけでたくさんの保護者の方がアクセスしてらっしゃいます。この記事には「応援マーク」というのがついていますね。ネットコモンズでは、記事を見た方が「いい記事だな」と思ったら、「応援」のために一票入れることができるんですが、この記事にもたくさんの票が集まっているのがわかります。こうして毎日新しい情報が配信されるので、保護者や地域の方たちがどんどんアクセスされるわけです。そうしてあっと言う間に、16万以上のアクセスを記録してしまったわけです。先ほどの修学旅行の記事は6年生の担任の先生が投稿した記事でしたけれども、他にも、例えば給食トピックスという欄を見ると今日の給食に関する記事が今日のうちにアップされています。これは給食の栄養士の方が投稿された記事ですね。読むと今日の献立はご飯、ミルク、生揚げの中華煮とバンバンジーだったことがすぐわかります。お母様方は毎日ここをご覧になって、夕食にカレーが重ならないようにとか、そういうことをチェックしてらっしゃるそうです。これ、携帯からもアクセスして見ることができますので、携帯のほうが気軽にアクセスしやすいっていうような方にとっても使いやすいサイトになっています。

高橋:お使いに行って、その場で見ることができるわけですね。

新井:そうですね。このように、学校の全体のニュースを、それぞれの先生方、あるいは持ち場の方がニュースを集めて、そして1つのサイトにして。でも、誰が書いてもすぐそのままホームページに載ってしまっては危険なので、ネットコモンズには決裁機能というのがついています。記事をアップしてもそのままはすぐ表示されなくて、校長先生がご覧になって、ウェブ上で決裁をしていくのです。決裁を受けると、こうしてウェブ上で見えるようになります。紙の決裁はもう必要ないのです。しかも、過去の記事が消えてなくなることもなく、自動的にアーカイブされていくんです。

高橋:まさにかゆいところに手が届くようなシステム。だからそれだけ爆発的に使われるようになっているんでしょうね。

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新井:ネットコモンズのデモサイトを使って、実際の使い勝手をもう少しご説明しましょう。このサイトの上に記事を書くにはIDが必要になります。記事を書く先生方にはそれぞれのIDを発行します。校長先生には特別のIDが渡されていて、それで先生はそれぞれが書けるところに記事を書くと。ある欄には学級担任の先生が書けるように、またある欄は給食の栄養士さんが書けるように、というようなコントロールができるような仕組みになっています。

高橋:そういうところが管理しているというとこなんですね。

新井:はい。それがマネージメントの部分です。試しに記事を書いてみますね。例えばここに、「今日は社会科見学に行きました。」ここで社会科見学に、例えば「全校行事で行った。」というようなことを書きまして、「今日は待ちに待った社会科見学です。」というふうに書きまして、デジカメで撮った画像を、このように添付すると。これでもう記事ができあがってしまって。このボタンを押せばもう終わり。これであれば、ITが苦手な先生方でも、この範囲内では比較的気軽に情報をアップすることができると思います。持ち寄り型の学校ウェブサイトというようなイメージで作っています。

高橋:そうすると、これを導入した小中学校は、保護者とのやり取りとか非常にスムーズになってきたということですよね。

新井:そうですね、はい。

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高橋:分かりました。ネットコモンズの特徴みたいなものを書いていただいた。そうですね、順序立てて説明していただけますか。

