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SPEEDIのデータ非公開に翻弄された研究者たち

伊藤智義 千葉大学大学院工学研究院教授

緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム「SPEEDI」のデータ公表が遅れたことについて、26日の政府の「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」の中間報告に先立ち、文部科学省は23日に緊急時対応を自己検証した一次報告書を公表した。「当初から公表する必要があった」と認めたのである。今さらの感はぬぐえない。避難を余儀なくされた方々の心中は、察して余りあるものがある。

 当時の状況を振り返ってみると、SPEEDIをめぐって興味深い事実が浮かび上がる。

 SPEEDIの稼働が公にされたのは、原発事故発生から10日経った3月21日である。当時の報道によれば、国は「データが粗く、十分な予測でない」とし、「データの公表もしない」とされた。これに対して批判が続出し、最終的に、4月末になって全面公開されている。

 公開されたデータをみると、文部科学省の放射線調査が見事に放射線量の高い地点から開始されていたのである。それは、SPEEDIの有効性を如実に表していた。

 その結果をみて、複雑な思いを持った研究者がいた。東工大の牧野淳一郎教授である。牧野教授は、

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