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変わる高齢者医療-日本老年医学会「立場表明」を読み解く

高橋真理子 ジャーナリスト、元朝日新聞科学コーディネーター

高齢者の「胃ろう」をめぐり、新しい動きが出てきた。口から十分な栄養や水分がとれなくなったときの人工的栄養補給の手段の一つが、胃に穴をあけて管を通す「胃ろう」だ。管から栄養を入れることで、生命は保たれる。

 厚生労働省の研究班は、昨年12月、人工栄養補給導入までの手順や考え方を定めた指針案を公表した。特徴的なのは、意思決定のプロセスについてのガイドとなっていることだ。胃ろうだけを取り出して良い悪いといっても詮ないことで、患者、家族、医療・介護の担当者が十分に話し合いながら本人に最善の選択をしていくことこそ大事だという考え方がそこにある。

 一方、日本老年医学会は1月、「高齢者の終末期の医療およびケア」に関する「立場表明」を11年ぶりに改定した。1月29日付朝日新聞朝刊(東京本社最終版)は、「胃ろう、中止も選択肢 高齢者の終末期医療に基本原則 学会改定」との見出しで伝えた。

 前者は人工栄養補給に焦点を絞った指針案、後者は高齢者医療全体について考え方を示したものと、性格は異なる。だが、二つには共通点がある。「胃ろうは一度作ったらやめることはできない」という「常識」に対し、「中止もありうる」と打ち出していることだ。

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