新井:はい。まずは国の予算で開発された。国立情報学研究所は国の唯一の情報学に関する研究所ですのが、そこが教育機関向けにターゲットを絞って開発したソフトウェアです。国税で作りましたので、オープンソースで、つまりコードを公開した形で、どなたでもご自由に無料でお使いいただけるようにしています。無償のものは有償のものに比べて、信頼性が欠けるのでは?と思われる方もあるかもしれませんが、国立情報学研究所が出しているということで、皆さんにご信頼いただいているようです。それから、ふつうのホームページとは違い、一般の公開ページ、先ほどお見せした学校ホームページはその画面ですけれども、それだけではなくて、会員だけが見られる、例えば保護者だけが見られるとか、先生方だけが見られるとか、そういうような専用のページを作ることができます。あとは、先ほどちょっと言いましたけど、パソコン用のサイトと携帯用のサイトが同時に構築できますので、携帯からもアクセスができます。けれども、なんといっても最大の特長はメールとデジカメが使えるという方であれば、誰でもホームページの更新に参加できるくらいに操作が簡単という点です。先ほどご覧いただいたのは、学校の日誌を書くという、学校日誌モジュールという機能なんですけれども、他に施設予約とか配布物を配るとか、給食だよりとかですよね、学校だよりを配る、配布物を配るとか、子どもたちの写真をスライド写真で見せるフォトアルバムとか、そういういろいろなモジュールがあらかじめ同梱されていて、どれも同じ使い勝手に揃えてあります。ですから、ネットコモンズだけダウンロードすれば学校で必要だと思われる情報発信機能はほとんどまかなうことができる。

高橋:どうやって入手するんですか?

新井:ネットコモンズの公式サイトというのがあるんですけど、そちらから全部まとめたソフトウェアをダウンロードすることができるんですね。それをダウンロードしてから、ウェブサーバー上にインストールしていただきます。すると、もうその中に全部おかずは入っていますという感じですね。1袋になっていて、それを解凍していただくと、全部おかずは中に入っておりますという形。

高橋:で、好きなものだけ食べればいいって。

新井:選んで。全部使わなくてもよくて。ここではこれを使おうという学校の判断でお使いいただけるということです。

高橋:で、検索エンジンにヒットされます。

新井:はい、そうですね。やっぱりSEOの対策をある程度したなかで、出していますので、そういう意味では自然に検索エンジンにヒットされやすい作りにはなっているかなと思います。

高橋:そうなんですか。企業は今一生懸命ヒットするホームページを作ろうとお金と労力かけていますよね。

新井:微に入り細に入りできるわけではないですけれども、このサイトはどういうサイトですという説明であるとか、検索ロボットはどういうものを受け入れるとか、あるいは受け入れないとかね。

高橋:あ、ロボットといってもちょっと分からないかもしれないですね。

新井:そういうようないろいろな細かい設定ができるような仕組みになっています。

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高橋:これが特徴で、機能のイメージというのも出てきました。今までご説明いただいたことを別の観点からっていう感じですね。

新井:はい、そうですね。CMSと言って、コンテンツを管理してくれるようなソフトウェアは今、いろいろと出回ってはいますが、ネットコモンズには、それだけじゃなくて、先生であればこのページに書けるとか、保護者であればこのページにアクセスして修学旅行の詳しい様子を見ることができるとか、人によって権限をコントロールするための機能が搭載されています。また、eラーニングというかそういうような機能も少しは載っております。

高橋:授業で使えるということですね。eラーニングというのはよく聞くんですが、正しい定義はどういうものなんですか。

新井:あまりにもeラーニングが広まってしまったので、どこからどこまでというのはなかなか切り分けがづらいんですけど、一般論としてはIT技術で学びを支援する仕組みは、みなeラーニングの範ちゅうに入ってくると思います。ですから、パソコンでやるかどうかということではなくて、携帯電話であるとかゲーム機器であるとか、そういうようなものも含めて、学びを支援する可能性をもつIT技術、あるいはそういう技術を活用した学びのあり方、そういうようなものを全部ひっくるめてeラーニングというふうに幅広く呼んでいると思います。

高橋:一番大きな概念だというふうに捉えておけばいいんですね。

新井:そうですね。

高橋:このeラーニング、IT技術を教育に利用するという話は、パソコンが初めてこの世に登場した当時から、これは教育に使えるんじゃないかっていう話があって、いろんな試みもされてきたと思うんですよね。でも、パソコンを使ったから飛躍的に学習効果が上がったというような話は少なくとも今までわたしは聞いたことないんですが、そこの辺りはどうなんでしょうか。

新井:先ほど、eラーニングというのは大変広い概念だとお話ししました。ということは、いろんな派閥の人、いろんな教育のものの考え方の人が一緒にeラーニングに入っていることになります。例えばですね、最初のパソコンが出たときからっていうような話ですと、その上でプログラミングを自ら学ぶ、コンピューターと対話しながらそのプログラミングのしかたを学ぶようなソフトウェアのあり方、提案なんかも。

高橋:ありましたね。幼児からできるっていう、パパート先生でしたっけ。

新井:ええ、そうですね。そういうようなタイプのものもありますし、あるいは計算ドリルのようなものが中に入っていて、それをやると、すぐに即時に正しいか間違っているかというようなことを指導してくれて、自分がどんなところで間違えたかっていうことから、「では、こういう問題セットを次にあなたはやったほうがいいでしょう」という推薦をしてくれるという学習管理をイメージされる方もいる。あとは、今話題のデジタル教科書のように、マルチメディア、もともとは紙の上に字やせいぜいでも絵で表現していたような教材をマルチメディア化することによって、もっといろいろな可能性が出てくるんじゃないかっと思っていらっしゃる方。いろんな方がeラーニングの業界にはいらっしゃいます。その中で、たぶん今、最も話題になっているのがデジタル教科書だろうと思います。実はこのようなマルチメディアコンテンツが学習に効果的かどうかっていうことについては、かなり以前から、様々な調査が行われているんです。紙の上に印刷された普通の教科書と、デジタル教科書のように、テキストにハイパーメディアが埋め込まれていて、その先に辞書があるとか画像があるとか動画があるとか、そういうマルチメディアのリッチコンテンツと同じものを見せたとき、どっちのほうがよく内容を理解して覚えているかっていう研究など、有名な調査結果がいくつもあります。ところが、リッチコンテンツのほうがよく内容を理解しているっていう結果がなかなか出ないんですね。紙でじっくり読ませたほうが、内容を比較的よく理解している。

高橋:ああ、そうなんですか。もうそういう研究はなされているわけですね。どっちが学習効果があるかというのは。

新井:マルチメディアの方がずっとリッチだし、情報量も多いし、きっとよく理解するに違いないというふうに思って行った実験なのに、なかなか思ったような成果が出なかった。こういう話は、問題点として実は教育工学の中ではよく認識されていた問題なんです。まぁ、その当時のデジタル機器がまだ発展途上だったから、という言い訳もあり得るかとは思うんですが。

高橋:ああ、そうなんですか。それで今そのデジタル教科書という言葉が出ましたけれども、今確かに日本で、しかも小中学校という割と幼い子どもたちも学ぶ場で、このデジタル教科書を使えるんじゃないかということで、まだ非常に限られた数ではあるんですけれども、そういうパイロット事業が始まっていますよね。

新井:そうですね。

高橋:で、普通の方はデジタル教科書と言ってもまずピンと来ないと思うので、これはどういうものを指すんですか?

新井:これもあまり定義が定まっていないんですけれども、デジタル教科書って言いますと、一般の方が聞くと教科書ということなので、今までわたしたちが慣れ親しんできた紙の教科書がデジタルになって、そして何か電子端末の上に乗るんだろうというようなイメージがあると思います。ただ、この「デジタル教科書」という言葉の意味がまだ定まっていないんですね。最初に出てきたのは提示用のデジタル教科書です。電子黒板というのが、2~3年くらい前から小中学校の現場にたくさん導入されているんですが、その大型の提示用のデジタル黒板に提示するための中身、それをデジタル教科書と最初は言っていました。その次に、児童生徒用デジタル教科書という言葉が出てきて、それは先ほどのイメージ通り、何か端末の上に乗せて、子どもたちはその上でその勉強をするというようなものも概念として出てきました。あるいはそのデジタルな教科書を搭載するPCというかタブレットとかですね、そのハードのことをデジタル教科書と呼ぶ方もいます。というわけで、少なくとも3つの異なるものを「デジタル教科書」と呼んでいるわけです。さらに混乱するのは、「教科書」という言葉なんですね。教科書というのは法律上は検定教科書ということになるんですけれども、検定教科書なのかそれとも教材なのか、そこもまだ議論の最中だというふうに認識をしています。

高橋:検定教科書になるには相当時間がかかりそうな感じは直感的にしますけれども。

新井:そうですね。

高橋:でも、教科書だろうが教科書じゃなかろうが、子どもたちの中にそういうデジタル機器が入っていくと。それは本当にいいことなのかどうなのかっていうところが一番気になるところなんですよね。

新井:ちょっと最初にイメージを持っていただくために、デジタル教科書、これは提示用なんですけど、ちょっと例をお見せしましょうかね。これは、とある教科書会社さんがお出しになっている、中学校の英語の提示用デジタル教科書の一例です。ちょっと動かしてみます。こういうように、ネイティブの方の発音で、きれいに読み上げて、そしてそこがちょうどハイライトされていくっていうような。

高橋:青く変わる、これは良さそうな気がしますね。

新井:あとは例えば、フラッシュカードのようなものがあって、ここに出てきた頻出の単語を読んでもらって、これはどういう意味だろうっていうようなことを。

高橋:ああ。授業でこういうふうに使うわけですね。

新井:はい。そういうこともできます。あとは、練習問題ですね。これも読み上げさせることができますけど。これで答えはすぐ、「ロボットがロボカップではサッカープレーする」というようなことが出てきます。こういうのを一般に即時フィードバックと言うんですけれども、問題が提示され、答えを書くと、その答えが正しいか間違っているかをただちにフィードバックしてくれるような機能というのは割合よく求められる機能ではありますね。こういうようなものが黒板の代わりに前のほうに置いてあって、先生がこれを授業の支援ツールとしてお使いになるってことは、最近比較的広まってきています。こういうものを提示用に留めるのではなくて、児童用のタブレットの上でも実現して、各生徒の進度に合わせて自学自習ができるようにするとか、あるいはタッチパネル方式で操作できるようにしたらいいんじゃないかというようなご意見はたいへんよく聞きますね。

高橋:実際にこういうデジタル黒板やデジタル教科書を使っている学校の見学に行かれたんだそうですね。

新井:はい。いくつか行ってまいりましたけれども、こういう提示型のものに関しては、確かに、黒板に書く時間が節約できるとか、黒板ではできにくいいろんなことができるっていうような良い面があるなとは思いました。一方ですね、子どもが黒板に書かれたことをノートに写すっていう学びっていうのは、少なくなっていくな、と。先生のきれいな字を見て、あるいはまとめ方を見て、こういうふうにノートはまとめていくんだっていうことを学ぶっていうようなことはなかなか少なくなっていくでしょうね。あと、わたしが疑問をもったデジタルコンテンツもいくつかありました。コンピューターには簡単にコストを安く実現できることと、技術的に難しいあるいはコストが大変かかるということがあるんですね。難しいことの代表例のひとつが、手書のノートの上に何が書かれているかを正しく判断することです。例えば、子どもがノートに書いた筆算をそのまま入力として受け取って、正しく筆算できたかを判断するソフトを作るのはとても難しい。そういう中で、筆算練習用のドリル的なコンテンツを作ろうとすると、きちんと位取りがあって、ここの四角に何を数字を入れますかというドリルの作り方になってしまいます。でも、子どもが、3桁同士のかけ算の筆算で、間違ったりするのは位取りなんですね。1つ桁をずらすべきところをずらさなかったりとか、あるいはきちんと繰り上がりを書かなかったりとか。つまり、デジタルでは、子どもがつまずくような小石があらかじめ全部どけられた状態になっているんですね。デジタルの上でできるようになったとして、ノートの上で筆算するときに本当にそれを正しく実践できるんだろうか。そういうことは気になりましたね。あと気になったのは、子どもたちの集中力というか忍耐力の変化ですね。子どもたちはリッチなコンテンツがあると、いろんなところを押したがるんですね、脈絡なく。

高橋:そうでしょうね。子どもだったら押したくなりますよね。

新井:押せるところはとりあえずみんな押しちゃうんですね。それは一見、楽しくやっているように見えるんですけれども、実際にそういうお子さんに、「この画面が出る前に何見てた?」っていうふうに聞いたんです。そしたら「覚えてない」ってみんな言うの。ボタンを押せば、確かに、ものすごい情報量が来てることは来てるんだけれども、その直前に何を意識して自分が見ていたかっていう、そういうことは残っていない。リッチでありすぎるっていうことが、かえってゆっくり考える、あるいは待って考えるという忍耐力を奪っているようにも見える。例えば、答えが間違っているときでも、即時フィードバックされてバツが出たとか丸が出たとかっていうことではなくて、「この答えが合っているのかな」と自分が吟味をする、「この答えであっているのかなー」と落ち着いて考えるとか、間違ったら「どうして間違ったのかな」っていうふうに考える。そういうような時間が減ると、良くないかもしれないなっていうのはすごく思いましたね。その点をどうすればいいのかっていうのは、答えがなかなか出ない問題でしょうね。

高橋:逆効果っていうことですよね。デジタル機器を入れることで、教育に対して逆効果が出てしまう。

新井:そういう面もあると思います。デジタルコンテンツにもとってもいいものもあるんですけれどもね。例えばわたしが好きなコンテンツで、モンスターハウスというデジタルコンテンツがあるんですけれど、それは1桁のかけ算に関するシューティングゲームなんです。かけ算は「ににんがし、にさんがろく、にしがはち」ってこういう抑揚で覚えているので、じゃあ「にろくは?」って言ったときに、「ににんがし、にさんが」ってやるっていう子いますよね。

高橋:最初から順番に。います、います。

新井:でも、モンスターハウスというコンテンツでは、かけ算の問題が次々にランダムに出てくるんです。ゲームをクリアしようと思ったら「ににんがし、にさんがろく」とやっていては間に合わない。こんな風に楽しく練習することによって、1桁のかけ算が定着するならば、それはいいんじゃないかと思うんです。ただし、では、このゲームの先に中学1年生の、例えば変数とか式の整理とか、あとは一次関数を理解するゲームがあり得るか、というと、数学者としてはちょっと考えにくい。それはやっぱり質が違うんですね。だから、デジタルでやって良いものもあれば、そういう難しいものもある。でも、デジタル教科書っていうことで、それが検定になってしまって、それしかない状態になると、全部それでしなきゃならないということになるので、選べなくなるのは困るなというのはすごく感じますね。

高橋:一番最初にお伺いしたように、今までアメリカでたくさんなされてきた効果を計る実験で、パソコンなりなんなりデジタルを使うものは決して従来の紙の本で勉強するよりも、良い結果は出ていないわけですよね。それと今のお話、全く平仄が合うというか、子どもたちの今の状態を見ててもこっちの方がいいとは言えない。で、ひょっとすると今までできていたこと、紙で勉強していたときならできていたことが、デジタルを使うことによってできなくなってしまう、そういう恐れもあると。

新井:やっぱり、今デジタルっていうことに魅力を感じてらっしゃる方は、その豊富なコンテンツとかリッチな機能とかにすごく目を奪われていると思うんですね。こんなこともできる、あんなこともできる。紙では絶対できなかったこんなことができる。そうすると、紙でやっていたときの脳の活動のあり方っていうのはいったいどうだっただろうかっていうことを、つい忘れがちになってしまう。あるいは紙で自分ができていたことっていうのは、前提として誰もができるものとして、それに加えてデジタルのメリットがやってくるというふうに思ってしまいがちになる。でも、たぶん脳っていうのはそのように動いていないんですよ。その証拠にわたしたちの多くは、パソコンを使うようになってから漢字を書けなくなったとか。

高橋:そうです。

新井:とか、様々なデメリットも感じてると思うんですね。例えば長い文章を、長い時間をかけて深く没頭して読むっていうことが難しくなって、ついつい、リンクを探しちゃうとか、検索に走っちゃうとか、そういうようなことっていうのはあると思います。脳の動き方にはむしろコンテンツよりもメディアのあり方そのものが、すごく大きな影響を及ぼすので、そういうところから調べていかないと。デジタルになることで、何を得て何を失うのか、それを知らないまま失うことになってしまうかもしれない。

高橋:ほんと、そうですよね。

新井:と、思います。

高橋:脳の発達期ですからね、小学校のときは特にね。

新井:小学校、中学校期は、ノートの書き方とか、先生の話を聞いて、その中の要点をメモするとか、そういうような様々な学ぶ姿勢のようなものを構築する時期ですよね。それを考えると、この時期にデジタル教科書を入れるのはまだ早いのかもしれない。例えば、小学校、中学校でノートの取り方はしっかり分かりました、予習復習のしかたも大丈夫です、自分は検算は自分でできますっていう状態になった後に、インターネット社会に対して、対応能力を上げるっていうために、例えば高校、大学からしっかりとデジタルを入れていくっていうことは、きっと重要なことだろうなというふうには思います。

高橋:そうですね。やっぱり発達段階というか、子どもの年齢をよく考えて、どういうものを入れていくかっていうのを考えていかないといけないですね。

新井:そうですね。そういうふうに感じます。

高橋:まだまだお話伺いますが、ここでいったんコマーシャルです。

~CM~

高橋:「科学朝日」本日のゲストは国立情報学研究所の教授、新井紀子さんです。ここまで、学校とデジタルというテーマで、まず学校の情報発信を劇的にやりやすくするネットコモンズというものについてご説明いただき、後半はデジタル教科書をはじめとするデジタル機器を教育に取り込むことのメリットデメリットについてお話を伺ってきました。新井先生、今回の東日本大震災で、学校の情報発信機能を危機管理としてきちんとしていかなければいけないということを強く感じられたということなんですが。

新井:はい、そうです。3月11日の大震災のときには、ネットコモンズを日頃から大変よく活用くださっている、福島県、岩手県、宮城県に大きな被害がありました。そのこともあって大変心配をいたしました。震災後しばらくしてから、どんな形で震災時にネットコモンズが使われたか現場からお知らせいただくようになりました。例えば、茨城県の潮来市では、ある中学校がですね、たまたま震災前にネットコモンズを導入していたと。3月11日、潮来は液状化がすごく激しかったんです。土管が1メートル近く盛り上がっちゃうとか。ずいぶん塀も壊れました。子どもたちは6時間目の授業中で無事だったんですけれども、電話がつながらなくて、親御さんに連絡がとれない。

高橋:そうでしたね。

新井:そういう状況になっていましたので、お子さんたちを帰すときに、「帰宅したら被災の状況や避難先など、そういう情報を、各自、学校のネットコモンズサイトに登録するように」と伝えたそうです。そしたらその日のうちに、多くの親御さんが、実際に被災状況や避難先などを登録してくださったそうで、その日のうちに全校の保護者の被災状況を把握ができたそうですね。今映しているのが潮来第一中学校のネットコモンズサイトですが、ここでは保護者から情報を集めるだけではなくて、随時情報発信も続けていました。例えば「今、学校は避難場所になっています」とか、「いつまで休校にします」という情報を、先生方が携帯電話経由でどんどんアップしていかれました。そのことが、やっぱり親御さんにとって安心材料になったというようなことがありましたね。一方、市内のほかの学校のホームページは、全部使えない状態になってしまっていました。潮来第一中学校以外は、緊急のお知らせを何も流すことができなかった。ですから、先生方は、生徒の家を1軒1軒回って被災状況を把握したり、休校情報をお伝えしたりしなければならなかったそうです。あるいは福島県からは次のような報告が届きました。福島県には、緊急避難区域等に含まれたために、生徒がばらばらに避難して休校になった学校がいくつもあります。そこで、県内にはサテライト学校というのがいくつも開設されたのです。他の高校の体育館の一角とか空き教室とか、そういうところを間借りして授業をしているんですね。高校の場合、農業高校や商業高校など、普通高校以外にも職業高等学校がありますから、一緒のクラスで教えるのは、カリキュラム上難しかったりするんです。自分の高校の生徒が、いくつものサテライト学校に分かれて、通っていますから、先生方は毎日何十キロも移動しながら指導されているんですよ。となると、もうリアルな職員室はないんです。自分の学校は緊急避難区域にありますので。そこで、バーチャルで教員同士が連絡を取り合って、次の期末試験はいつしようとか、期末試験の国語はどこの範囲にしようとか、日々の生徒たちの様子とか、そういう情報共有をするツールとしてネットコモンズをお使いになってらっしゃると伺いました。今回の震災のような災害時には、市全体が被災します。市の中で情報インフラをすべて抱え込んでしまうと、災害時に一緒に駄目になってしまう危険性がある。リスクを分散することを考えるのなら、サーバー類はやや遠隔地にあってもデータセンターに置くほうが、より安全が高い。それと、特定の人しかホームページを編集できないと、あるいは特定の端末からしか編集できないと、そういう危機のときには使えなくなるというようなことがあります。また、情報をパソコからでないと見られないというのも問題です。携帯でも見られるというふうにしておかないと、災害時にはなかなか皆さんに情報が届かないので。そういう意味ではネットコモンズは、そういう最低限の資質を備えていたものだったかなというふうに思いました。

高橋:本当にそうですね。大震災が起きてみて、これが大震災のとき、そういう危機的状況のときに非常に役に立つっていうことが改めて分かったということですよね。

新井:危機のときは皆さん目の前の困難を乗り越えることに必死です。そういうときに使おうって思っていただけるソフトウェアっていうのは、皆さんが本当に日頃から使っているソフトウェアなんじゃないかなと思うんですね。

高橋:なるほど。そこも大事な点ですね。

新井:単なるお付き合いではできないことなので。

高橋:「事故があったらこれ使いましょう」って言われてても、いざとなったら使えないですよね。

新井:先ほど、修学旅行の様子を発信している学校のネットコモンズサイトをお見せしましたけど、あんな風に普段から使っていたら、修学旅行先でもしも台風に巻き込まれたら、担任の先生は、「まずはネットコモンズに書いて保護者の方に知らせよう」とお思いになるでしょう。今回の震災の後、うちは地震がない地方なのでとおっしゃった方もいらっしゃったんですけど。

高橋:日本にいて、それはないと思いますね。

新井:危機って何も大震災に限ったことではないと思うのです。台風が来る、あるいはインフルエンザが流行する、ということも危機なんですね。神戸市では、ちょうど新型インフルエンザが来る直前にネットコモンズを導入されて。

高橋:市として導入したんですね。

新井:そうです。市として導入されていました。でも、まだすべての学校が取り入れていたわけではなかったんです。その中で、いち早く入れていた学校は、ウェブ上に休校案内を出すことができた。そうでない学校は、朝決まった休校の案内を電話連絡網で伝える以外手段がなくて、結局子どもたちは登校してしまったということもありました。危機というのは震災だけではなく、様々なタイプの危機がありますから、それにいかに対応するか、対応できるかということを日頃から意識することがとても重要だと思いますね。

高橋:そういうときにネット技術は大変役に立つ。

新井:そうですね。

高橋:確かに安心、安全な学校生活っていうのは、学校の基本のキで、それが確保されて初めて勉強のほうにいくということですよね。今日はそういう面ではネット技術を日本の学校はもっともっと活用したほうがいいという今のお話と、教育にデジタルを入れるということについては、メリットとデメリットをよく見て、判断して慎重に考えていったほうがいいと、こういうことでございましたね。

新井:はい。

高橋:新井先生どうもありがとうございました。

新井:ありがとうございました。

高橋:「科学朝日」本日はこのへんで失礼いたします。